深夜業に従事する者は年2回の健康診断が必須
特定業務従事者の健康診断については、労働安全衛生規則第45条に規定されています。
労働安全衛生規則
(特定業務従事者の健康診断)
第45条 事業者は、第13条第1項第3号に掲げる業務に常時従事する労働者に対し、当該業務への配置替えの際及び6月以内ごとに1回、定期に、第44条第1項各号に掲げる項目について医師による健康診断を行わなければならない。この場合において、同項第4号の項目については、1年以内ごとに1回、定期に、行えば足りるものとする。
2 前項の健康診断(定期のものに限る。)は、前回の健康診断において第44条第1項第6号から第9号まで及び第11号に掲げる項目について健康診断を受けた者については、前項の規定にかかわらず、医師が必要でないと認めるときは、当該項目の全部又は一部を省略して行うことができる。
3 第44条第2項及び第3項の規定は、第1項の健康診断について準用する。この場合において、同条第3項中「1年間」とあるのは、「6月間」と読み替えるものとする。
4 第1項の健康診断(定期のものに限る。)の項目のうち第44条第1項第3号に掲げる項目(聴力の検査に限る。)は、前回の健康診断において当該項目について健康診断を受けた者又は45歳未満の者(35歳及び40歳の者を除く。)については、第1項の規定にかかわらず、医師が適当と認める聴力(千ヘルツ又は4千ヘルツの音に係る聴力を除く。)の検査をもつて代えることができる。
特定業務従事者に対しては、当該業務への配置換えの際、および6ヶ月以内ごとに1回、定期的に、定期健康診断と同じ項目の健康診断を行わなければなりません。
(ただし、胸部X線検査については、1年以内に1回定期的に行えば足りることとされています)
特定業務のなかには、「深夜業を含む業務」が含まれています。
深夜業の回数が6ヶ月を平均して1ヶ月あたり4回以上の場合には、6ヶ月以内ごとに1回の健康診断を行わなければならないとされています。
深夜業とは?
深夜業とは、労働基準法において、午後10時から午前5時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域または期間については午後11時から午前6時まで)の間における労働者による労働のことと定められています。
要は、22時~翌朝5時までの間に労働することを指しています。
しばしば、この深夜業がどこまで該当するのかを企業から質問されることがあります。
① 交代制シフトを採用していて、月に4日以上夜勤がある。
② 所定労働時間9時~18時の社員が22時を超えて残業した回数が1ヶ月あたり4回以上が続いている。
上記①の場合は、常時深夜業に従事する労働者として、6ヶ月ごとに健康診断を行うことになります。
では、②の場合はどうでしょうか。
もう少し極端な例を出すと、22時10分までの残業が月に4回以上あった場合はどうか? ということです。
ポイントとしては、22時以降に残業をしなければならないことが「常態化」しているかどうかが判断基準となります。
決算期などで、単発的に残業が多くなってしまった場合などは、常態化しているとはいえない部分が多いため、年2回の健康診断を受けさせる必要はないといえるでしょう。
ただし、22時以降の残業が1ヶ月あたり4回以上が6ヶ月~1年以上続いている場合については常態化されていると判断される可能性が非常に高く、特定業務従事者として年に2回の健康診断を受けさせるようにしましょう。
※ なお、年2回の健康診断を受ける必要があるかどうかの判断は、所管の労働基準監督署などにお問合せください。
過重労働対策としての活用
とある産業医によれば、22時以降の残業を月4回以上している従業員には、必ず年2回の健康診断を受けさせている企業があるようです。
その企業では、慢性的に残業時間が長く、ノー残業デーなどを設けても効果が薄かったとのこと。
そこで衛生委員会で協議し、22時以降の残業を月4回以上した従業員には必ず健康診断を受けてもらうというルールを設定したところ、そのルールを導入した当初は、健康診断対象者が出ていたが、数ヶ月後には対象者がゼロになったということです。
効果が出た理由として、経費削減が叫ばれている中、労働者自身が健康診断対象者になることによって余計な経費負担を会社にかけさせてしまうので、特に時間を気にするようになったという声が多かったとのこと。
過重労働者が多い企業では、面談対応に追われてしまい、根本的な解決策が見当たらない、という声を聞くことがあります。
一つの対策として、検討してみてはいかがでしょうか。