「トライくるみん」創設へ~男性の育休取得に新たな施策~

令和元年度、男性の育児休業取得率は7.48%となっており、女性の83%とくらべると非常に低い割合となっていることがわかります。
こうした現状を踏まえ、男性の育児休業の取得を後押ししていくため、厚生労働省は制度を見直すこととなりました。
見直し内容を解説する前に、現行制度「パパ休暇」、「パパ・ママ育休プラス」をご存じですか?
育児休業は1人の子に対して1回の休業が原則ですが、父親は子どもが生まれてから生後8週間以内に育児休業を取得した場合には「パパ休暇」を使い、再び育児休業を取得することができます。
また、父親と母親がともに育児休業を取得する場合には「パパ・ママ育休プラス」が使えます。
「パパ・ママ育休プラス」では子が1歳2か月に達するまでの間に父母それぞれ1年間育児休業を取得できます。(ただし、出産した母の場合は出産日、産後休業期間と育児休業期間をあわせて1年間)
この制度をうまく使うことによって父母が交互に育児休業を取得したり、母親の後に入れ替わりで取得し、2人合わせて1歳2か月まで67%の給付金を得たりすることも可能です。(育児休業の開始から6か月経過後は50%となる)

新制度のポイント

今回の制度見直しのポイントを労働者向け、企業向けに分けて解説します。

〈労働者向け〉

男性の育休ニーズの高い生後8週間以内に4週分を2回取得可能になり、最大4回取得可能になります。
また、申請期限も原則1か月前までだったものが、2週間前までに申し出ることとなり大幅に短縮されます。
そして、生後8週間以内に限り、労働者の意向に応じて就労を認めることになります。

〈企業向け〉

雇用期間が1年未満の非正規雇用の人も育休を取得可能になります。
休業を取得しやすい職場環境の整備や育休の取得を労働者に個別に働きかけること、従業員数1,001人以上の大企業には、育児休業等取得率の公表が義務づけられることになります。

くるみん認定基準の見直し

現在、「プラチナくるみん」、「くるみん」と2種類の認定がありますが、両者の認定基準を引き上げることになるようです。
また現行のくるみんの基準の参考として、3つ目の新たな類型「トライくるみん」(仮称)を創設することになります。
以下では、「プラチナくるみん」、「くるみん」の基準見直し案を解説します。

「プラチナくるみん」の見直し案

・ 男性の育児休業等取得率「13%以上」を「30%以上」へ引き上げる
・ 男性の育児休業等・育児目的休暇取得率「30%以上かつ育児休業等取得者が1人以上」を「50%以上かつ育児休業等取得者が1人以上」へ引き上げる
・ 出産した女性労働者および出産予定だったが退職した労働者のうち、1歳時点在職者の割合「55%以上」を「70%以上」に引き上げる
※施行から1年間は基準を満たしていなくても取り消し事由としてカウントされません

「くるみん」の見直し案

・ 男性の育児休業等取得率「7%以上」を「10%以上」 へ引き上げる
・ 男性の育児休業等・育児目的休暇取得率「15%以上かつ育児休業等取得者が1人以上」を「20%以上かつ育児休業等取得者が1人以上」へ引き上げる

男性の育休取得率向上の狙い

冒頭ご紹介したように7.48%の取得率である男性の育児休業ですが、取得率が上がることによって、男性が仕事と育児を両立することができるので、妻の負担が減り、女性の雇用継続にもつながると考えられます。
労働者不足が問題になっている今、出産・育児による退職者を減らせるという企業側の利点もあります。
特に中小企業においては、男性が育児休業を取得すると代替要員の確保等の負担が大きいことから、男性の育休を取得するための制度の整備などといった施策に加えて、「一人が欠けても大丈夫と言えるような職場」づくりが求められるのではないでしょうか。
男性も女性もワークライフバランスのとれた働き方ができる職場環境の実現を目指していきたいですね。

<参考>
厚生労働省「労働政策審議会建議「男性の育児休業取得促進策等について」を公表します」

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吉沢夏希株式会社ドクタートラスト 保育士

投稿者プロフィール

大学在学中から保育園で子どもたちに接する仕事を続けてきました。保育士としての経験と出産育児の経験をあわせて、産前産後・育児中の働くお母さんの力になりたいと思っています。
また、記事では子どもの成長過程に関することから保育士が実際に現場で使う保育テクニックなどを紹介し、日々の子育てが少しでも楽しくなるようにサポートしていきます。
【保有資格】保育士、チャイルドカウンセラー、家族療法カウンセラー、幼児食インストラクター、チャイルドコーチングアドバイザー
【YouTubeで「子育て相談コーナー」配信中!】
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