毎年、冬が終わり、気温が高くなると心配な「熱中症」。
夏になると職場でも家庭でも「熱中症」の話題について話しますよね。
今年の夏も地球温暖化の影響で全国的に猛暑が予想されていて、熱中症への警戒が必要となりそうです。
厚生労働省は2022年も職場における熱中症予防策の徹底のため、労働防止団体などと連携し、「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を実施します。
実施期間は2022年5月1日から9月30日で、7月が重点取組期間ですが、2022年4月が準備期間となっています。
早いように感じますが、今から熱中症に備えなくてはなりません!
職場における熱中症により、毎年約20人が亡くなり、約600人が4日以上仕事を休んでいます。
働く皆さまには暑くなる前に知識を再確認していただき、早めに予防策に取り組んでいただきたいと思います。
今回は、STOP!熱中症 クールワークキャンペーンの概要のほか、熱中症の基礎知識と職場で導入しやすい熱中症対策についてお伝えしていきます。
2022年の「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」
2021年も職場での熱中症による死傷者が出ており、死亡者では「休ませていたときに急変した」「倒れているところを発見された」などの管理が適切になされていなかった、入職直後や夏季休暇明けで暑さへの慣れが不充分だった、WBGT値を実測せず必要な措置が講じられなかったという事例が見られています。
そのため、STOP!熱中症 クールワークキャンペーンでは「職場における熱中症予防基本対策要網(PDF)」に基づいた基本的な熱中症予防対策の呼びかけのほか、初期症状の把握から緊急時の対応までの体制整備を図ること、入職直後の人などの暑さに慣れていないと考えられる人の把握と対応、WBGT値の把握と対策などを重点的な対策がきめられています。
また、引き続き新型コロナウイルス感染症予防対策を行う中で熱中症予防対策を講じるべきといわれています。
熱中症の基礎知識
熱中症とは、高温多湿な環境で、体内の水分および塩分(ナトリウムなど)のバランスが崩れ、循環調節や体温調節などの体内の調整機能が破綻するなどして発症する障害の総称のことで、引き起こす条件は「環境」と「身体」と「行動」によるものが考えられています。
<熱中症を引き起こす条件>
環境:気温が高い、湿度が高い、風が弱い、日差しが強い、閉め切った屋内、エアコンのない部屋、急に暑くなった日、熱波の襲来
身体:高齢者や乳幼児、肥満の方、糖尿病、心疾患や精神疾患といった持病、低栄養状態、下痢やインフルエンザでの脱水症状、二日酔いや寝不足といった体調不良
行動:激しい筋肉運動や慣れない運動、長時間の屋外作業、水分補給できない状況
<参照>環境省「熱中症予防情報サイト」
予防策① 水分と塩分の摂取
個人の予防としては、やはり一番は水分と塩分の摂取を行うことです。
自覚症状の有無にかかわらず、作業前後だけではなく、作業中にも定期的に摂取してください。
なお、加齢や疾患によっては喉の渇きに気づきにくいこともあるため、時間で区切って水分を摂取することなどを検討しましょう。
普段から高血圧で塩分の制限を受けていたり、腎疾患で1日に飲む量を制限されていたりする場合は熱中症の予防について、医師へ相談を行ってください。
予防策② 体調管理
また、熱中症予防のためにも体調管理は重要です。
睡眠時間を確保することや、アルコールを飲み過ぎないことや、朝食を食べるようにしましょう。
熱中症はめまい・失神、筋肉痛・こむら返り、大量の発汗、頭痛・気分の不快・吐き気・嘔吐、倦怠感、意識障害やけいれん、高体温などさまざまな症状が出現します。
暑い環境にいるときやいた後の体調不良はすべて熱中症の可能性があります。
予防策③ 暑さ指数(WBGT値)を参考にする
暑さ指数(WBGT値)をご存じですか?
