今年8月までの労働災害の発生状況が発表されました
厚生労働省は、平成29年の職場における労働災害による死亡者数(1月から8月の速報値)が、対前年比で増加していることを発表しました。
9月20日に発表された8月末までの最新速報によると、
死傷者数は66,485人(前年同期比+600人、0.9%増加)
死亡者数は557人(前年同期比+49人、9.6%増加)となっています。
特に8月は単月の死亡者数が66人となり、対前年同月比57.1%(24人)と大幅な増加となったことを受け、同省は労働災害防止団体や関係事業者団体に対して、職場における死亡災害撲滅に向けた緊急要請を行いました。
今回の緊急要請のポイント
今回の緊急要請では、労使や関係者が一体となって、基本的な安全管理の取り組みをはじめとする、以下の労働災害防止活動の徹底を求めています。
【取り組みのポイント】
・ 安全マニュアルの順守状況の確認や、職場内の安全衛生活動の総点検を実施すること。
・ 安全管理者、安全衛生推進者、安全推進者などを選任し、その職務を確実に遂行させ、事業場の安全管理体制を充実すること。
・ 雇い入れ時教育等を徹底し、効果的な安全衛生教育を実施すること。
特に労働災害の多い業種について
死亡者数が特に増加している業種(建設業、陸上貨物運送事業、林業、製造業)では、別途、労働災害防止のための取り組みのポイントが以下のように明示されています。
【建設業】
・労働者の立ち入り制限や誘導員の配置等、車両系建設機械等との接触防止対策の実施
・高所作業における作業床の設置、安全帯の着実な使用等の墜落、転落防止対策の実施
・「交通労働災害防止のためのガイドライン」に基づく対策の実施
【陸上貨物運送事業】
・ 「荷役5大災害防止対策チェックリスト」を活用した荷役作業での安全対策の実施
・ 「交通労働災害防止のためのガイドライン」に基づく対策の実施
【林業】
・「チェーンソーによる伐木等作業の安全に関するガイドライン」に基づく対策の実施
【製造業】
・リスクアセスメントや機能安全による機械設備の安全対策の実施
・高経年設備に対する優先順位を付けた点検、補修等の実施
建設業は9月から立ち入り調査の前倒し
特に東京オリンピックに向けて建設ラッシュが続く建設業では、9月に東京都労働局が「建設業労働災害防止決起大会」を開催し、例年は年末に行われていた大規模建設現場(請負額50億円以上)を除く300箇所への立ち入り調査を、10月初旬までに前倒しして行うことを決定しています。
すでに、立ち入り調査を受けた現場もあるかもしれません。
この立入り調査では、特に
① 職長を対象にした能力向上の再教育が適正に行われているか
② リスクアセスメントのリスクレベル再評価が定期的に実施されているか
③ 労災発生時の原因分析結果や再発防止策が現場関係者に周知されているか
という上記の3項目を中心に調査が行われるということです。
建設業界では、今後も繁忙期が持続することから、労働基準局の監査も引き続き厳しく行われることが予想されます。
全ての現場で、労災を減らすための取り組みを徹底しておく必要があります。
労働災害撲滅に向けて!
労災の発生原因については、仕事量の増加に対して人員が不足していることや自然災害などもありますが、全ての業種において、基本的な安全衛生管理体制が欠けていたケースが目立つという報告がされています。
特に労働災害の多い業種では常日頃厳しく管理を行っている部分であると思いますが、この発表を肝に銘じ、より気を引き締めて職場環境の安全管理を行っていきましょう。