軽く見ることなかれ!あなたのいびきは大丈夫?

家族にいびきがうるさいと言われてしまいました。迷惑をかけているのはわかるけれど、そもそもいびきって悪いものですか?

大場保健師
いびきをかく習慣があると、本人の睡眠の質が下がるだけでなく、一緒に暮らす人の睡眠を妨げてしまうことがあります。さらに、いびきが起こる原因によっては高血圧や糖尿病、心筋梗塞などが起こるリスクが高まることも考えられますので注意が必要です。

いびきはなぜ起こる?

いびきは、なにかしらの原因で舌の根元や喉の奥の部分が落ち込んで気道が狭くなることで起こります。
狭くなった気道を空気が擦るように通るため、粘膜が振動して、いわゆるいびき音が発生します。
これにはいくつかの原因があります。

・飲酒
お酒を呑むと舌や喉の筋肉が緩んで、舌の根元や喉の奥の部分が落ち込みやすくなります。
・疲労
疲れていると舌や喉の筋肉が緩んで、舌の根元や喉の奥の部分が落ち込みやすくなります。
くわえて、身体の回復を促そうと、普段よりもたくさんの量の酸素を取り込もうとして口呼吸をしやすくなります。
・口呼吸
寝ているときに口呼吸になると、舌の根元が落ち込みやすくなります。
くわえて、吸い込む空気の量が鼻呼吸より多くなることにより、たくさんの空気が気道を通っていびきが起こりやすくなります。
目覚めた時に口の渇きを感じる場合、口呼吸をしている可能性があります。
・花粉症などのアレルギー症状
花粉症などのアレルギーによる炎症や、ポリープができて鼻の気道が塞がると、息苦しくて口呼吸をしやすくなります。
・閉塞性睡眠時無呼吸症
睡眠時無呼吸症候群の1つです。
あおむけで眠っているときに、舌の根元や喉の奥の部分が落ち込んで気道を塞ぐことで、呼吸が一時的に止まったり再開したりするのを繰り返します。呼吸が再開するときに、塞がった気道を空気が通ることでいびきが起こります。
2003年に新幹線運転士が業務中に居眠りをして、停車駅での停止位置を誤る事故が起こって以来、世間から注目されるようになりました。

自分のいびきはどのくらい?

いびきは眠っている間の事象ですので、自分ではわからないものです。
ご家族など身近な方の意見を参考にするほか、いびきをチェックできるツールを活用して、ご自身の状況を知ることができます。

・いびきアプリ
いびきアプリは、いびきにとどまらず、寝言や歯ぎしりなど睡眠中に発生する音をすべて録音してくれます。
記録はメールで転送できるので、受診する際にも役立ちます。
・簡易PSG検査
就寝時に機器を装着し、睡眠中のいびき・呼吸・心拍・酸素飽和度などを測定する検査です。
簡易PSG検査は自宅で検査ができるので、仕事を休んだりする必要がありません。
検査機器は病院から借りることになりますが、料金は3000円程度が多いようです。

重大な病気のリスクを高める閉塞性睡眠時無呼吸症

前述の通り、閉塞性睡眠時無呼吸症では、呼吸が一時的に止まっては再開することを繰り返します。
通常、睡眠時は副交感神経の働きが強くなって血圧を下げるなどの役割を果たします。
しかし無呼吸が起こると、緊張や興奮、ストレスを感じたときに働きが強くなる交感神経の活動が高まることになり、血圧の上下を夜中に繰り返します。

また、睡眠不足になることで、血液中の糖を代謝するインスリンというホルモンの働きが悪くなって、糖尿病を起こしやすくします。
睡眠中に呼吸が止まったり浅くなったりすると、眠りも浅くなり酸素量も低下するため、睡眠時間の長さ自体はしっかり確保できていても、日中に強い眠気を感じて居眠りをしてしまうこともあります。
この病気が注目を浴びるきっかけとなった事故のように、危険を伴う機械を操作に従事する場合は特に注意が必要です。

いびきの対策は?

いびきの原因となっている状態の改善や症状の治療を行うことが第一の対策法です。
加齢は避けられないものですが、飲酒などはご自身でコントロールできます。
多くの人はお酒を飲むといびきが大きくなり睡眠が浅くなります。
いびきアプリなどを活用して、いびきが大きくなるお酒の量はどれぐらいなのか、その上限値を把握しましょう。
自分のアルコール上限値を越えない飲酒を心がけることも対策です。
生活習慣の改善や原因となる症状の治療を行っても改善しない場合には、医療機関に相談してみましょう。


いびきは睡眠不足や質の低下を招き、その結果、健康への悪影響や日中のパフォーマンスの低下にもつながりかねません。
たかが「いびき」と考えずに、きちんと向き合い対策していきましょう。

<参考文献>
・国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター「睡眠休養感がカギを握る:健康維持・増進に役立つ新規睡眠指標の開発」
・厚生労働省「e-ヘルスネット」
一般社団法人日本呼吸器学会
・内閣府「睡眠時無呼吸症候群(SAS)問題対策」
「交通事業に係る運転従事者の睡眠障害に起因する事故等の防止対策に関する連絡会議」
・角谷リョウ『働くあなたの快眠地図』(2022年3月19日、フォレスト出版)
・樺沢紫苑『ブレインメンタル強化大全』(2020年9月3日、サンクチュアリ出版)
・古川智一他「いびき・閉塞型睡眠時無呼吸とその障害について」(2011年、『心身医学』51巻9号)

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大場 ひろこ株式会社ドクタートラスト 保健師

投稿者プロフィール

助産師として医療機関勤務後、長らく学校保健現場に携わってきました。幅広い年代の方々と関わる中で、働く人々の健康が周囲にもたらすしあわせの輪を広げたいと感じ、現在は産業保健領域で活動中。具体的には、特定保健指導、企業に訪問しての健診判定や救急対応、カウンセリング、アンリ相談員、セミナーなど幅広い業務に携わっています。得意分野は「女性の健康」です。
【保有資格】保健師、助産師、看護師、養護教諭専修、第一種衛生管理者、受胎調節実地指導員、公衆衛生士、女性の健康経営推進員、人間ドック健診情報管理指導士
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