人的資本経営~変革力を高め、持続的に企業価値を向上させよう~
- 2021/11/15
- 人材育成
「人的資本経営」とは、人材を投資対象の「資本」ととらえ、人材の持つ能力を最大限引き出すことで企業価値の中長期的な向上につなげる経営の考え方です。
経済産業省は、中長期的な企業価値向上の観点から「人的資本経営」を推進しており、これまで研究会や検討会が開かれてきました。
人的資本経営が推進される背景にはどのような問題意識があるのでしょうか?
人的資本経営推進の問題意識
グローバル化、テクノロジーの発展、新型コロナウイルスの蔓延や人生100年時代の到来など、企業、個人を取り巻く環境の変化が速く、予測が困難な時代のなかで、素早く変化に対応できる変革力を高める重要性が社会全体で増しています。
企業としても変化への対応は大きな課題です。
価値創造の源泉として人が中心的な要素となった現代のビジネスでは、変化に対応し、持続して企業価値を創造していくために、その中心的な要素である人が最大限に力を発揮し、変化に対応できるよう育成や健康の増進、モチベーションの向上等、人的資本への投資を経営上の重要な課題として位置づけて、取り組んでいく必要があります。
こうした問題意識から日本でも人的資本経営の推進が進められているのです。
人的資本経営での企業の人的資本の人材戦略、マネジメントの違い
人的資本経営での企業の人的資本の人材戦略、マネジメントの捉え方の違いを見ていきます。
1. マネジメントの目的
従来の人材戦略やマネジメントでは、人材を資源とみなし、マネジメントの方向性は使用、消費を管理する考えであり、そこに投じる資金は費用としてとらえられていました。
人的資本経営の人材戦略や人材マネジメントでは、人材を資本とみなし、マネジメントの方向性は、人の成長を通じて価値を創造することであり、資金は費用ではなく投資としてとらえます。
2. イニシアティブのありか
従来の人材戦略やマネジメントでは、経営陣が、人事の問題を「経営の問題」と考えることはなく、経営戦略と人事戦略が分離することが多くありました。
人的資本経営の人材戦略では、経営のコアメンバーに最高人事責任者を加え、ほかの経営陣と密接に連携し、経営主導で経営戦略の実現につながる人材戦略を策定します。
3. 人材戦略の方向性
これまでの人材戦略やマネジメントでは、人材配置等の人事戦略は人事部内や社内だけで共有されるだけのもとなっていることが多く、本人に人事配置の意図が伝わらないというケースもあり、閉じたものとなっていました。
人的資本経営の人材戦略やマネジメントでは、戦略内容を積極的に伝えます。
経営戦略の実現のためにどういった意図で人材配置が行われるのか、従業員、さらには外部にまで発信することで従業員のモチベーションを高め、外部の優秀な人材を自社に惹きつけ、人材の登用、確保をします。
人的資本経営を実現させよう
2020年8月、米国証券取引委員会(SEC)が上場企業に対して、人的資本の情報開示を義務化すると発表しており、米上場企業は人的資本に増加に向けた活動により一層取り組んでいくことが想定されます。
日本でも将来人的資本の情報開示が義務化の兆候か、2021年6月11日に公表された「改訂コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)に「企業の中核人材における多様性の確保」など人的資本について記載されました。
経産省の推進もあり、DXなどと同様に人的資本経営がトレンドになることは間違いないでしょう。
まずは上場企業への対応が求められることになると見込みですが、人的資本経営に取り組み、積極的に投資している企業とそうでない企業とでは、人材個人から見た時に、大きく魅力に差が生じたり、採用が進まず、自社の優秀な人材の流出が生じたりしてしまう可能性があります。
世の中で当たり前になる前に、中長期的な成長を目指して、人的資本経営に取り組みましょう。