「依存症」という言葉について、あなたはどれほどの知識を持っているでしょうか。
薬物依存症、アルコール依存症、ギャンブル依存症など、従来から治療の対象とされているものに加え、昨今ではインターネット依存症、買い物依存症、スマホ依存症…など、依存となる対象も増えているとされています。
さらに、「私はお菓子依存症」「働きすぎだから、仕事依存症だね」などと、軽口のなかで依存症という言葉が使われることもあり、「依存症」という名前は私たちにとって珍しい言葉ではなくなっています。
そもそも依存症って何?
人間は、快楽を得ると、脳内で「ドーパミン」という物質が大量に生産されます。
これを繰り返すと、脳内には徐々に耐性ができてしまいます。
そして、さらなる快楽・刺激を求めて行動するようになります。
この流れを繰り返すことで、自分で欲求がコントロールできなくなる状態を依存症と呼びます。
また、依存症の人は、原因となる行為や物質以外の刺激に対して、脳の反応が落ちていることが知られています。
そうなることで、ますます依存対象に固執するようになります。
依存症の2タイプ「物質依存」と「非物質依存」
依存症は、依存する対象が「行為・過程」か「物」かによって2つのタイプに分けられます。
○物質依存症:薬物、アルコール、ニコチン(たばこ)、カフェイン、薬剤、糖質
○非物質依存症:ギャンブル、過食/拒食、買い物、インターネット
医学的に治療ガイドラインがあるものは薬物・アルコール依存のみですが、それ以外の原因についても、諸外国では「アディクション」、日本では「嗜癖(しへき)」という概念で捉えられています。
原因に関係なく、本人や周囲がその行為により迷惑をしている状況があれば、それは広い意味での依存症に入ると言ってよいでしょう。
どこからが依存症?
依存症かそうでないかの判定ポイントは、先に述べたように、特定の物質や行動がないと、イライラしたり不安になったりして、日常生活に支障をきたすほどのめりこんでしまう状態かどうかということです。
スマートフォンの普及で、若年者を中心に増えている「ネット依存(スマホ依存・ゲーム依存など)」を例にとってご説明しましょう。
☑インターネットネットやゲームをやりすぎて次の日遅刻してしまう/寝不足で仕事に集中できない
☑友人や家族よりもインターネットを優先してしまうことがある
☑インターネットの途中で声をかけられたり邪魔されたりすると、イライラしたり大声を出してしまう
☑インターネットをしていたことを周囲に隠す
☑インターネットをしていないとイライラしたり不安になったりする。また、インターネットを再開するとそのような気持ちが消える
上記に当てはまる方は、すでにインターネットをやりたいという衝動がコントロールしにくくなっている状態と言えるため、ネット依存に陥っている可能性があります。
※詳細なチェックリストを知りたい方は、ネット依存治療研究部門を持つ久里浜医療センターのウェブサイトに、インターネット依存症のページがあります。
該当ページ内に、ウェブ上で簡易的な判断ができるチェックリストも紹介されています。
依存症かも?と思ったら
それでは、もしかして自分や家族、周りの人が依存症かも?と思った場合、どのような対応をすればよいのでしょうか。
まずとりかかるべきなのは、その依存(アディクション)がどの程度のものなのかを、きちんと把握することです。
ネット依存ならば、1日のうち、正確に何時間ネットをしているのかを記録してみましょう。
次に、対象となるもの(こと)を、可能な限り遠ざけます。
買い物依存ならばクレジットカードを解約する、インターネットならば夜9時を過ぎたら繋がらないよう接続を切るなどの行動を取ります。
自分の努力だけで難しい場合は、家族や友人の助けを借りることも必要です。
そして、今まではインターネットや買い物などで埋めていた時間や満足感を、運動や読書など他の趣味で埋められるようにスケジュールを組んでみましょう。
※ 薬物やアルコールへの依存や、摂食障害などの場合は、すぐにでも治療ができる医療機関へ繋ぐことが重要になります。相談先がわからない場合は、保健所や精神保健福祉センターでも、治療先の相談に乗ってくれます。
自分を見つめ直すことで依存症を手放そう
依存症は、心が弱い人がなるものではありません。
しかし、強いストレスがあったり、人間関係で躓いた時にも、人は依存症に陥りやすくなります。
一度依存症になると、その物質や行為を「ほどほどに楽しむ」ということは難しくなります。
依存の対象となるもの(こと)を遠ざけるだけでは、根本的な改善にはなりません。
なぜ自分が依存に陥ってしまったのか?
心の中に潜む不満や悲しみ、苦しみなどをきちんと見つめなおすことで、本当の意味で依存から離れられるといえるでしょう。