はじめに
2024年3月29日、厚生労働省は「求職者等への職場提供に当たっての手引」を公表しました。
この手引は、転職経験者、求人企業及び民間人材サービス事業者を対象とするヒアリング等の調査研究を行った上で策定されたものです。
厚生労働省の調査によると、「自身が経験した転職・就職活動の中で入手した企業の職場情報と比較し、転職・就職後に働き始めてから知った実際の職場環境との間に自身にとって不都合なギャップがあった者」は全体の約6割と、半分以上が不都合なギャップがあったと回答しています。
個々の働き方のニーズが多様化する中で、求職者と企業のミスマッチを解消し、求職者の円滑な労働移動を促進していくため、採用活動で求職者が求める情報を適切に提供していく必要があります。
本記事では、求職者の求めていることを企業が情報開示できるように、厚生労働省が策定した「求職者等への職場提供に当たっての手引」についての解説をします。
求職者が求めている情報
多様な働き方が増えているからこそ、どのような情報を開示すべきなのか企業側も悩む部分と思います。
「求職者等への職場提供に当たっての手引」によると、求職者が求めている情報は大きく分けて4項目あります。
〇企業等・業務に関する情報
〇職場環境に関する情報
〇労働条件・勤務条件
〇その他
企業等・業務に関する情報は企業の安定性や、求職者の強みを活かせる業務内容かどうかが「求職者等への職場提供に当たっての手引」にて挙げられています。
職場環境に関する情報では、テレワークができるのか、育児休業がとれる環境かどうかも重視されています。
子育てをしている求職者だった場合、これらの情報が出ていない企業にはまず応募をしないという意見も「求職者等への職場提供に当たっての手引」にあり、育児と仕事をしっかり両立する意思のある方が多いことがわかります。
労働条件・勤務条件は、副業・兼業の可否、転勤の有無等が「求職者等への職場提供に当たっての手引」にて挙げられました。
厚生労働省が策定した「副業・兼業に関するガイドライン」では、副業・兼業を希望する人は年々増加していて、その理由としては「収入を増やしたい」、「さまざまな分野の人とのつながりが欲ほしい」などがあります。
働き方が多様化しているからこそ副業・兼業ができる企業の需要は高まっています。
その他に関しては、転職者の場合と非正規雇用労働者にわけられました。
また、転職者の場合は、離職率や研修制度の情報を求めている傾向にあります。
非正規雇用労働者は、正社員転換制度の有無等が「求職者等への職場提供に当たっての手引」にて挙げられました。
職場の情報提供をする際の企業の課題点
求職者側が求めている情報は様々ありますが、その情報をどこへどの程度開示すべきなのかという問題にもなってくるでしょう。
情報の提供方法はウェブサイトや求人票に開示する方法、企業説明会の場において提供する方法などがあり、企業説明会では質問の時間も設けられます。
ただ、求職者は選考にも影響するのではと考え、したい質問もできないことがあり、入社後のギャップにつながってしまう可能性が出てきます。
だからこそ、求職者が気になる情報を事前にウェブサイトなどに開示する重要性が増しますが、求職者が求めている情報をすべてウェブサイト等に開示すればよいというわけではありません。
幅広い情報の開示をすることで、マッチングにつながる一方で、人物像が固められすぎた情報提供によって必要以上に応募者を限定させすぎてしまうおそれがあるためです。
そのため、求職者の求めている情報を汲み取り、企業がアピールしたい情報を開示することが重要でしょう。
まとめ
「求職者等への職場提供に当たっての手引」では、求職者が求めている情報が大きく4つ挙げられましたが、求める情報が今後も不変というわけではなく、その時代によって変わるものではありますが、求職者へ何をどこまで情報開示するのかが重要です。求職者への職場情報の提供をしっかりと行うことで、就職後の早期離職を防止し、人手不足の解消・生産性の向上へつながります。
求職者が求める情報や、情報提供の今後の課題など、採用を行う上で参考にしていただけたらと思います。
<参考>
・ 厚生労働省「「求職者等への職場情報提供に当たっての手引」を策定しました」
・ 厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン 」