残業によって保険料の負担があがる?  ~4月から6月の給料アップに注意~

みなさんは、毎月の給与明細をじっくりと見たことはありますか?

“振込金額だけ見て終わり”なんて方も多いのではないでしょうか。
明細書には基本給のほかに役職手当や残業手当、住宅手当や通勤手当のように会社から支給されるお金のほかに所得税や住民税、健康保険料……等、控除されるお金の記載もあります。

税金がごっそり引かれて、手取り金額が減るのは悲しい……。
けれど、「税金を納めるのは国民の義務!」と、内容をよく見ずに給料から天引きされる税金を“なんとなく”納めていませんか?
確かに税金の計算方法など給与に携わっている人以外は、少々複雑でよくわからないと思われるかもしれませんが、今回は実例を交えて簡単にお話ししていきたいと思います。

社会保険の役割

給料から天引きされる控除の中に「社会保険」と呼ばれるものがありますが、これは、国で強制的に加入する保障制度のことです。
社会保険がカバーしている範囲は実に広く、何かあった際に、最低限の暮らしが維持できるように考えられています。

社会保険とは、健康保険・介護保険・年金保険・雇用保険・労災保険の5つの保険の総称で、それぞれの役割は下記のとおりです。

健康保険:病気やけが・出産などに対して、その費用の一部を国・会社などが負担する制度

介護保険:介護を必要とする人が適切なサービスを受けられるように、社会全体で支え合う制度。40歳になった月からすべての人が加入し、支払いの義務があります。

年金保険:老後、病気・ケガなどによる障害状態、在職中に死亡した場合など、本人や遺族の生活保障制度

雇用保険:失業時の生活保障や再就職時の支援のほか、育児や介護などの理由で休業した場合、定年再雇用などで賃金が減った場合などにも継続して就労できるように給付を受けることができる制度

労災保険:業務上や通勤による労働者の負傷・疾病・障害又は死亡に対して労働者やその遺族のために、必要な保険給付を行う制度

労災保険料以外の保険料は会社と従業員双方が負担しますが、労災保険料のみ、全額会社負担です。

社会保険料の算出方法

各保険料 = 標準報酬月額 × 保険料率 ÷ 2
*会社と従業員双方が負担のため÷2となります。

「標準報酬月額」とは、給与等の平均額をキリの良い数字に区分した等級表に当てはめたもので、健康保険・介護保険・年金保険の社会保険料の計算を簡便にするためのしくみです。
毎年4月から6月の賃金をベースに決定し、毎年9月に改定が行われ、原則1年間同じ標準報酬月額で保険料を計算することになります。
例)東京都の健康保険・厚生年金保険の保険料額表

これが、よく聞く4月から6月に残業を多くしないほうが良いといわれている理由です。
つまり、毎年4月から6月の給与をベースにその年の9月からの保険料が決定するため、頑張って残業したにもかかわらず、1年間の保険料が上がってしまった! ということが起こるのです。

< 標準報酬月額の計算に含まれるもの >
・ 基本給
・ 残業手当
・ 家族手当
・ 住宅手当
・ 役職手当
・ 通勤手当
・ 年4回以上の賞与

< 標準報酬月額の計算に含まれないもの >
・ 祝い金・見舞金
・ 出張旅費
・ 年3回以下の賞与などの臨時に支給されるもの
・ 退職手当

9月以後、年度の途中で基本給や家族手当など固定的賃金の変動があり、その月から連続する3ヶ月の賃金の平均が、現在適用されている標準報酬月額と2等級以上の差が発生した場合には、その都度標準報酬月額が改定されます。

28歳 DTさんの場合

実際にどのくらい保険料が違うのか例をあげてみてみましょう。

DTさんの4月から6月の3ヵ月の給料の内訳は以下のとおりです。

4月→375,000円
【内訳】
基本給:280,000円
残業手当:50,000円
住宅手当:20,000円
役職手当:15,000円
通勤手当:10,000円
5月→385,000円
【内訳】
基本給:280,000円
残業手当:60,000円
住宅手当:20,000円
役職手当:15,000円
通勤手当:10,000円
6月→405,000円
【内訳】
基本給:280,000円
残業手当:80,000円
住宅手当:20,000円
役職手当:15,000円
通勤手当:10,000円

DTさんの3ヵ月の平均給与は、388,333円です。
東京都の等級表を見ると、26等級にあたります。

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28歳のDTさんは介護保険料の負担がありませんので、「介護保険第2号被保険者に該当しない場合」の折半額 18,810と厚生年金保険料の34,770が給与より控除されます。
※ 上記以外に雇用保険や所得税、住民税など控除される税金は他にもあります。

 

次に、極端ですがDTさんの残業がなかった場合をみてみましょう。

4月→325,000円
【内訳】
基本給:280,000円
残業手当:0円
住宅手当:20,000円
役職手当:15,000円
通勤手当:10,000円
5月→325,000円
【内訳】
基本給:280,000円
残業手当:0円
住宅手当:20,000円
役職手当:15,000円
通勤手当:10,000円
6月→325,000円
【内訳】
基本給:280,000円
残業手当:0円
住宅手当:20,000円
役職手当:15,000円
通勤手当:10,000円

DTさんの3ヵ月の平均給与は、325,000円です。
東京都の等級表を見ると、23等級にあたります。

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「介護保険第2号被保険者に該当しない場合」の折半額 15,840と厚生年金保険料の29,280が給与より控除されます。

この2つを比べると下記のような相違点があるのがわかります。
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実に1ヶ月あたり、社会保険料が8,460円増えることになります。

まとめ

今回、DTさんは極端に残業がある場合ない場合で比較しましたが、社会保険のほかにも残業による収入アップで所得税や住民税なども増加します。
しかし、保険料が高くなるということは、将来もらえる年金も多くなるということ。
今支払う保険料は高くなりますが、将来のことを考えると一概に損得では判断できない問題でもあります。
今回は、みなさんがあまり気にせず納めている保険料について簡単ではありますが、説明させていただきました。
次回受け取る給与明細はぜひともじっくり見てみてください。

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小橋 凛株式会社ドクタートラスト

投稿者プロフィール

留学経験や外資系企業、大手企業での就業経験を通じて、働き方について外国と日本のギャップを目の当たりにしました。
会社の規模に関係なく、働く人を取り巻く環境を変えていかなければ、過重労働やメンタルヘルス不調が減ることはありません。
他業種での経験を活かして、元気で健康な社員づくりに努めていきます 。
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼などはこちらからお願いします】

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