健康情報の取扱に関する最新動向 ~労働者が不利益を被ってはいけません~

厚生労働省では現在、働く皆さんの「健康情報の取扱いルール」について検討が進められています。
今回は、検討が行われるようになった経緯、および2018年6月現在の検討状況についてご紹介させていただきます。

検討が行われるようになった経緯

現在、健康情報(正確には「労働者の心身の状態に関する情報」といいます)の取扱については、主に次の2つの法令等によって規定されています。

・ 「個人情報の保護に関する法律」(以下、「個人情報保護法」といいます)
・ 「雇用管理分野における個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項」(以下、「健康情報取扱いガイドライン」といいます)

個人情報保護法は平成15年に成立、健康情報取扱いガイドラインは平成24年5月に公表されたものですが、平成28年以降、新たに2つの議論あるいは検討がなされています。

労働安全衛生法に基づく定期健康診断等のあり方に関する検討会報告書

2016年2月から10月にかけて厚生労働省に設置された検討会です。
同検討会では、「定期健康診断に関する個人情報の取扱い、定期健康診断の結果に基づく事後措置などについて、労働者の健康管理を取巻く状況からみて妥当かどうか」の検討がなされ、2016年12月に報告書が公表されています。
報告書では、健康診断の結果のうち既往歴等の調査については、「特に機微な健康情報の調査であることから、これらの情報の取扱い等については、別途、各業種、企業での取り扱いの現状と課題の把握、検討等を行い対応することが必要である」とされました。

働き方改革実行計画を踏まえた今後の産業医・産業保健機能の強化について

厚生労働省には、厚生労働大臣の諮問機関として、労働政策審議会が設置されています。
同審議会は2017年6月に建議「働き方改革実行計画を踏まえた今後の産業医・産業保健機能の強化について」を公表しました。
建議では、健康情報の事業場内での取扱いルールの明確化、適正化について、「労働者が雇用管理において労働者の不利益な取扱いにつながる不安なく安心して産業医等による健康相談等を受けられるようにするとともに、事業者が必要な情報を取得して労働者の健康確保措置を十全に行えるようにするため、適切な取扱いが必要である」とされています。

これらを踏まえ、2018年4月に厚生労働省に設置されたのが「労働者の心身の状態に関する情報の取扱いの在り方に関する検討会」です。
同検討会においては、現在「健康情報の事業場内での取扱いルール」についての検討が進められています。

「労働者の心身の状態に関する情報の取扱いの在り方に関する検討会」での議論

ここでは、2018年6月下旬現在の議論の状況についてご紹介します
※ まだ検討途中ですので、この先、変更のなされる可能性は多分にあります。あらかじめご承知おきください。

労働者の健康情報の取扱いの原則

・ 労働者の健康情報の取扱いのルールを、衛生委員会などを活用して労使関与のうえ、事業場ごとに定め、共有する
・ 事業者は、労働者に対して、健康情報の取扱いに同意しないことや収集した労働者の 健康情報等のみを理由とした、不合理な不利益取扱いを行うことはあってはならない。
不合理な不利益取扱いの例:解雇、自宅待機、減給、不利益な算定・評価 など
・ ルールに基づく運用が適切に行われなかった場合は、原則として、労働者にその旨を説明するとともに、再発防止に取り組むことが必要

健康情報の収集・保管・使用

・ 労働者の健康情報の収集・保管・使用を行う正当な事由としては、労働者の健康確保や事業者の安全配慮義務の履行のほか、法令に基づく場合、本人が同意している場合、労働者等の生命、身体の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるときなどが考えられる

労働者の健康情報の適正管理

労働者の健康情報の適正な管理のために事業者が講ずべき安全管理措置等は具体的に以下のものがあり、これらの安全管理措置は個人情報の保護に関する法律において規定されていることから、事業場ごとの実情を考慮して、適切に運用する必要がある。
① 健康情報を必要な範囲において正確・最新に保つための措置
② 健康情報の漏えい、紛失や改ざん等防止のための措置(健康情報の取扱いに係る組織的体制の整備、正当な権限を有しない者からのアクセス防止ための措置等)
③ 保管の必要がなくなった健康情報の適切な破棄 など

上記をご覧いただくとわかるように、労働者側を守るための視点でルールが作成されていることがわかります。

議論のゆくえ

今後、検討会では以下について検討がなされていく予定です。

・ 不利益取扱い防止やプライバシー保護の観点と、安全・健康確保対策の観点との両立
・ 産業保健スタッフだけが把握する情報の位置づけ
・ 法令に基づいて適切にルールを定められるようにすること など

いずれにしても、「健康情報」の取扱方法によって、労働者が不利益を被らないよう、細心の注意を払うことが事業者側には求められます。

<参考>
・ 「個人情報保護法」
・ 「雇用管理分野における個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項」(平成29年5月29日付け個情第 752号、基発0529第6号)

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蜂谷未亜株式会社ドクタートラスト 編集長

投稿者プロフィール

出版社勤務を経てドクタートラストに入社。産業保健や健康経営などに関する最新動向をいち早く、そしてわかりやすく取り上げてまいります。
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼、リリース送付などはこちらからお願いします】

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