60歳以上の労働災害、若年層より高リスク。高年齢労働者が安全に働ける職場づくり5つのポイント

2025年12月26日、厚生労働省が設置した 「高年齢労働者の労働災害防止対策に関する検討会」が「高年齢労働者の労働災害防止対策に関する検討会報告書」を公表しました。
この検討会は、高齢化社会が進んだことにより増加している「高年齢労働者の労働災害防止」について検討する専門会議です。

長く働き続けるための環境づくり

日本では60歳以上の労働者が増えており、労働災害に遭う割合も若い世代にくらべて高くなっています。
これは、年齢を重ねることで筋力やバランス能力が低下することが一因と考えられています。
そのため国は、事業者に対し、高年齢労働者の特性に配慮した職場づくりを行うことを努力義務としました。
具体的には、転倒しにくい職場環境の整備や、健康状態や体力に応じた仕事の割り当て、安全教育の充実などが求められています。
これらの取り組みを進めることで、高年齢労働者が安心して長く働ける環境づくりが期待されているなかで、具体的に提示されているのは以下の通りです。

1. 安全衛生管理体制の確立など

経営トップによる方針表明、安全衛生委員会等での協議、労働者のリスクアセスメント実施などにより、組織的な安全衛生管理体制を整備する。
高年齢者の特性を踏まえたリスク評価を行い、優先的な対策を検討することが必要である。

2. 職場環境の改善

身体機能の低下を補完する設備・装置の導入や、作業内容・作業方法の見直しを進める。高年齢者が安全に働けるよう、職場環境や作業条件を改善することが求められる。

3. 健康や体力の状況の把握

法定の健康診断を確実に実施するとともに、体力チェックなどで高年齢労働者の健康・体力状況を把握することが望まれる。
また、心身の状態情報を適切に扱い、必要な対応につなげる。

4. 健康や体力に応じた対応

個々の高年齢労働者の健康・体力に応じて業務内容や配置を工夫し、作業負荷の適正化を図ることが重要である。
治療と就業の両立支援など、働き方全般への配慮も含まれる。

5. 安全衛生教育

高年齢労働者本人や管理監督者への安全衛生教育を充実させる。
特に、経験のない業務に従事する場合の教育は丁寧に行う必要がある。

仕組みを導入して環境を整える取り組み事例

上記のうち、すでに多くの企業で取り組みが始まっているのが2、4,5のような「働く環境を整える」、「働く内容を考慮する」です。
こちらの取り組み例については以下のようなものが参考になるのではないでしょうか。

事例1:太陽生命保険株式会社

・ 65歳定年を設定しつつ、70歳までの継続雇用制度を導入
・ 年齢による一律的な処遇引き下げをなくし、能力・役割に応じた評価へ転換

事例2:株式会社プラザ

熟練度や体力に応じて多様な勤務形態を選べる制度を設け、65歳以降も働きやすい体制を整備

長く働ける人材を育てる取り組み事例

近年、高年齢労働者の増加に伴い、労働災害の防止だけでなく、働く前段階として「長く働ける体をつくる」取り組みが重要視されています。
企業の中には、職場環境を整えるだけでなく、労働者自身の体力や安全意識の向上に力を入れている事例が見られます。
たとえば、製造業の一部企業では、高年齢労働者を対象とした安全衛生教育を実施し、加齢による身体機能の変化や転倒・事故のリスクについて学ぶ機会を設けています。
これにより、自身の体調や行動に注意を払う意識が高まり、災害防止につながっています。
また、物流業界などでは、業務前に体操やストレッチを行う取り組みを継続的に実施しています。
日常的に体を動かす習慣をつくることで、筋力の低下や腰痛を防ぎ、高年齢労働者でも無理なく働ける体力の維持を目指しています。
さらに、体力テストや健康チェックを行い、その結果をもとに作業内容を調整する企業もあります。
このように、教育や体力づくりを通じて労働者自身の健康と安全意識を高める取り組みは、高年齢労働者が安心して長く働き続けるために重要な役割を果たしています。

具体的に対応をしている企業の事例としては以下があります。

事例3:日本通運グループの「日通体操」

全従業員が日々の朝礼や業務の中で実施する体操プログラムで腰痛予防や運動不足の解消に役立てている。体力維持・向上の取り組みは、高齢者が安全に仕事を続ける基礎作りとして有効とされている

事例4:日本冶金工業株式会社 川崎製造所

中高年の労働者を対象にした安全衛生教育を実施

加齢に伴う心身機能の変化やリスクについて理解を促し、実際の職場改善につなげている事例です。
こうした教育は、転倒や誤操作などを減らす効果が報告されています。

さまざまな事例を確認していく中で、高年齢労働者の労働災害を防ぐためには、設備や制度を整えることだけでなく、一人ひとりの体力や健康状態に目を向けることがとても大切だと感じました。
企業が年齢による変化を理解し、働き方や職場環境を工夫していくことで、高年齢労働者が無理なく、安心して長く働き続けられるようになると思います。
今回紹介した事例のような取り組みを参考にしながら、今後もより良い職場づくりを進めていくことが重要だと考えます。

<参考>
・ 厚生労働省「高年齢労働者の労働災害防止対策に関する検討会報告書」
・ 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「高齢者の活躍に取り組む企業の事例」
・ 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「平成24年度 高年齢者の多様な働き方事例集」
・ 特別民間法人中央労働災害防止協会「高年齢労働者の活躍促進のための安全衛生対策 -先進企業の取組事例集-(2017年3月)」

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越久田美穂株式会社ドクタートラスト

投稿者プロフィール

福祉業界出身です。働く世代の現在の健康が、何十年も後のその人らしい暮らしに大きく関わっていると感じています。現在から将来につながるような、実用的な情報をご提供いたします!

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