あなたは、軽い病気や小さな怪我などの際によく受診する、決まった病院やクリニックをお持ちですか。
また、病院やクリニックだけでなく、決まった先生「かかりつけ医」はお持ちでしょうか。
数十年前よりかかりつけ医の重要性について着目されてきましたが、未だかかりつけ医を持っている人は5割にも満たないとされています。
また、かかりつけ医は、先進諸外国では一般的なものであり、ドイツでは国民の約9割がかかりつけ医を持っているとされています。
かかりつけ医を持つことのメリットは何なのでしょうか。
かかりつけ医とは
日本医師会では、かかりつけ医を「なんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」と位置づけています。
つまり、体調の管理や病気の治療・予防など自分や家族の健康に関して日常的に相談でき、緊急の場合にも対処してくれる医師および歯科医師のこと。
一般的には、地元の開業医を指すことが多いようです。
かかりつけ医の主な役割
●日常行う診療においては、患者の生活背景を把握し、適切な診療及び保健指導を行い、自己の専門性を超えて診療や指導を行えない場合には、地域の医師、医療機関等と協力して解決策を提供する。
●自己の診療時間外も患者にとって最善の医療が継続されるよう、地域の医師、医療機関等と必要な情報を共有し、お互いに協力して休日や夜間も患者に対応できる体制を構築する。
●日常行う診療のほかに、地域住民との信頼関係を構築し、健康相談、健診・がん検診、母子保健、学校保健、産業保健、地域保健等の地域における医療を取り巻く社会的活動、行政活動に積極的に参加するとともに保健・介護・福祉関係者との連携を行う。また、地域の高齢者が少しでも長く地域で生活できるよう在宅医療を推進する。
●患者や家族に対して、医療に関する適切かつわかりやすい情報の提供を行う。
では、なぜ日本では未だ「かかりつけ医制度」が定着しないのでしょうか。
増大する地域医療の重要性
身体の調子が悪いときなどには、病状にあった医療機関を選んで受診する人は多くいることでしょう。風邪の症状であれば内科、歯が痛ければ歯医者に行くのは当然です。
これは、医療機関を自由に選べる制度が日本では採用されているからです。収入に関わらず国民誰もが健康保険に加入し、保険証を提示して一部の負担金さえ支払えば、病院・クリニックどこでも希望の医療機関を選んでサービスを受けることができます。
厚生労働省はこれまで、国民皆保険のもと、医療への「フリーアクセス(いつでもどこでも医療を受けられる)」を推し進めてきました。
しかし、人口の高齢化が進み、病気にもなりやすい高齢者が今後ますます増えると、これらの人の医療をすべて大病院への入院などで対応していたのでは、施設が足りないだけでなく、膨大な医療費もかかりかねません。
そこで大病院頼りをできる限り減らし、自宅など住み慣れた場所で療養してもらう体制をつくることが必要になり、かかりつけ医の重要性が増したと考えられます。
全国的な医師・看護師不足のなかで地域医療を守っていくためには、全ての診療所や病院が同じ機能を持つということをやめ、診療所や病院が機能分担を行うことが最重要になり、そこで大事になってきたのが「かかりつけ医」です。
これまでの病気や食物・薬のアレルギーのことなど、健康に関することすべてを管理してもらえるかかりつけ医の存在は、今後ますます必要なのかもしれませんね。