正しく知って活用しよう!誤解されがちな「年次有給休暇の計画的付与制度」とは

みなさんは「年次有給休暇の計画的付与制度」をご存知でしょうか?
簡単に言うと、会社側が労働者に対して「〇/〇~〇/〇の〇日間に、有給休暇を取得してください」と指示をして、有給休暇を取得させるという制度です。

これだけ聞くと、労働者のみなさんは即座に「そんな制度イヤだ!自由に有給休暇を取らせて!」「なんで会社に指定された日に休まなきゃいけないんだ!」と思ってしまいますよね。
もちろんこの制度は、労働者の休日を会社の都合でコントロールするために作られたものではありません。

むしろ労働者のために創設された制度ですので、きちんと理解して運用すれば、会社側と労働者側、双方にとってメリットがあるのです。

どういうこと?と思った方は、ぜひこの記事を読んで「年次有給休暇の計画的付与制度」を正しく理解し、前向きに導入を検討しましょう。

年次有給休暇の計画的付与制度を導入している企業の現状

厚生労働省が発表した「令和4年就労条件総合調査(PDF)」によると、年次有給休暇の計画的付与制度を設けている企業は43.1%という結果でした。

約半数の企業が、年次有給休暇の計画的付与制度を実施しているということになります。
では、何日間の有給休暇を、労働者に計画的に取得させているかというと、その日数は5~6日とするケースが最も多いという結果となりました。

また、年次有給休暇の計画的付与制度を導入している企業は、導入していない企業よりも年次有給休暇の平均取得率が8.6%(平成 20年)高くなっており、当該制度の導入は年次有給休暇の取得促進に有効であると考えられています。

※厚生労働省HP引用:年次有給休暇の計画的付与制度(PDF)

この数値だけ見ると、みなさんは「約半数もの企業が導入しているなんて、従業員からの反発はないの?」「無理やり有給休暇を取らせているんだから、そりゃ取得率も上がって当然でしょ」と、懐疑的に思う人もたくさんいるでしょう。

しかしそれは、この制度をしっかりと正しく理解していないからかもしれません。それではいよいよこの制度について詳しく説明します。

年次有給休暇の計画的付与制度の内容とメリット

年次有給休暇の計画的付与制度とは…年次有給休暇のうち、5日を超える分については、労使協定を結べば、計画的に休暇取得日を割り振ることができる制度のこと

つまり、20日有給休暇を持っている従業員に対して、5日を除く残りの15日の有給休暇を、企業が指定した日に取得させることができる制度、ということになります。

これのどこが労働者のために作られた制度なの?と思うことでしょう。
では、そもそもなぜこんな制度が作られたのでしょうか?

この年次有給休暇の計画的付与制度創設の背景には「労働者はためらいを感じることなく年次有給休暇を取得することができる」という効果を期待して作られました。
アンケート調査によると、全体の約3分の2の労働者は年次有給休暇の取得にためらいを感じているという報告があります。これが日本人労働者の有給休暇取得率低下につながっています。
それを打破するために設けられた制度でもあるのです。

そしてこの制度が「労働者のための制度」となるために最も重要なポイントは、この制度は必ず「労使協定を結ぶ」ことが前提にある点です。
突然会社から問答無用に「この日に有給休暇を取得しなさい」と言われることはありませんのでご安心ください。

労使協定には、下記の項目を定めることが必要とされています。

  1. 計画的付与の対象者
  2. 計画的付与の対象となる年休日数
  3. 付与する具体的な日にち
  4. 5日以上の有給を付与されていない者の扱い(有給付与日数のうち5日間は、各個人が自由に取得できるよう残しておかなくてはなりません)
  5. 計画的付与日の変更があった場合の手続きについて

そのほかにも、運用上、必要な事項はすべて労使協定で定める必要があります。

このように、具体的な付与する日にちも協定内であらかじめ指定されているため、休日の計画も前もって立てることができるのです。
この協定は、具体的な付与する日にちを指定するため、労使協定は毎年締結しなければなりません。きちんと毎年、いつ有給休暇が付与されるかを前もって知ることができるのです。

有給休暇取得日が前々から決まっているということは、有給休暇の取得にためらいを感じる必要もなく、有意義な休日にするための計画も立てることができる、という労働者にとってもメリットがある制度なのです。

具体的な例として、会社が年末年始に休業日を日間設定したとします。その際に「〇/〇~〇/〇の〇日間は会社の休業日となるので、みなさんその日は全員有給休暇を取得してください」というのが、全従業員に対して同一の日に年次有給休暇を与えるという一斉付与方式となります。

そのほかにも、サービス内容によって24時間365日稼働していなければならない会社もあります。
その場合、有給休暇を個人の自由に取らせてしまうと、業務が回らなくなってしまう日も出てきてしまいます。
そういったリスクを避けるために、班・グループ別に交替で、前もってこの日に年次有給休暇を取得してください、と付与することもあります。

このように、実際の活用事例を聞くと、「計画的付与」が実は身近に導入されていることがわかったと思います。

ここまで読むと、年次有給休暇の計画的付与制度の印象もだいぶ変わってきたのではないでしょうか?

年次有給休暇の計画的付与制度は拒否できる?

年次有給休暇の計画的付与制度は、会社側と、労働者の過半数で組織された労働組合(ない場合は、労働者の過半数を代表する者)と労使協定が正しく結ばれて初めて効力を持ちます。
ですので、労使協定が正しく結ばれている場合、その内容に対して後から一部の者が反対したとしても認められません。

会社側は対象者全員に対して計画的付与を行うことができます。

また、年度途中で入職した従業員に対しても、前もって制度の説明をしっかりしておかないと、有給ではなく「通常の休日」だと認識される可能性があります。
後々のトラブルに発展しかねないので注意が必要です。

このように年次有休休暇の計画的付与制度は、労働者が有給休暇を取得しやすいようにするという労働者のための制度なのですが、冒頭でもお伝えしたように、労働者の誤解を招きやすい内容でもあります。
ですので、導入を検討する際には、運用について労働者から不満が出ないよう、しっかりと労働者に説明を行い、労使協定を結ぶ際なども、労働者に対して最大限の配慮をしましょう。

<参考>
年次有給休暇取得促進特設サイト

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野田なつ子株式会社ドクタートラスト 広報課

投稿者プロフィール

長年ブライダル業界で、映像コンテンツに携わってきました。激務が当たり前だった前職からドクタートラストに転職し、働き方改革や健康経営の素晴らしさを実感。前職の経験を活かして、見やすい、わかりやすい写真や映像で、産業保健業界の有益な情報を発信して行きたいと思っています。
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