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副業・兼業を行う人の健康リスクは高い~睡眠時間は少なく、労働時間は多い~
- 2020/9/17
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現在、厚生労働省の労働政策審議会では「副業・兼業を行う場合の健康確保措置」について検討が進められています。
今回はこれら検討内容をもとにして「副業・兼業と健康」についてわかりやすく解説します。
副業をしたい人、副業をしている人が増えている
まず、現在の副業・兼業の実態についてみていきましょう。
総務省「就業基本構造調査」によると、「副業を希望している雇用者数」、「副業者数」はともに1992年から2017年にかけて増加傾向にあるとわかります。
さらに、今回の新型コロナウィルスの影響で、企業に依存せず自立して稼ぎたいと感じた人は多かったのではないでしょうか。
株式会社ビズリーチが行ったアンケートによると、約6割のビジネスパーソンがコロナウイルスの影響により、キャリア観が変化したと回答し、そのうち9割以上が「企業に依存せずに、自律的にキャリア形成する必要がある」と回答しています。
今後も副業の波はさらに加速していきそうですね。
では、副業をしている人はどのような理由で副業を行っているのでしょうか。
前掲の労働政策審議会安全衛生分科会によると、副業をしている理由で多かったものは「1つの仕事だけでは生活ができないから」「収入を増やしたいから」という収入を理由とした回答でした。
そのほかにも「副業の方が本当に好きな仕事だから」「時間のゆとりがあるから」「様々な分野の人とつながりができるから」なども10%以上の回答がありました。
副業をしている人は健康リスクが高い?
次に、副業を行っている人の総労働時間を見ていきます。
2020年8月26日に開催された第133回「労働政策審議会安全衛生分科会」の資料「副業・兼業に係る実態把握の内容等について」によると、本業・副業を含めた総労働時間は「280~320時間未満」が一番多く、「240~280時間未満」「320~360時間未満」が続き、副業をしている人は総労働時間が240時間以上が多くを占めていることがわかります。
一般的に、病気や自殺に至るリスクが高まる労働時間といわれている「過労死ライン」と定義されているのは、残業80時間です。
副業をしている人の多くが過労死ラインを超えていることになります。
また、睡眠時間も副業をしている人のほうが短いと結果がでています。
総労働時間が同じにも関わらず、何故副業をしているかどうかで睡眠の時間に差が出るのか、理由としては下記の2点が考えられるのではないかと思います。
・ 本業と作業場所が違うため移動時間が生じるため、睡眠時間が短い
・ 本業とは別の業種で副業を行う場合は、その分勉強時間が必要となり、勉強時間や慣れない業務で作業効率が悪化している
さらに、副業をしている人はしていない人にくらべ、ストレスチェクや健康診断の受験率も低い結果も出ています。
働き方によってはストレスチェックや健康診断の受検対象になっていない、もしくは忙しさから受検をしていないなどの理由が考えられます。
つまり、副業をしている人は、そうでない人に比べ健康リスクが高いにもかかわらず、健康診断やストレスチェックを受検していないという現状にあることがわかりました。
今後の課題
冒頭で副業をしている人は「生活費のため」と回答している人が多いとお伝えしましたが、そのような人にとっては多少の体調不良などがあっても仕事を休まず、事態が悪化するまで働く人が多いかもしれません。
この場合、メンタル不調や病気、また最悪の場合は死に至る病や自殺など、命に関わる危険もあり、企業にとって大切な人材を失う可能性もあります。
しかし、副業を行っている従業員に自己申告制で副業での労働時間を申告してもらっても、労働時間が長ければ素直に申告する人は少ないかもしれません。
仮に長時間労働が判明し、会社側が注意をしたとしても、生活費のために働いている人の場合は労働時間を削れないという可能性もあります。
さらに現在ではフリーランスや外部委託など雇用でないかたちの就労も増えており、このような人たちの労働時間の把握や衛生安全の確保が難しく、今後は労働形態に関わらず労働安全衛生法を適応させることなどが検討されています。
新型コロナウィルスの影響により、今後も副業や自由な働き方はより本格化していくことでしょう。
しかし、いまだに副業の定義や労働規則に関してはあいまいな部分が多く、今後も検討が必要とされています。
副業を行う人がいきいきと働けるよう企業側としてもさまざまな規則を検討していく必要がありそうですね。
<参考>
・ 第2回「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会」(2018年10月2日開催)
・ 第133回「労働政策審議会安全衛生分科会」(2020年8月26日開催)
・ 株式会社ビズリーチ「新型コロナウイルス感染症拡大をきっかけに、約6割がキャリア観に変化 うち9割以上が「企業に依存しないキャリア形成が必要」と回答」(2020年4月30日)