みなさんは普段ストレスを感じることはありますか?
厚生労働省「令和4年 労働安全衛生調査」によると、現在の仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスを感じる事柄があると回答した労働者の割合は82.2%でした(前年の同調査53.3%)。
この調査結果からも、多くの人が心理的な負荷を抱えていることが伺えます。
では、ストレスなどを発散させるためにどのようなことをすると良いのでしょうか。
スポーツをしたり、甘いものを食べたり、カラオケに行ったり、友人とお喋りをしたり、さまざまな活動をして発散する人も多いかもしれません。
それらで上手く気持ちを切り替えられると良いのですが、ストレスとはなかなか厄介なもので、倒してもすぐに蘇り、繰り返し私たちに攻撃をしてくるモノも多くあります。
今回は、そのようなストレスから少し距離を置く方法として「マインドフルネス」「ボディスキャン」を紹介します。
あなたのストレスは過去から?それとも未来から?~マインドフルネス~
ところで、ストレスを感じている時、みなさんはどんなことを考えていますか?
・ あの時こうすればよかったな
・ 上司から叱られてしまったな
・ パートナーと喧嘩してしまったな
・ 明日のプレゼン上手くできるだろうか
・ 今後のキャリアをどうしよう
過去や未来のことを思い浮かべ、後悔をしたり、イライラしたり、不安になってしまう人も多いのではないでしょうか。
このように過去や未来へ向いた思考や感情にとらわれている状態から抜け出すための手法として、マインドフルネスがあります。
マインドフルネスとは仏教の瞑想法をルーツにしたアプローチで、認知行動療法の部類として扱われています。
アメリカのグーグル社がマインドフルネスを取り入れているなど、現在は企業のストレス対策として普及してきているため、みなさんも聞き覚えがあるかもしれません。
伊藤絵美著、細川貂々イラスト『セルフケアの道具箱』(2020年7月、晶文社)では、マインドフルネスについて以下のように述べられています。
自分の「今・ここ」の体験に気づきを向け、それらを判断したり評価したりすることなく、そのまま眺めたり受け止めたりすること
私たちは無意識のうちに過去や未来のことを考えて、「嫌い」・「悪い」といった評価をしてしまいます。
しかし、よくよく考えてみると、過去に起きたことを変えることはできませんし、未来のことも誰にもわかりません。
それにもかかわらず、過去や未来のことにエネルギーを注いでしまうと、脳を休めることができず、疲労がただ蓄積される状態になってしまうのではないでしょうか。
“今・ここ”に目を向けるには~ボディスキャン~
それでは、これから過去や未来のことを一切考えず、今にだけ集中してみてください。
実際にやってみると、「後であれをしなくちゃ」、「さっき食べたごはん美味しかったな」などさまざまな余計な考えが出てくると思います。
それだけ、過去や未来への思いというのは強いのです。
集中をするポイントは身体の感覚に気づきを向けることです。
その手助けとなるモノとしてボディスキャンというワークです。
ボディスキャンは、ベッドやソファで仰向けになって行ってみてください。
手や足は楽な位置におきリラックスします。
次に頭から足にかけてゆっくりと身体の感覚に気づきを向けます。
重たい、チクチクする、温かい、かゆいなど、その感覚を評価せず、ありのまま受け止めていきます。
気づきを向けにくい場合は、手を左胸の上に置いて心臓の鼓動を感じてみたり、身体の一部を手でさすってその感覚を味わうと、“今・ここ”の集中が得られやすくなることがあります。
呼吸に意識を向けてみるのも良いでしょう。
長い時間行う必要はなく、数分でも良いので少しずつ練習をしてみてください。
その際、「しっかりと集中しなくてはいけない」と力む必要はありません。
先に述べたように、集中が途切れるのは普通のことですので、「途切れているのに気づいたら集中し直したらいいや」と気楽に取り組んでいただければと思います。
厚生労働省「こころの耳」には、ヨガの一環として行っているボディスキャンのワーク動画もありますので、そちらも活用いただくと取り組みやすくなるかもしれません(ポジシェア)。
※ボディスキャンを行うにあたって持病をお持ちの方や、通院をされている方は主治医に確認をしてから行ってみてください。
最後に
私も大切なプレゼンの前日はあれやこれやと考えて、寝つきにくくなることがある方なのですが、この記事を書くにあたって、2週間ほどボディスキャンを就寝の際に行ってみました。
最初は痒みを感じることがあり、気がそれてしまうこともありました。
慣れてくると深い呼吸をしていることに気づくことができ、呼吸に意識を向けているといつの間にか眠ってしまうことが多かったです。
呼吸を意識することで“今・ここ”の状態を作ることができ、過去や未来への考えから上手い具合に距離を置けたのかもしれせん。
ストレスの発散やリラックスの方法は人それぞれで、どのような方法でも万人に効くとは限りません。
ご自身にとって取り組みやすく、継続できる方法が一番だと思いますので、みなさんにとっての最善のストレスとの付き合い方が見つかるよう願っております。
<参考>
・ 厚生労働省「令和4年労働安全衛生調査」
・ 伊藤絵美著、細川貂々イラスト『セルフケアの道具箱』(2020年7月、晶文社)