特定保健指導の実施基準が策定されます
- 2020/7/30
- 健康診断
厚生労働省は、2020年5月29日に「労働者災害補償保険法における二次健康診断等給付の健診費用の額等のあり方に関する検討会」の報告書を公表しました。
本報告書では、①二次健康診断等の費用額の設定、②特定保健指導に関する実施基準(内容、方法、目安時間、様式)が取りまとめられています。
今後、本報告書を参考に、労災保険二次健康診断等給付担当規程などの改正が予定されています。
今回は、「労働者災害補償保険法における二次健康診断等給付の健診費用の額等のあり方に関する検討会」の報告書についてわかりやすく解説します。
そもそも二次健康診断等給付制度とは?
労災保険法における二次健診等制度(以下、二次健診)は、業務上の事由による脳・心臓疾患の発生予防を目的としています。
対象は、定期健康診断等のうち直近のものにおいて脳・心臓疾患に関連する項目に所見ありと診断された人や、健診で所見がなかった場合でも就業環境を勘案し、産業医等が所見ありと診断した人です。
二次健康診断では、「脳血管と心臓の状態を把握するため必要な検査(頸部超音波検査や負荷心電図などの精密な検査)」と「その結果に基づいた医師または保健師の面接による保健指導」が行われます。
「労働者災害補償保険法における二次健康診断等給付の健診費用の額等のあり方に関する検討会」の報告書の主なポイント
以下では、「労働者災害補償保険法における二次健康診断等給付の健診費用の額等のあり方に関する検討会」の報告書の主なポイントを解説します。
二次健康診断等の費用額
二次健康診断は、その特殊性から精密な検査を必須とし、就業上の配慮に結び付く高度な医学的所見が求められます。
加えて、特定保健指導の費用額の根拠が不明であるなどの課題がありました。
本報告書では、検診項目の費用全般について、診療報酬点数表および労災診療費算定基準に基づき算定することが妥当であるとし、特定保健指導の単価については、動機付け支援の実勢価格に二次健康診断の特殊性を評価のうえ加算することとしました。
特定保健指導の実施基準(内容、方法、目安時間、様式)
今回の見直しにより、受診者本人に過重労働等により脳・心臓疾患の発症リスクが高まることの自覚を促す必要があること、事業者や産業医等に受診者の就業上の配慮に結びつく情報を確実に伝達する必要があるとの視点から、「就労の状況等に係る質問票例」と「二次健康診断等給付特定保健指導例」が作成されました。
また、特定保健指導の実施内容や方法の標準化を図るため、「二次健康診断等給付特定保健指導例」をもとに特定保健指導を実施することとし、「生活上の問題点」と「就業上の問題点」を抽出する方法とすることとなっています。
保健指導の目安時間については20分以上です。
さらに、受診結果については、「所見を記載する視点及び記載例」を参考に事業者または産業医等において就業上の配慮に結びつく内容を記載させることとしました。
まとめ
現在、定期健康診断において何らかの異常の所見があると認められる労働者の割合は5割を超え、過労死等も横ばいの状況が続いています。
このような状況も踏まえ、二次健診等制度の利用者数は、制度施行当初(平成13年4月1日~)は約3,200人程度でしたが、年々増加し、平成30年度においては約45,000人となっています。
今回の検討により、事業者や産業医等が確実に対応できるようなしくみづくりも進んでいます。
社員の健康確保のため、二次健診等を活用していきましょう。
<参考>
・ 厚生労働省「「労働者災害補償保険法における二次健康診断等給付の健診費用の額等のあり方に関する検討会報告書」を公表しました」