インフルエンザ予防接種、産業医にお願いできるのか?

産業医紹介のお仕事をしていて、時折ご質問いただくのが「インフルエンザの予防接種を産業医の先生にお願いできないか?」というお話です。
特に流行シーズン前になると、毎年何社もの企業から同様のお問合せをいただきます。
これまでの先生はやってくれていたので、というご依頼が多いですが、企業としては、顔見知りの先生にお願いできたら手配する手間もなくて助かるというところでしょうか。
一度に多くの社員に接種ができるので、予防接種率向上という観点から企業内での予防接種を望まれるケースもあるようです。
それでは、産業医にインフルエンザの予防接種をお願いしても問題はないのでしょうか?

原則、お勧めできません。

結論として、インフルエンザの予防接種を企業内で行うことは、お勧めできません。
最大の理由は、予防接種が医療行為にあたるため、産業医が行う業務とは別の業務となることです。
産業医の業務は、労働安全衛生法に基づいた「労働者の健康管理」を行うもので、臨床的な医療業務とはまったく別物、一線を画している状況です。
そのため、お医者様だから=予防接種対応OK、という状況ではありません。
産業医に予防接種の依頼をする場合、先生にはまったく別の業務を依頼することになります。
さらに、医療行為を行うためには、その実施可能場所が医療法により限定されています。
医療法のなかでは、病院、診療所、もしくは患者の自宅等(往診)などでの実施に限るとされ、基本的には診療所登録のある場所と明示されています。
診療所等をお持ちの企業であれば、社内で予防接種を実施することに問題はありません。
しかし、そういった施設をお持ちでない企業では、実施場所としての水準クリアという点からも、実現へのハードルが高い状況です。
(※例外的に、医療機関が「巡回診療」として、出張先での予防接種を請け負うケースがあります。その場合、必ず管轄の保健所へ実施計画書などの届け出が必要となります)

企業側・産業医側にもリスクが生じる

また予防接種には、かなり低いとはいえ、必ず副作用のリスクがあります。
場合によっては予防接種を受けた人の生命・健康等に危険を及ぶこともありえます。
その点を考えると、企業側のリスクも高く、実施はお勧めできません。
さらに、診療所等以外での医療行為は先生方にもリスクが生じますので、基本的に緊急の場合(最低限の救命措置など)を除いて対応を避けられる先生が多くなっています。

近隣クリニックへの依頼がベスト

これまで述べてきた点を踏まえると、やはり事業場での予防接種の実施は、対応を避けるべきと考えざるを得ません。
しっかりと設備の整ったクリニックで実施することが、企業にとっても先生にとっても、そして被接種者となる社員の方にも安心な運営となるのではないでしょうか。

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