「甲状腺」と聞いて、その役割や場所をイメージすることができるでしょうか?
特に働き盛りである20~40代の女性に多い甲状腺の病気について説明したいと思います。
新陳代謝を活発にする重要なホルモン
甲状腺の主な役割は、甲状腺ホルモンを作り分泌することです。
甲状腺ホルモンとは、脳の下垂体から指令を受け、新陳代謝を活発にするホルモンのことで、脳や心臓、骨、筋肉、皮膚など全身の新陳代謝を活発にし、神経や活動の調整をする働きをしています。
大きさは縦が4cm程度、重さは18g前後。
場所は、首の前方の喉ぼとけのすぐ下にあり、ちょうど蝶が羽をひろげたような形しており、後方にある気管を抱き込むようについています。
甲状腺の病気は、主にホルモンの分泌異常や、甲状腺自体の炎症がですが、いずれも女性に多いことが特徴です。
受診の決めては自覚症状
甲状腺機能の検査は、一般的な健康診断の項目には含まれておらず、人間ドックにおいてもオプション検査である場合が多いため、なかなか発見されにくい病気でもあります。
また、その症状も、うつ病や更年期障害、単なる疲労と間違われやすいため、自身では気づかないことも多く注意が必要です。
専門医が少ないことからも受診につながりにくいと言われていますが、中でも以下のような症状をきっかけに受診される方が多いようです。
1.首前部の腫れ
甲状腺は、ごく薄く柔らかい臓器なので、普段は首を触ってもわかりませんが、少しでも腫れていると、手で触れることができます。
鏡などを見て自分で甲状腺腫に気づくこともあれば、ほかの人に指摘されて受診する方もいます。
2.機能異常による症状
【バセドウ病(甲状腺機能亢進症)】
・動悸
・多汗
・手指の震え
・体重減少
・眼球突出
・疲労感
・イライラ
・落ち着きがない
・下痢
・無月経
【橋本病(甲状腺機能低下症)】
・気分低下
・抑うつ傾向
・抜け毛
・むくみ
・意欲の低下
・記憶力低下
・首の腫れ
・のどの違和感
・寒がり
・体重増加
・肌の乾燥
・かゆみ
・月経量・期間増加
・不妊
・流産
甲状腺の病気は主に3種類
1.甲状腺機能の異常
【甲状腺機能亢進症(代表疾患:バセドウ病)】
甲状腺の機能が過度に高まり、ホルモンの分泌が過剰な状態。
【甲状腺機能低下症(代表疾患:橋本病)】
甲状腺ホルモンの分泌が不足した状態。
2.甲状腺の炎症
細菌、ウイルス感染等により、甲状腺に腫れや痛み、しこりが起こる。
3.甲状腺腫瘍
甲状腺腫瘍の大半は、治療の必要のない良性腫瘍です。
初期には自覚症状はほとんどありませんが、腫瘍が大きくなると、首の腫れやしこり、喉の違和感等の症状が現れることがあります。
妊娠・出産適齢期の女性は一度検査を
病状によって、活動制限や安静が必要な場合もありますが、甲状腺の病気は、適切な治療を行うことで、通常と何ら変わらず日常生活を送ることができます。
ただし、甲状腺の病気の大きな問題の一つは、妊娠・出産・不妊に影響が出る場合があるということです。
甲状腺の検査は一般的ではなく、また、激しい症状が出ないことが多いため、他の病気(うつ病、更年期障害、疲労感等)と混同したり、受診せずに経過している方も少なくありません。
特に、働き盛りであり妊娠・出産を望む適齢期にある女性(20~40代)は、気になる症状があれば、一度検査を受けてみることをおすすめします。
受診先は内科でも大丈夫ですが、心当たりの症状が多ければ、耳鼻科もしくは代謝内分泌内科が専門診療科となります。
医師も甲状腺治療について知識が豊富ですので、最初から専門内科を受診しても良いでしょう。