働き方改革や健康経営というキーワードをニュースや記事で目にする機会が増えてきました。
その中で健康診断の受診率は重要な指標の一つとなっています。
今まで受診率が低かった会社が「受診率90%を超えた!」となれば一つの目標を超えて嬉しいですよね。
しかし、健康診断は実施して終わりではありません。
今回は健康診断の「その後」についてお話します。
各種制度で必要となる受診率
協会けんぽ東京支部と健康保険組合連合会東京連合会で実施している「健康企業宣言」や、経済産業省が認定している「健康経営優良法人制度」、その中でも大企業は「ホワイト500」と呼ばれる認定制度等があります。
健康診断の受診率はそれらすべてにおいて認定要件のチェック項目となるので、重要な指標であることは理解している人も多いと思います。
しかし、その受診率を上げるだけでは健康診断をしてハイ終わり、ということになりかねず、それだと健康確保も生産性向上も実現されません。
受診後の現実
実際、健康診断結果を見て再検査や治療を受ける人は多いとは言えません。
所見ありと通知された:36.2%
そのうち、要再検査または要治療の指摘があった:75.0%
さらにそうのうち、再検査または治療を受けた:48.3%
これが現状です。
<出所>厚生労働省「平成24年労働者健康状況調査」
具体的な人数で表してみます。
たとえば従業員500人の会社であれば、「要再検査または要治療の指摘」の人は135人程度いるが、そのうち70人は「再検査または治療」を行わないということです。
会社の中で1割以上の人が健康上の問題を指摘されているにもかかわらず、何もしていないのです。
受診勧奨の重要性
定年引上げが風潮の昨今、会社はこのリスクを抱えたまま長期雇用をしなければなりません。
これでは健康経営の本質とずれてしまいます。
法律を守るだけではこの問題は解決できません。
ではどうすればよいでしょうか?
① 必要な労働者には、再検査等の受診を勧奨
② 再検査等に必要な時間の確保に協力する(労働時間として認定する等)
③ 再検査等に必要な費用を補助する
④ 再検査等の結果をもとに自己健康管理を助けるツールを提供する
⑤ 再検査等の結果を産業保健スタッフが把握し、安全・健康配慮義務の実行や自己健康管理を助ける
健康経営として従業員の健康に投資するという考えから、会社側はそれらの費用面の補助や労働時間としての理解をする、また労働者側は産業保健スタッフと連携し、事後措置の運営を形骸化しないように努めたりする必要があります。
労使ともに同じ目標に向かって行動し、同時にヘルスリテラシーを向上させる実施が望ましいでしょう。