暑さ指数(WBGT値)とは、人間の熱バランスに影響の大きい、「気温」「湿度」「輻射熱(日差しを浴びた時に受ける熱や地面、建物、人体などから出る熱のこと)」の3つを取り入れた湿度の指標のことです。
環境省も気温が上昇する4月以降に地域の暑さ指数(WBGT)を公表しています。
暑さ指数は活動の目安があり、暑さ指数が高ければ熱中症に注意が必要となるため、作業を中断することやこまめな休憩が必要となります。
職場で導入しやすい熱中症対策事例
熱中症対策はしなくてはいけない、とわかっていても夏になるまで後回しになっていませんか?
今回は職場で導入しやすい対策をお伝えします。衛生委員会等でどんな対策を導入するかご検討ください。
① 作業環境管理
作業環境管理で重要なのは、暑さ指数(WBGT値)の把握です。
特に屋外での作業がある建設現場等では職場でのWBGT値を把握するため、JIS規格「JISB7922」に適合したWBGT指計の準備を行い、作業場所での測定を行いましょう。
朝のミーティングや休憩時間に管理職が確認し、全体で共有するのもおすすめです。
屋外で作業する場合は直射日光や周囲の壁や地面からの照り返しを遮ることができる簡易な屋根や業務用の扇風機を設置するなど設備を整えていきましょう。
また、休憩場所の整備も見直してみましょう。
高温多湿の作業場所には冷房を備えた休憩場所や日陰の涼しい場所に設置するとともに、休憩時間に冷たいおしぼりなどの身体を冷やせる物品が利用できるよう準備や、飲料水や塩分を摂取できるよう、社員は全員無料で利用できるよう準備しておくのもおすすめです。
② 作業管理
作業管理の観点からは、高温多湿の環境下で暑さ指数が高い場合の作業時間について話し合いましょう。
作業の休止や休憩時間についても決め、少なくとも1時間に1回休憩を取ることや、暑さ指数に応じて15~30分に1回水分を摂取するように管理者が促すことや、水分摂取管理表を使って水分摂取を必須とすることも効果的です。
また、通気性のいい服装や帽子を着用させることを推奨する、飛沫飛散防止器具は周囲に人がいないのであれば外してもいい、など周知を行いましょう。
高温多湿の現場では社員の健康状態を確認するため、作業中は巡視を頻繁に行うようにしていきましょう。
③ 健康管理等管理体制の整備
健康管理等管理体制の整備では、作業開始前の健康状態の確認を徹底しましょう。
チェック表の利用や、グループごとに体調の自己申告やお互いの顔色のチェックを行い、異変に気づいたら責任者へ報告するように指導してください。
夏場は特に単独で作業を行わず高齢者や持病のある社員については2人1組で作業するようにしてみましょう。
また、健康診断結果から産業医に業務上の配慮について指示を仰ぎましょう。
④ 緊急時の対応
熱中症の症状の発症や疑いの措置がでたときの緊急時の対応についても各部署に周知し、わかりやすい場所への掲示等も検討しましょう。
軽度の熱中症であり、途中帰宅させても、その後の体調を管理者が確認するようにすることも検討ください。
近隣の医療機関について調べておくことや、社員の緊急連絡先の把握も重要です。
暑くなる前に衛生委員会の活用を行い、衛生管理者による職場巡視でも注意すべき場所を確認していきましょう。なお、厚生労働省が出しているリーフレットはチェックリストになっているので、活用しやすいでしょう。
また、健康教育も準備しましょう。
研修だけではなく、健康情報の掲示など導入しやすいものを予定し、実施を行ってください。
研修については無料のeラーニング動画があるので参考にしてみてください。
令和3年オンライン講習「職場における熱中症予防対策」
導入しやすいものから対策を講じ、熱中症の発生を予防し、突然職場で熱中症が発生しても、焦らず対応を行えるようにしていきましょう。
<参照>
・ 厚生労働省「令和4年「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を実施します」
・ 環境省「熱中症予防情報サイト」
・ 厚生労働省委託事業「職場における熱中症予防に用いる機器の適正な使用法等周知事業「学ぼう!備えよう!職場の仲間を守ろう!職場における熱中症予防情報」」