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離職を防ぐカギは「公私の融合」?~社員の満足度と生産性を同時に底上げするWLIの取り入れ方~
- 2026/5/13
- ワークライフバランス, 休暇, 働き方改革

「仕事とプライベートは、きっちり分けるべきもの」
そんなこれまでの常識が、今、大きな変化を迎えています。
人事労務の現場で注目されているのが「ワークライフ・インテグレーション(WLI)」、すなわち仕事と私生活の「融合」です。
「公私混同を勧めるなんて、かえってストレスになるのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、最新の調査結果からは、この「融合」こそが社員のメンタルヘルスを守り、離職を食い止めるための強力な武器になることがわかってきました。
今回は、マイナビキャリアリサーチLabの「正社員のワークライフ・インテグレーション調査2026年版(2025年実績)」をヒントに、「仕事と私生活を混ぜるメリット」について考えていきます。
WLIが叶う職場は「自由度」が高い:時間と場所を社員に任せてみる
WLIがうまくいっている人は、仕事とプライベートを「どっちかが立てば、どっちかが立たず」という敵同士ではなく、「お互いに助け合うパートナー」として仲良くさせています。
では、そんな状態を会社はどうやって作ればいいのでしょうか?
調査の結果を見ると、答えは意外とシンプル。
それは、「時間休の取得」や「在宅勤務」といった、社員が自分の都合で働く時間や場所を選べる柔軟性があるかどうかでした。
現在、仕事と生活の調和を目指す「ワーク・ライフ・バランス(WLB)」を実現できていると回答した正社員は39.1%(前年比+3.6ポイント)と着実に増えています。
しかし、さらに一歩踏み込んだ「WLI(融合)」まで実現できている人は20.1%と、約5人に1人の割合にとどまっています。
この「実現できている人」たちの共通点は、会社から与えられた柔軟な制度を、自分自身のライフスタイルに合わせて主体的に活用している点にあります。
労働安全衛生法71条の2では、事業者は労働者の健康保持増進のために必要な措置を講ずるよう努めるべきとされており、その中には「快適な職場環境の形成」も含まれます。
(事業者の講ずる措置)
第71条の2 事業者は、事業場における安全衛生の水準の向上を図るため、次の措置を継続的かつ計画的に講ずることにより、快適な職場環境を形成するように努めなければならない。
一 作業環境を快適な状態に維持管理するための措置
二 労働者の従事する作業について、その方法を改善するための措置
三 作業に従事することによる労働者の疲労を回復するための施設又は設備の設置又は整備
四 前三号に掲げるもののほか、快適な職場環境を形成するため必要な措置
出所:労働安全衛生法
しかし現代における「快適」とは、単にオフィスを掃除することだけではありません。
「子どもの送り迎えがあるから1時間だけ中抜けする」「集中したいから今日は自宅で作業する」といった、個々の生活事情に寄り添った選択肢が保障されていることです。
逆に、WLIを実現できていない理由として多く挙がったのは「残業の多さ」や「休日の少なさ」でした。
このちょっとした自由や時間の余裕があるかどうかが、社員の心の余裕を生み、メンタルヘルス不調を未然に防ぐ最高の「心の栄養」になるのです。
「仕事が楽しい」は私生活から生まれる:WLIで社員が勝手に元気付く理由
実は、WLIがうまくいっている社員は、会社にとってもすごくありがたい存在です。
なぜなら、彼らの多くが「よし、やるぞ!」という前向きな気持ちで働いているからです。
調査の結果、その差は歴然としています。
WLIを実現できている人の中で、働くモチベーションが「高い」と回答した割合は55.8%と半数を超えました。
それに対し、実現できていない人でモチベーションが高いのはわずか14.4%。なんと40ポイント以上の差が開いているのです。
さらに満足度の面でも、WLI実現者の55.5%が「仕事も私生活も満足」と回答しているのに対し、実現できていない人の53.2%は仕事も私生活も「どちらも満足ではない」という、悲しいループにハマってしまっています。
「趣味の資格勉強が、意外と実務のアイデアに活きた!」
「AIを活用して業務を効率化した分、家族との時間が増えて元気が出た!」
調査の自由回答からも、こうした公私のプラスの相乗効果が見て取れます。
社員に「仕事のせいで自分の人生が犠牲になっている」と思わせるのではなく、「仕事があるから人生がもっと充実している」と感じてもらうこと。
これこそがエンゲイジメントを高め、社員が「この会社でずっと働きたい」と思う、一番の理由になるはずです。
あえて「つながない」時間を作るのが、うまく混ぜるコツ
ただ、ここで勘違いしてはいけないのが、「24時間いつでも仕事をしてOK」という意味ではない、ということです。むしろ、その逆です。
調査の総評でも指摘されていますが、WLIは「仕事と私生活を常につなげること」で生じるものではありません。
うまくいかない原因として、「休みの日なのに連絡がくる」という不満が多く挙がっていました。
仕事と私生活をうまく融合させるためには、まず「自分の時間を邪魔されない安心感」が絶対に必要です。
最近注目されている「つながらない権利」――つまり、勤務時間外や休日に仕事のメールや電話に対応しなくてもよい権利を守ることは、一見「融合」と矛盾するように感じるかもしれません。
しかし、意図的に仕事から距離を置き、私生活に没頭できる「オフ」の時間があるからこそ、その充実感が「オン」の活力として還流されるのです。
人事労務担当者の皆さんに求められるのは、単に「在宅勤務OK」というルールを作ることだけではありません。
「私生活を全力で楽しむことは、いい仕事をするためのガソリンなんだ」という空気を社内に作ることです。
正社員の約7割は「私生活の充実と仕事の充実はつながっている」と感じています。
この実感を大切にし、社員が自分の人生を主体的にデザインしながら、その一部として仕事も全力で楽しめる。
そんな「ゆるやかな融合」を支える仕組みづくりこそが、これからの時代の労働安全衛生における新しいスタンダードになっていくのではないでしょうか。
<参考>
・マイナビキャリアリサーチLab「正社員のワークライフ・インテグレーション調査2026年版(2025年実績)」















