自動車による重大事故を防ごう~旅客・貨物運送業の労働・休息時間の実態が公表されました~
- 2021/6/23
- 労働環境
2021年4月23日、厚生労働省は、他業種の労働者と比較して長時間労働の実態のある、貨物自動車運送、旅客自動車運送事業者、自動車運転者、およびその事業場に対して、労働時間や休息時間についての調査結果「自動車運転者の労働時間等に係る実態調査結果」を公表しました。
今回は「自動車運転者の労働時間等に係る実態調査結果」より、自動車運転者の1日の拘束時間および休息期間の実態についてわかりやすく解説します。
自動車運転者の1日の拘束時間
繁忙期における1日の拘束時間の実態について調査したところ、ハイヤー・タクシー業では、全体の約40%、トラック業では約65%、バス業では約85%以上の人が、1日13時間以上の拘束時間があることがわかりました。
なかには1日の拘束時間が16時間を超える人がハイヤー・タクシー業で約10%、トラック業界で15%、バス業界で約7%いることもわかりました。
休息期間の実態と適切に思う休息期間
最も忙しかった日における休息期間の調査では、1日のうちの休息期間が10時間未満である人が、ハイヤー・タクシー業では約30%、トラック業界では約45%、バス業界では約75%にも上ることがわかりました。
一方で、運転者に対し適切と思う休息時間を調査したところ、10時間以上の休息が適切だと思う人の割合はハイヤー・タクシー業では約40%、トラック業界では約50%、バス業界では約80%となっており、特にバス業界で実際の休息期間と適切だと思う休息期間にかなりのギャップがみられました。
運送業の労災の実態
2020年の労働災害(死傷災害)を業種別に比較したところ、交通運輸業および陸上貨物運送事業の死傷者数は18,156人となっており、第三次産業、製造業に次ぎ労災の発生件数が多いことがわかりました。
1日の拘束時間の長さと、十分な休息時間が与えられていない状況を鑑みると、労災の発生件数を抑えるためには、拘束時間の見直しが必要だと考えられます。
また、自動車の運転による事故では、運転している労働者だけでなく通りを歩く一般の人々を巻き込んでしまう重大な事故の発生につながってしまうおそれがあるため、運転手の高齢化や慢性的な人手不足の現状のなかで、運転手に対し十分な休息時間を与えることは、今後自動車の自動運転化が一般的になるまで事業者が取り組むべき課題なのかもしれません。
<参考>
厚生労働省「第5回労働政策審議会労働条件分科会自動車運転者労働時間等専門委員会資料」