仕事でミスをしてしまい、会社に損害を出してしまった。
翌日、社長からこう言われます。
「君はクビだ! 明日から来なくていい!」
映画やドラマの中なかで、一度はこのような場面を見たことがあるのではないでしょうか?
よくあるシーンのようにも思えますが、現実にこのような事が発生した場合、それは有効なのでしょうか?
解雇とは?
解雇というのは、会社が労働契約を一方的に終わらせて労働者を辞めさせることをいいます。
労働者を解雇するためには「社会の常識にかなう納得できる理由」が必要となります。
突然解雇を言い渡された場合、理由が社会の常識にかなう納得できるものかどうかが争点となりますが、最終的には裁判所による判断に委ねられます。
ただし、次の場合は解雇が法律で禁止されています。
<労働基準法19条、104条>
- 業務上災害のため療養中の期間とその後30日間の解雇
- 産前産後の休業期間とその後の30日間の解雇
- 労働基準監督署に申告したことを理由とする解雇
参考:労働基準法
(解雇制限)
第十九条 使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。
2 前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。(監督機関に対する申告)
第百四条 事業場に、この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実がある場合においては、労働者は、その事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる。
2 使用者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない。
<労働組合法7条>
- 労働組合の組合員であることなどを理由とする解雇
参考:労働組合法
(不当労働行為)
第七条 使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
一 労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたことの故をもつて、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること又は労働者が労働組合に加入せず、若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること。ただし、労働組合が特定の工場事業場に雇用される労働者の過半数を代表する場合において、その労働者がその労働組合の組合員であることを雇用条件とする労働協約を締結することを妨げるものではない。
二 使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。
三 労働者が労働組合を結成し、若しくは運営することを支配し、若しくはこれに介入すること、又は労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること。ただし、労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉することを使用者が許すことを妨げるものではなく、かつ、厚生資金又は経済上の不幸若しくは災厄を防止し、若しくは救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附及び最小限の広さの事務所の供与を除くものとする。
四 労働者が労働委員会に対し使用者がこの条の規定に違反した旨の申立てをしたこと若しくは中央労働委員会に対し第二十七条の十二第一項の規定による命令に対する再審査の申立てをしたこと又は労働委員会がこれらの申立てに係る調査若しくは審問をし、若しくは当事者に和解を勧め、若しくは労働関係調整法(昭和二十一年法律第二十五号)による労働争議の調整をする場合に労働者が証拠を提示し、若しくは発言をしたことを理由として、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること。
<雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)8条>
- 労働者の性別を理由とする解雇
- 女性労働者の結婚、妊娠、出産、産前産後休業したことなどを理由とする解雇
参考:男女雇用機会均等法
(女性労働者に係る措置に関する特例)
第八条 前三条の規定は、事業主が、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の支障となつている事情を改善することを目的として女性労働者に関して行う措置を講ずることを妨げるものではない。
<育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児・介護休業法)10条、16条>
- 労働者が育児、介護休業等の育児・介護休業法上の制度利用を申し出たこと、または取得したことを理由とする解雇
参考:育児・介護休業法
(不利益取扱いの禁止)
第十条 事業主は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。(準用)
第十六条 第十条の規定は、介護休業申出及び介護休業について準用する。
たとえ解雇が有効であっても、解雇を行う場合、30日以上前の予告か、30日分以上の平均賃金を支払う必要があるので、事業者側も覚えておいてください。
冒頭で触れた映画やドラマのような「クビだー!」という行為は、後々大変なことになりかねませんので、ご注意ください。
就業規則の定期的な見直しを
たとえば、私傷病や精神疾患等によって長期欠勤に陥った社員に対し、退職してもらいたいと考えたとしましょう。
就業規則において、長期欠勤時の会社の対応が定められていれば、就業規則に定められた手順に従って休職させたうえ、休職期間が満了しても復職できない場合には、契約上当然に自然退職扱いにできますが、もしそのような就業規則が設けられていなければ、トラブルのもとになってしまいかねません。
労働者を解雇しやすくするために就業規則の見直しをお勧めしているわけではありませんので、内容については十分審議していただきますようお願いいたします。
不当な解雇を言い渡されたなど、悩みがあれば
働く上で疑問や悩みがあれば、一人で悩まず次の窓口に相談してみてください。
相談はいずれも無料です。