数千円からできるオフィスの腰痛対策!

厚生労働省から「令和4年の労働災害発生状況」が公表されました。
私事ですが、筆者は2週の間に立て続けに腰を痛めて以来、「どうすれば痛めずに済んだのか」「どのような対策があったのか」と考えていました。
今回は腰痛が起こりやすい状況と対策を一緒にみていきましょう。

小売業、社会福祉施設の労働災害発生状況

厚生労働省がまとめた、「令和4年労働災害発生状況」では、労働災害発生状況を「転倒」「動作の反動・無理な動作」「墜落・転落」「交通事故(道路)」「切れ・こすれ」の5つの事故の型に分けて死傷者数を記載しています。
小売業では「転倒」が全体の37.0%、「動作の反動・無理な動作」が15.5%と続き、社会福祉施設ではこれが逆転し、「動作の反動・無理な動作」35.0%、「転倒」34.3%となっています。
小売業、社会福祉施設どちらも「転倒」および「動作の反動・無理な動作」等の労働者の作業行動に起因する労働災害が50%を超えている状況です。
重い荷物の運搬や利用者介助の際など、腰に負担がかかる作業が多く発生しているイメージがありますね。

コラム付き事例集で学ぼう

上記を踏まえ、中央労働災害防止協会は小売業、介護・看護の職場に向けて「腰痛を防ぐ 職場の事例集」を作成しました。
100以上の事例の成果、内容、きっかけがまとめられており、豊富な事例から自社にあった方法を探すことができます。
また、業態のほかに従業員規模と費用目安が記載されているため、同規模事業者の事例を知りたい場合にもおすすめです。
さらに途中にコラムが記載されており、腰痛を防ぐ体操や腰への負担が少ない姿勢などが図解付きで紹介されています。

腰痛対策事例

■小売の職場

「ミーティング時の作業姿勢の改善」
きっかけ:テーブルが低く、立席ミーティングのときに前かがみになっており、腰に負担がかかっていた。
内容:立席ミーティングのときに、まっすぐに立った姿勢に合わせて高さのテーブルを配置することで、前かがみにならなくなった。

「連続作業時間の短縮」
きっかけ:レジ打ちのときは長時間まっすぐ立った姿勢になることが多く、腰に負担がかかっていた。
内容:1時間のレジ打ちごとにその他のサービス作業を短時間いれることで、長時間同一姿勢が続かないようにした。

■介護・看護の職場

「口腔ケア時の作業姿勢の改善」
きっかけ:口腔ケアや排せつ介助のときに、前かがみ姿勢になる場面があり、前かがみ姿勢が持続することで腰に負担がかかっていた。
内容:職員が座って口腔ケアが行えるよう椅子を購入し、利用者の居室に設置した。
トイレにも椅子を設置し、排せつ介助のときにも上半身を起こして座った姿勢やまっすぐ立った状態が安定している利用者に対し、職員が椅子に座り、洗浄を含む介助が行えるようにした。

「スライディンググローブの使用」
きっかけ:ノーリフティングケア(注1)を導入した初期に、用具や道具を導入しても使わない、使い方を習熟しても使わないことがあった。また、社内PHSやボールペンをよく落としており、破損が多く、名札を首からぶら下げて、介助するときに利用者にあたることがあった。
内容:ウエストポーチと除圧や姿勢修正に必要なスライディンググローブ(注2)を介護職員に配布した。業務中は必ずウエストポーチを装着し、スライディンググローブや社内PHS、筆記用具など必要なものを入れるようにした。
(注1)持ち上げ・抱え上げ・引きずりなどのケアを廃止し、リフト等の福祉用具を積極的に使用するとともに、職員の身体に負担のかかる作業を見直すもの。
(注2)除圧や姿勢矯正に必要な滑りやすいグローブ。介助グローブともいう。

紹介事例の費用の目安は、どれも数千円から数万円です。
あまり費用がかかると導入のハードルが高く手を出しにくいですが、あまり費用をかけずに改善する事例が多く記載されています。
この他にも、清掃時の前かがみ姿勢改善のために柄の短いほうきから長いほうきに変更したり、作業台の下にブロックを入れて高さ調節を行った事例もありました。
オフィスでの事務作業でも、個人に合わせてデスクの高さを調節するなど、取り入れられることがありそうですね。
「もう少し机が高かったら作業姿勢が楽になるのになあ」「ここにも踏み台があれば物が取りやすいのになあ。置き場所が遠くて取りに行くのが面倒だな」「こうだったらいいのにな」と思うこと、あなたの職場でもありませんか?
もしかしたら他の人も同じ気持ちかもしれません。
「こうしてみよう!」という改善の一助になれば幸いです。

<参考>
・中央労働災害防止協会「腰痛を防ぐ 職場の事例集」
・厚生労働省「令和4年の労働災害発生状況を公表」
・福岡県「福岡県ノーリフティングケア普及促進事業」

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坂田 ひとみ株式会社ドクタートラスト

投稿者プロフィール

大学では臨床心理学を専攻し、メンタル不調に陥る前にできることはないのか疑問に感じました。働く世代のメンタルに興味をもつ中で「産業保健」という分野のドクタートラストを知り入社。医療職でなくとも働く世代を支えることができる仕事にやりがいを感じ、日々業務に励んでいます。
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼などはこちらからお願いします】

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