健康経営–鍵は「見えづらい」損失コスト–

頭痛や腰痛、花粉症、アレルギー等の仕事を休むほどではないけれど、自分にとっては結構な悩みの種となっている症状が、働くみなさんには一つくらいあるのではないでしょうか。
実はそれらは、経営者にとって、「他人事だから関係ない」では済まされない重大な問題かもしれません。

「プレゼンティーイズム」、「アブセンティーイズム」という言葉をご存知でしょうか?

プレゼンティーイズム(Presenteeism): 本人の疾病やちょっとした身体症状が理由で、出勤しているにも関わらず完全に実力を出し切れていていない状況
アブセンティーイズム(Absenteeism): 習慣的に欠勤状態であることや生産性が特に低い状態

どちらも生産性を語るうえで大切なトレンドキーワードとなっています。

 健康経営の考え方

働く人の健康状態が生産性に影響を与えると考え、社員の健康を経営的・戦略的に考えることを「健康経営」と呼び、日本国内でも広まりつつあります。

健康経営の根拠としては現在様々な研究が行われていますが、東京大学政策ビジョン研究センターからは、以下のような研究結果が発表されています。
『米国における先行研究によれば、従業員の健康に関連する総コストのうち、生産性の損失が4分の3を占めるのに対し、医療・薬剤費は24%を占めるに過ぎないという(Healthy Workforce 2010)。最大の項目は、プレゼンティーイズム(何らかの疾患や症状を抱えながら出勤してはいるが、業務遂行能力や生産性が低下している状態)となっている。健康経営は「健康と生産性」の両方をマネジメントし、健康関連コスト全体を小さくすることを目指した取り組みであると考えられる。』

健康関連総コスト内訳

健康関連総コストの内訳は、医療費約17%、アブセンティーイズム約5%、ブレゼンティーイズム約75%、長期や短期障害費用約3%となっています。この中で突出しているのが、プレゼンティーイズムです。
プレゼンティーイズムは、冒頭で記載した、“仕事を休むほどではないけれど、自分にとっては結構な悩みの種となっている症状”によって、生産性が本来発揮できる100%の状況から落ちている状況を示し、大きな割合を占めているにも関わらず目に見えずらい損失コストとなります。
ストレス、仕事満足度、生活満足度、主観的健康感のような心理的リスクはプレゼンティーイズムとの関連が強く、血圧、血中脂質、血糖値、肥満といった生物学的リスクはアブセンティーイズムとの関連があると示されています。
身体的な症状がなく「健康」と感じていても、心配事や不安などがある場合、すでに生産性が落ちている状態(=プレゼンティ-イムズ)かもしれません。

健康と生産性をマネジメントする!

社員の健康に投資をすることは一見無駄な経費にうつることもあるかもしれません。しかし、研究段階では確実に投資に勝るリターンがあると示されています。生産性を高めていくためには、健康診断やストレスチェックの結果の活用に加えて、組織診断や職場改善などが効果を発揮することが期待されています。
社員の健康に目を向け、社内の雰囲気や生産性の状況を振り返り、両方をマネジメントすることができれば、さらなる業績向上のきっかけとなるかもしれません。

 

出典
東京大学政策ビジョン研究センター 健康経営ユニット
ハーバードビジネスレビュー
経済産業省

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