2024年4月より建設業でも働き方改革関連法により時間外労働の上限規制が適用されます。
国土交通省が建設業の働き方改革を推進するにあたり、工期設定等についての調査を2022年度に行い、2023年5月31日に結果を公表しました。
調査結果からどのように働き方改革を推進していけばよいか、事例を交えて紹介していきます。
建設業の現状
調査結果からみえた建設業の現状を一部ご紹介します。
注文者から提示される工期については「妥当な工期」と認識している場合が多く、回答の59%を占めていました。
ただ現場の閉所率は「4週4閉所」、「4週6閉所」が多数を占めており、注文者からの提示された工期は完全週休2日が確保されることは少ないです。
また最終的な工期設定は「注文者の意向を優先することとし、協議は依頼しないことが多い」と回答した割合が22%であり、下請け企業になるとこの割合は高くなります。
短い工期への対応としては「休日出勤」、「作業員の増員」、「早出・残業」の回答が多く、対策として作業の効率化を行っている回答数は少ない傾向があります。
工期が変更できない理由として「供用開始日の制約があり工期を延ばせなかった」の回答が最も多い回答結果でした。
この結果、建設工事従事者の残業時間は、技術者13%、技能者5%の建設業者が月当たりの平均残業時間が45時間越えとなっています。
建設業の働き方改革推進のために
建設業の働き方改革を進める上で求められることは生産性向上の自助努力です。
ここではどのように作業の効率化による対応を行うか事例を交えて一部紹介します。
施工管理アプリ
1つ目は、施工管理アプリの導入事例です。
施工管理アプリではスマホ、タブレット端末等の電子媒体を用いり、図面上にメモや写真を残すことができるようになっています。
従来通りの方法であれば、打合せごとに資料の印刷や、枚数の多い図面を持ち運び打合せ対応を行うことが多いと考えられます。
また資料を何度も印刷をするとどの資料が最新版であったり、内容の確認に時間がかかります。
そのような企業では各作業を電子端末を用いることにより作業時間の短縮を図り、元請のみならず下請も含めて施工管理アプリを活用することにより書類の受け渡しも省力化で行え、作業完了の確認もタブレット上ででき、結果として整理作業の時間短縮が可能になったケースがあります。
クラウド型勤怠管理システム
2つ目は、クラウド型勤怠管理システムを活用した生産性向上の取り組みです。
こちらの企業では長時間労働が高い割合で推移しており、さらには建設業特有の休日の取りにくさが常態化しており、プライベートの時間を確保し働くことができる労働環境の整備が課題でした。
そこで長時間労働の是正取組とし、クラウド型勤怠管理システムの導入を始めました。
スマートフォンでの勤怠管理が可能となっているため、リアルタイムでの勤怠情報を確認できることで勤怠情報の見える化を図り、従業員の勤怠意識向上にもつながっているとのことです。
クラウド型ということもあり、作業所長が勤怠情報を把握することにより、現場内での業務の標準化も図ることが可能です。
また各作業所の勤怠管理を確認ができることにより、作業所間の労働時間平準化を目的に人員配置を計画できるメリットもあります。
さらにこちらの企業では作業所長が各従業員のスケジュールを管理することにより、現場内での業務の標準化を行い休日の積極的取得を促すことで有給休暇の取得が出始めているケースもあります。
建設業の2024年問題
労働基準法改正による建設業の残業時間規制は2024年4月から施行されます。
そのため現在常態化している長時間労働という問題を是正し適切な労働時間の管理が求められます。
そのためにもIOT等を取り入れ生産性の向上にむけての取り組みが求められています。
<参考>
・ 国土交通省「「適正な工期設定等による働き方改革の推進に関する調査(令和4年度)」の結果」