厚生労働省より雇用保険制度の改正内容が発表されました。
今回は以下3つの点について解説します。
・雇用保険の適用拡大
・教育訓練やリ・スキリング支援の充実
・その他雇用保険制度の見直し
まずは雇用保険制度についてご説明します。
雇用保険制度とは
雇用保険制度とは、労働保険の一つで、主に失業した人々の生活を保障するための給付を行う公的保険であり、大きく分けて2つの雇用に関する総合的機能を有します。
① 労働者が失業してその所得の源泉を喪失した場合、労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合、労働者が教育訓練を受けた場合や労働者が子を養育するための休業をした場合に、生活および雇用の安定、就職の促進のために失業給付および育児休業給付を支給する。
② 失業の予防、雇用状態の是正および雇用機会の増大、労働者の能力の開発および向上、そのほか労働者の福祉の増進を図るための2事業を行う。
また、保険料負担に関しては、失業等給付・育児休業給付が労働者と事業主で折半となり、雇用保険2事業は事業主のみで、下記の項目に当てはまると雇用保険の適用除外となりますのでご注意ください。
① 1週間の所定労働時間 が20時間未満である者
② 同一の事業主に継続して31日以上雇用されることが見込まれない者
③ 季節的に雇用される者 (短期雇用特例被保険者に該当する者を除く)であって、 4月以内の期間を定めて雇用される者または1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満である者
④ 日雇労働者であって、適用区域に居住し適用事業に雇用される等の要件に該当しない者
⑤ 国、都道府県、市町村等に雇用される者
⑥ 昼間学生
施行期日は2028年10月1日!雇用保険制度の改正内容
雇用保険の適用が拡大
雇用保険の被保険者の要件のうち、週所定労働時間を「20時間以上」から「10時間以上」に変更し、適用対象を拡大します。
これにより雇用保険の被保険者及び受給資格者となる者については、求職者支援制度の支援対象からも除外されません。
雇用労働者の中で、現状働き方や生計維持のあり方の多様化が進展していることを踏まえて、雇用のセーフティネットを拡げる必要があるという考えから適用対象を拡大していくようです。
下記の図を見ると2023年度は週に10~19時間の雇用者数が約506万人も占めていることがわかります。
教育訓練やリ・スキリング支援が充実
次に、教育訓練についてご紹介します。
自己都合で退職した者が、雇用の安定・就職の促進に必要な職業に関する教育訓練等を自ら受けた場合には、給付制限をせず、雇用保険の基本手当を受給できるようになります。
今回の変更では自己都合で退職した者については、給付制限期間を原則2か月ですが、改正後は1か月に短縮されます。基本手当の受給手続の流れは以下のとおりです。
また、雇用保険被保険者が教育訓練を受けるための休暇を取得した場合に、基本手当に相当する給付として、賃金の一定割合を支給する教育訓練休暇給付金が創設されます。
施行期日は2025年10月1日です。
教育訓練給付金について、訓練効果を高めるためのインセンティブ強化のため、雇用保険から支給される給付率を受講費用の最大70%から80%に引き上げられます。
15,000講座以上が教育訓練給付の指定講座となっており、教育訓練の講座は下記のサイトより検索できます。
自発的な能力開発のため、被保険者が在職中に教育訓練のための休暇を取得した場合に、その期間中の生活を支えるため、基本手当に相当する新たな給付金を創設します。
基本手当の支給日額及び日数は、原則以下の式によって決定されます。
基本手当日額= 賃金日額×給付率
しかし、それぞれ離職前賃金や年齢、離職理由などによって変わります。
その他の改正点
その他にも、育児休業給付の国庫負担の引下げの暫定措置(本来は給付費の1/8だが、暫定措置で1/80)を廃止や就業促進手当の所要の見直しなどが改正されます。
雇用保険被保険者以外の者を対象に、教育訓練費用と生活費を融資対象とする新たな融資制度を創設予定です。
雇用のセーフティネットを把握できていますか?
雇用保険を利用する際に知っているか知らないで今後の選択肢が大きく変わります。
実際周りにも将来への勉強のため、教育訓練給付制度を上手く活用し受講料が20万も支給されたという友人もいました。
雇用保険制度は少しずつ改正されるため、知識を頭の片隅に入れておき、もしものときに上手く活用しましょう。
<参考>
厚生労働省「雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)の概要 」
厚生労働省 「雇用保険制度の概要」
厚生労働省「教育訓練給付パンフ2024」