「備える」から「活かす」へ ~フードロス削減と健康経営を叶えるローリングストックの実践ポイント~

8月30日~9月5日は防災週間です。
この時期になると、地震をはじめとした自然災害への備えが改めて注目されます。
近年は地球温暖化に伴う気候変動などの影響で、大雨や台風といった気象災害が頻発しており、社会インフラにも大きな影響を及ぼしています。
企業においても、災害物資の点検を行う機会が増える時期ですが、「気づいたら備蓄していた食料の期限が切れていた」というケースも少なくないのではないでしょうか。
必要な備蓄とはいえ、長期間の在庫管理は簡単ではありません。
そこで注目されているのが、日常的に消費しながら備える「ローリングストック」という考え方です。
フードロス削減につながるとして話題のローリングストックですが、実は企業の「健康経営」を推進する上でも大きなメリットをもたらします。
そこで今回は、企業でのローリングストック実践のポイントについてご紹介します。

従来の「非常食」と「ローリングストック」の違い

まずは「非常食」と「ローリングストック」の違いを説明します。

非常食:災害時のために保管し、主に非常時にのみ使用するもの

5~7年保存可能のアルファ米や乾パンなどのほか、25年保存可能なサバイバルフーズ(高度なフリーズドライ加工)もあります。
一度買ってしまえば数年間は放置でき、日々の管理負担は少ない反面、日常で目に入りにくい場所で保管することが多く、気が付いたら期限切れになっていることも多いです。
また長期保存用として特殊な加工や包装がされているため、一般的な食品より価格が割高であり、初期費用が高くなる傾向にあります。

ローリングストック:日常でも使用し、災害時にも活用できる食品を循環させる備蓄方法

乾物やフリーズドライ、缶詰、レトルト食品など、比較的日持ちし普段の食事にも取り入れやすい食品がローリングストックに適しています。
災害時にはライフラインが停止するため、常温保存可能で、加熱調理を必要としないもの、できればそのまま食べられるようなものだと災害時に重宝します。
一方で、調理に大量の水が必要なもの、洗い物やごみが大量に出るもの、喉が渇きやすい塩分の強いものは避けるといいでしょう。
そしてローリングストックの最大のメリットは日常的に消費することで廃棄ロスが生まれにくい点です。
また、毎月少しずつ購入するため、数年に一度のまとまった大きな出費はありません。しかしその反面、在庫が変動しやすく必要量が足りているかが不明瞭になりやすいというデメリットもあります。

ローリングストック5つの効果

1. 災害時の栄養バランスを確保し、パフォーマンス低下を予防

災害直後は炭水化物(パックご飯や乾パン、カップ麺)に偏りがちです。
これが続くと、従業員のビタミンやたんぱく質が不足し、免疫力低下や感染症リスクが高まります。
普段から魚の缶詰や肉・魚を使用したレトルト食品、フリーズドライの野菜スープなどをローリングストックしておくことで、災害時でもパフォーマンスを維持できる栄養バランスを確保できます。

2. 災害時のストレス緩和につながる

災害時という極限状態において、全く食べ慣れていない非常食はストレスの原因になります。
日常的になじみのある味を用意しておくことは、従業員のメンタルヘルスを守り、心理的な安心感につながります。

3. 消費期限の管理がしやすく、フードロス削減に

定期的に消費するため、消費期限の管理が容易になります。
「気づいたら期限切れ」という事態を防ぎ、食品ロスの削減にもつながります。

4. 従業員の防災意識向上とエンゲイジメント強化

日常的に防災用品に触れる環境を作ることで、社内全体の防災意識が自然と高まります。
また、企業が従業員の健康や安全を大切にしている姿勢が伝わり、企業への信頼感が高まる効果も期待できます。

5. 健康経営・事業への備えにつながる

経済産業省が推奨する「健康経営優良法人」の認定基準には、「食生活の改善に向けた取り組み」という項目があります。
栄養価の高い食品を備蓄・配布することで、従業員の健康課題(野菜不足など)の改善が期待できます。
忙しくて朝食や昼食を食べる時間がない、あるいは残業で夕食の時間が遅れてしまうなどの場合には、手軽に食べることができるものが社内にあるととても便利です。
また、災害時の栄養確保は、パフォーマンス低下を防ぎ、非常時でも事業を止めない土台にもなります。

企業で導入する際のポイント

企業が備蓄品をすべてローリングストックで賄おうとすると、在庫を循環させるための労力がかかってしまうことも少なくないと思います。
そこでおすすめしたいのが、社員の健康管理と防災をセットで捉えて、「従来の非常食」と「ローリングストック」をうまく組み合わせる方法です。
内閣府の防災情報では、1人3日分の備蓄が推奨されています。
企業で導入する際は、以下のポイントが重要です。

1. 福利厚生として活用する

設置型社食や食事補助制度と組み合わせ、主菜・副菜・間食をローリングストックとして活用する方法があります。
設置型社食は、オフィス内で専用ラックなどを設置し、従業員が好きなタイミングで健康的な食事を購入できるサービスで、気軽に利用できるのが特徴です。
この仕組みを活用することで、日常の食事支援と防災対策を同時に実現できます。
また長期保存品の期限が切れる前には、社内イベントや防災訓練で従業員に配布することで、味や食べ方を知る機会になります。

2. 分散保管でリスクを軽減

1か所にまとめて保管すると、地震や浸水で備蓄が失われるリスクがあります。
1か所の倉庫だけでなく、各フロア・部署に分けて配置したり、1日目は各自のデスク、2日目~3日目は共有スペースで分けて保管したりすることも有効です。
また、テレワーク中心の企業では、従業員の自宅での備蓄を推奨しましょう。

3.「家庭での備え」への情報発信

職場だけでなく、家庭の防災力を高めることも重要です。
企業の取り組みをきっかけに、自宅の備蓄を見直す機会となるよう情報発信を行っていくと効果的です。

防災週間をきっかけに、取り入れやすい方法について、社内で検討してみましょう。

<参考>
・ 政府広報オンライン「今日からできる食品備蓄。ローリングストックの始め方」
・ 厚生労働省健康日本21アクション支援システム~健康づくりサポートネット~「災害発生に備えた栄養・食生活の工夫」
・ 中小企業庁中小企業BCP策定運用指針~緊急事態を生き抜くために~「1.1 BCP(事業継続計画)とは」
・ 内閣府「あなたの待機がだれかを救う~考えてみよう!大規模地震災害発生時の帰宅行動~」

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佐々木みな株式会社ドクタートラスト 保健師

投稿者プロフィール

前職では看護師として病院勤務をしていました。比較的若い方が病気により生活が大きく変化してしまう状況を多く経験し、次第に予防への関心が高まっていきました。健康的に働ける環境を整えるサポートがしたいと産業保健分野への志望を決めました。皆さまに役立つ情報を発信していきます。
【保有資格】保健師、看護師
【ドクタートラストの保健師サービスへのお問い合わせはこちら】
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