11月は「過労死等防止啓発月間」です!

2019年も残すところ2ヶ月なりました。
厚生労働省では毎年11月を「過労死等防止啓発月間」と定め、過労死をなくすための取り組みを行っています。
「過労死」という言葉は働く人々にとって、近年とても身近なものになったと思います。
働きすぎで亡くなったんだと想像しやすい言葉ではありますが、一方では実際に何が原因で心身にどんな不調が起きてしまったのかまでご存知の方は少ないのではないでしょうか。

令和元年版過労死白書が発表された

2019年10月1日、厚生労働省から「令和元年版過労死等防止対策白書」(以下、過労死白書といいます)が公表されました。
本白書によると、日本の労働者一人あたりの年間総実労働時間は減少傾向にあり、2018年度は昨年度比約14時間の減少でした。
この減少傾向は6年にわたって続いています。
しかしこれは「パートタイム労働者が増加傾向にあることで、一人当たりの総実労働時間が減少した」との見方があります。
主要産業別では①建設業、②運輸業・郵便業、③製造業、④情報通信業の順で全産業平均よりも労働時間が長いという結果が出ています。
さらに、月末1週間の就業時間が 60 時間以上の就業者の割合で見ると年代でみると、男性は30代~40代、女性では20代が突出しているようでした。
また、有給休暇の取得率については増加傾向にある一方、規模が小さな企業ほど取得率は低いという結果になり、従業員数1,000人以上の大企業とは格差が広がっています。
業種別では「宿泊業、飲食サービス業」「卸売業、小売業」「生活関連サービス業、娯楽業」での取得率の低さが目立っています。
昨今話題の勤務間インターバル制度(終業時刻から次の始業時刻までの間に一定時間以上の休息時間を設けることについて就業規則などで定めているもの)については、残念ならが全業種において「導入の予定はなく、検討もしていない」という回答が8~9割を占めていました。

「令和元年版過労死等防止対策白書」の詳細は以下の記事を参照ください。

過労死とは?

過労死は、過労死等防止対策推進法第2条により、以下のとおり定義づけられています。

① 業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患を原因とする死亡
② 業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡

2019年の6月に発表された「平成30年度過労死等の労災補償状況」では、脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況については請求は877件と前年度比37件増、支給決定件数は238件で前年度比15件の減となり、うち死亡件数は前年度比10件減の82件とのことでした。
業種別(大分類)では、請求件数は「運輸業、郵便業」197件、「卸売業、小売業」111件、「製造業」105件の順で多く、また支給決定件数については「運輸業、郵便業」94件、「宿泊業、飲食サービス業」32件、「製造業」28件の順に多いようです。
過労死白書と共通する部分も見受けられますね。

「平成30年度過労死等の労災補償状況」の詳細は以下の記事を参照ください。

働きすぎは自律神経の乱れを引き起こす

過労死は、働きすぎ、残業のし過ぎ、肉体疲労が原因と思われがちですが意外とそうでもありません。
皆さん、仕事でストレスを感じることは多々あるかと思います。
実はそのストレスが過労死と大きなかかわりを持っているのです。
ではどうして長時間労働によって、脳血管疾患・心臓疾患、精神障害を引き起こしやすくなってしまうのでしょうか。

① 交感神経優位状態が長くなる

人の自律神経は一日のうちに、交感神経と副交感神経がバランスを取りながら生活をしています。

交感神経⇒興奮・緊張・不安・怒りの状態
副交感神経⇒リラックス状態

労働時間は交感神経優位になることが多く、恒常的な長時間残業が発生していると、一日の大半が交感神経優位状態になってしまいます。
また、ストレスを受けると人は交感神経優位になります。
交感神経優位状態になると以下のようなことが体の内部で起きています。

・ 胃腸の活動が減る
・ 心拍数が上がる
・ 血管が収縮する
・ 血圧が上がる
・ 脳が興奮する

持病を持っている方は長時間労働やストレスで病気が増悪することも考えられます。

② 睡眠時間の減少

労働時間が長くなると必然的に生活リズムが後ろ倒しになり、睡眠時間は短くなるケースは少なくありません。
その結果、疲労回復の機会自体が奪われてしまうことで、心身に大きな負担をかけてしまいます。

①②以外にも自分の時間を持てなくなり、ストレス解消の機会を失ってしまうことで、運動不足や不規則な食生活、飲酒、喫煙などの問題にもつながっていきます。
もちろん生産性や職場環境にもダメージを与えます。
①②は仕事の能率や正確性などパフォーマンスが低下する要因となり、また、ストレスにより感情の抑制が難しくなると、コミュニケーションにおいても気持ちが不安定になります。
きちんと休息や余暇の時間を確保する上で、勤務間インターバル制度は活用していけると思いますが、「なぜ必要なのか」について経営者や管理職がしっかりと理解していないと浸透していきません。
過労状態やメンタルヘルスの不調がもたらすのは「個人への悪影響」に限定されるものではなく、「集団への悪影響」もあるのだと学んでいく姿勢が重要です。

セルフケアも大切

過労死防止に向けて政府や企業の取り組みはとても重要ですが、働く一人ひとりが自分の心身の状態に気づいていく必要もあります。
産業保健新聞では取り組みやすいセルフケアについてもご紹介しておりますので、ぜひ参考にしてみてください。



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冨田さゆり株式会社ドクタートラスト 産業カウンセラー

投稿者プロフィール

ドクタートラストに入社して6年目、多くの民間企業・官公庁の健康管理に関わってきました。産業カウンセラーの資格を取得し、専門知識を深める日々です。対企業、対従業員、健康に働くためのアプローチは多種多様。各々の特性に合わせたアドバイスを心掛けています!
【保有資格】産業カウンセラー
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼などはこちらからお願いします】

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