
「若くて体力があるから、熱中症は大丈夫」と思っている方もいませんか?
これまで、熱中症は年々増加傾向にあり、耳にする機会が多いため軽く見られているイメージがあります。
ただし、例年は異常な暑さが続いているため夜も気温が下がりきらず、寝ている間にも熱中症を発症することもあります。
このような状況から、厚生労働省は、5~9月の間に「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を展開しています。
「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」の目的と対策
「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」は新たに策定された「職場における熱中症防止のためのガイドライン」に基づき、熱中症予防対策を徹底し、労働災害を防止することを目的とされています。
また、重点的に呼びかけられているのは以下の3点です。
WBGT値(暑さ指数)の把握
単なる気温ではなく、湿度や輻射熱などを考慮したWBGT値を測定し、それに応じた対策(作業の中断や休憩の確保など)を行うこと。
重篤化の防止
異常を感じた時の「早期発見の体制」や「緊急時の措置手順」をあらかじめ作成し、関係者に周知しておくこと。
基礎疾患などへの配慮
糖尿病や高血圧症など、熱中症のリスクを高める持病がある労働者に対し、医師の意見を踏まえた適切な配慮を行うこと。
2025年の速報値では、死亡を含む休業4日以上の死傷者数は1,681人、うち死亡者数は15人とされています。
死に至らない場合でも、熱中症による症状は、身体への異常なダメージをもたらすことがあります。
熱中症で救急要請しても、来てくれない!?
熱中症による脳へのダメージを表現する例えとして、「脳がゆで卵になる」と言われることがあります。
つまり、一度深刻なダメージを受けると、元の状態には戻りにくいということです。
夏場は熱中症による救急要請が大幅に増加するため、私が救急隊員として勤務していた頃も、毎年夏が近づくにつれて緊張感が高まっていたことを覚えています。
また、「119番通報をすれば、すぐに救急車が来てくれる」と思い込まないことも大切です。
私は世田谷区内の消防署に勤務していましたが、近隣の救急隊が別件対応中だったため、世田谷区から町田市まで30分以上かけて出場したこともありました。
(※救急隊の到着に時間を要したり、重症が予想される場合は、近隣の消防車が先に駆けつけます。)
重症の場合、これでは手遅れになる可能性があります。
また、「救急要請の増加=医療機関のひっ迫」でもあるため、救急隊到着後も搬送先病院の受け入れ調整に時間を要する場合があります。
ためらわず119番通報を
だからと言って、119番通報を躊躇する必要はありません。
「限界」になってからだと遅いこともありますので、違和感を感じたら涼しい環境で休み、医療機関への受診、救急要請をしてください。
「自分の命は自分で守る」ことは、いかなる時でも大切だと思いますし、熱中症を甘く見ると最悪の事態を招くこともあります。
この記事を読んでいる方の中には、高齢のご家族と一緒に生活されている方もおられるかと思います。
高齢者は、加齢による体温調節機能の低下や、喉の渇きを感じにくくなることなどから、熱中症リスクが高まるとされています。
この時期はすこし「お節介」なくらいに気にかけておいた方がいいかもしれません。
熱中症への備え・対策として
暑熱順化トレーニング
消防署では、毎年5月頃から暑熱順化トレーニングを行います。
冬場に汗をかきづらくなった身体を、夏に向けて「汗をかくこと」に慣れさせ、効率よく発汗できる状態へ整えるためのトレーニングです。
私自身も、通気性のない雨合羽や防火衣を着て走る訓練を行っていました。
ただし、消防士が実施する訓練は、火災現場でも熱中症になりにくくするためのものであり、会社員として働きながら同じような高負荷トレーニングを行うのは現実的ではありません。
そこで、日常生活の中でも比較的取り入れやすい暑熱順化トレーニングをご紹介します。
【屋内】
・筋トレ、ストレッチ
室内では筋トレやストレッチで軽く汗をかくことができます。(室温の設定にはご注意ください)
・入浴
シャワーのみで済ませず、湯船にお湯をはって入浴しましょう。入浴の前後に十分な水分と適度な塩分を補給し、入浴して適度に汗をかくことも効果的です。
【屋外】
・ジョギング、ウォーキング
帰宅時にひと駅分歩く、外出時にできるだけ階段を使用するなど、意識して少し汗をかくような動きをしましょう。
目安として、ウォーキングの場合の時間は1回30分、ジョギングの場合の時間は1回15分、頻度は週5日程度です。
・サイクリング
通勤や買い物など、日常の中で取り入れやすいのがサイクリングです。
目安として、時間は1回30分、頻度は週3回程度です。
また、「着替え」も重要です。
汗は蒸発する際に身体の熱を奪ってくれますが、湿度が高い環境では蒸発しづらくなります。
これは、衣服が汗で濡れている場合も同様です。
こまめに着替えたり、タオルで汗を拭いたりすることで、効率よく身体の熱を外へ逃がしやすくなります。
今後、さらに気温が上昇していくことが予想されます。
この記事を通じて、少しでも熱中症を「自分事」として考えていただくきっかけになれば幸いです。
<参考>
・ 厚生労働省「令和8年『STOP!熱中症 クールワークキャンペーン』を実施します」
・ 山陰放送「熱中症になると「脳がゆで卵状態になる」って本当? 後遺症・死に至ることも…知っておきたい「熱中症」の真実」
・ 東京消防局「数字で見る令和6年中の東京消防庁管内の災害動向等 第3節」
・ 熱中症ゼロへ「熱中症について学ぼう:暑熱順化」
・ 西宮市「【浜分署】暑熱順化で熱中症予防」

















