増え続ける「過労死」 業種と原因ワースト1は?

最近何かと悪いニュースで耳にする「過労死」というワード。
過労死は日本独自のワードである、なんていうことを耳にされた事のある方も多いのではないでしょうか。

そもそも「過労死」とは?
業務における過重な負荷による脳血管疾患若しくは心臓疾患を原因とする死亡、若しくは業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺・脳血管疾患・心臓疾患・精神障害のことをさします。

平成28年度の「過労死等の労災補償状況」が公表されています

厚生労働省では先月30日、平成28年度の「過労死等の労災補償状況」を取りまとめ、公表を行いました。

その中でも精神障害に関する事案の労災補償状況に焦点をあててみたところ、請求件数は1,586件前年度比71件の増となり、うち未遂を含む自殺件数は前年度比1件減の198件となっていました。
これは、毎年平均しても50件以上も増えてきている数値になります。

「精神障害」とは?
精神に異常のみられる状態のことであり、脳の器質的変化や機能的障害によって、さまざまな精神・身体症状や行動の変化が現れる状態のことを指します。
例)統合失調症、うつ病、気分障害

精神障害の請求件数の多い業種

精神障害の発生が多かった業種の上位3位をみてみましょう。

ワースト1位:「医療,福祉」の計302件
ワースト2位:「製造業」の計279件
ワースト3位:「卸売業,小売業」の計220件

精神疾患以外の、脳・心臓疾患による労災請求件数ワースト1位は「運輸業・郵便業」、2位・3位は同様の「製造業」「卸売業,小売業」となっており、「医療,福祉」の分野は、6位となっています。
つまり、医療,福祉分野というのは、非常に精神的な負荷が高い領域であることがわかります。
該当業種の安全衛生に係る担当者は、社内のメンタル対策を早急に進める必要があります。

精神障害の請求に至った理由は何?

次に、精神障害の発症に関与したと思われる出来事の数を、支給件数からみてみると、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」74件、「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」63件の順に多かったようです。

(ひどい)嫌がらせ・いじめに関しては、「パワーハラスメント」として社会全体の問題となっていますが、事前に管理職を含めて知識を増やすことで防げる部分も多くあります。
厚生労働省が作成している「あかるい職場応援団」というHPでは、オンラインでパワハラ防止の研修を受けることもできます。
また、本年7月から全国で無料のパワハラ対策セミナー(※要事前申し込み)も実施していますので、人事や衛生管理担当者の方は、ぜひご活用ください。

ただ、この数値はあくまでも請求されている件数での公表となっています。まだまだ明るみに出ず、隠れている部分も有るのではないかと思います。
今回のこの厚労省からの公表を受けて、労働基準監督署は上記に挙げられた業種はもちろん、益々の取り締まりの強化を図ってくるでしょう。
特に長時間労働については、政府の「働き方改革」を受けて、重点的に取り締まる傾向にあり、今後の取り組みにも注目していきたいと思います。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

田野優人株式会社ドクタートラスト 産業カウンセラー

投稿者プロフィール

日本の働き方、メンタルヘルスのあり方に不信感を抱き、大学では社会学を専攻。卒業後、健康経営のコンサルタントの道を進むべくドクタートラストへ入社。今まで延べ500社以上の企業へ訪問し、産業保健体制の実態を目の当たりにしてきました。また、産業カウンセラーとしても日々、悩みを抱える方々との面談を行っています。
【保有資格】産業カウンセラー
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼、リリース送付などはこちらからお願いします】

この著者の最新の記事

関連記事

解説動画つき記事

  1. 衛生委員会等のオンライン開催についての通達が示されました

    【動画あり】もっと深く知りたい方必見!衛生委員会等のオンライン開催について詳しく説明します

一目置かれる健康知識

ページ上部へ戻る