これからのトレンド、人的資本とは?

「人的資本」という言葉をご存知でしょうか?
価値を生み出す元手を資本と言いますが、各個人のスキルや経験、健康等をカネやモノと同じように、資本として考える言葉です。
2020年8月、米国証券取引委員会(SEC)が上場企業に対して、人的資本の情報開示を義務化すると発表しました。
義務化されたことで、米上場企業は人的資本に対してより一層向き合うことになり、人的資本の増加に向けた従業員への教育や健康増進等などの活動が拡大していくと思われます。
日本でも将来人的資本の情報開示が義務化されることが予見されており、その兆候か2021年6月11日に公表されたコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)でも「企業の中核人材における多様性の確保」等、人的資本について記載されています。
「人的資本経営」という言葉も登場しており、2021年7月1日には経済産業省が、「人的資本経営の実現に向けた検討会」を開催しました。
今回は、なぜ人的資本が注目を集め、情報開示が求められているのか、理由を3つ挙げます。

産業構造の変化

人的資本が重視されるようになった理由はさまざまありますが、一つには、モノが中心の第二次産業からサービスが中心の第三次産業への産業構造の変化が挙げられます。
第二次産業では、商品生産のための工場の建設や輸送など、モノ、カネが価値の創造の中心的な要素でしたが、第三次産業では、新サービスのアイデアを生み出す、お客さんを感動させる接客など、高度なスキルを持つヒトが価値創造の中心的な要素です。
モノ、カネだけでなく、価値創造の中心的な資本であるヒトも見なくては、企業の競争力や価値を測ることはできないという点から、人的資本が注目されています。

変化の激しい時代

急速に発達する技術や、コロナの蔓延によるビジネス環境の変化など、変化がとても激しい時代です。
トレンドがどんどん変わり、従来の製造設備など有形資産や、過去有効であった手法等が急速に価値を生み出せなくなります。
このような環境下で、教育など人的資本への投資を行っておらず、古い機材しか扱えない、古いやり方に固執する人材ばかりを揃えていては、企業の競争力はどんどん下がっていきます。
一方で教育など人的資本への投資をきちんと行い、新しい技術の活用やDX推進といったように新しい手法を取り入れられる人材を揃えている企業は競争に打ち勝つことができると考えられます。
変化の激しい時代でも今後成長していくことのできる企業であるかという点から、教育や育成、採用など人的資本への投資活動をきちんと行っているか、現在の人的資本はどのような状態なのか関心が高まっています。

人的資本への投資状況がリスクとなる可能性がある

労災の発生や労働安全衛生法違反などが発生しニュースになると、企業の価値を毀損してしまいます。
また長時間労働が蔓延していたり、上司や同僚からの支援が得られなかったり、正当に評価してもらえない職場では、優秀な人材の流出が懸念されます。
人的資本の蓄積した人材の重要性が増している昨今他社に取られてしまうことは競争がとても不利になってしまいます。
こうした自体を招かない、また招く心配がないということを示すためにも、人的資本に注目が集まっています。

2020年9月、経済産業省は「人材版伊藤レポート」を発表しました。
日本企業の中でもすでに、特にグローバルで活躍する企業を中心に人的資本に関する取り組みが進められています。
企業価値創造の中核的な位置づけとして注目されている人的資本に、投資をしていない企業は、今後の成長に疑問が持たれ、投資先や就職先として選ばれない可能性があります。
企業価値を持続的に成長させるため、人的資本に関する取り組みを進めましょう。

<参考>
厚生労働省「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会報告書 ~人材版伊藤レポート~」

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石津 卓也株式会社ドクタートラスト

投稿者プロフィール

楽しく働けるしくみのもとで働くことが大切だという考えを持ち、そのしくみを実現させる可能性を秘めた、情報技術に関心を持つようになりました。
現在、プログラマーとして、業務の自動化、効率化やしくみづくりを行っています。
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