建設業でメンタルヘルス対策が重視される背景には労働災害があった
- 2019/12/23
- 労災
“メンタルヘルス”という単語を耳にするとどういった業種・職種が頭に思い浮かぶでしょうか。
IT・エンジニア系、クリエイティブ系などいろいろあると思いますが、多くの人は、いわゆる“ホワイトカラー”と呼ばれるような業種を真っ先に思い浮かべる気がします。
ところが、最近では建設業におけるメンタルヘルス対策が重要視されています。
実際に2019年10月1日に公表された「過労死等防止対策白書」でも建設業界のストレス問題がクローズアップされました。
なぜ建設業においてメンタルヘルス対策が重要視されるのか
フィジカル面の労災対策が重要に見える建設業で、メンタルヘルス対策が重要視されるのか、メンタルヘルス問題と労災が密接に関連しているからだと言えます。
その理由としては「労災の背景には不安全行動があること」が挙げられます。
不安全行動とは、労働者本人または関係者の安全を阻害する可能性のある行動を意図的に行うことを言います(例:安全装置を外す、合図・確認なしに車を動かすなど)。
平成26年度の労働災害原因要素の分析では、不安全行動別にみると「動いている機械、装置に接近し又は触れる」「確認をしないで次の動作をする」「物のつかみ方が確実でない」などが上位にあがっています。
これらの不安全行動の原因として、疲労による認知機能の低下や、人間関係のもつれによる高ストレス状態の持続と行動の簡略化などが挙げられ、その防止として、メンタルヘルス対策にスポットが当たっているのです。
労災を防ぐための取組
では、メンタルヘルスを原因とするこれらの不安全行動を防止するためにいったいどういった取り組みがあるでしょうか。
パッと思い浮かぶのはヒヤリハットの報告・共有などかと思いますが、メンタルヘルス面の対策では「KY活動」「無記名ストレスチェック」などがあります。
KY活動とは、危険予知活動の略称であり、なにか作業を始める前に現場で実施する簡易的な予防活動で、指差し呼称・指差し唱和(「○○ヨシ!」)などがあります。
建災防式健康KYでは、作業員の健康状態を把握するために作業前に「よく眠れたか」「おいしくご飯を食べたか」「体調は良いか」の3つの問いかけを行っています。
具合が悪い場合には作業所長へ報告がなされ、所長からはより詳細にヒアリングが行われ、そこでさらに点数が高い場合には相談機関などに連絡がされるという流れとなっています。
無記名ストレスチェックは、建災防式KYが個人の健康状態をチェックする活動に対して、無記名式で作業員全体のストレス状態をチェックする活動になります。
設問としては、仕事量に対する感覚などの項目があり、これは工期やコストなど、現場全体のストレス状態と密接に関連していると言えます。
これからの建設業における労災対策
近年、機械設備の向上や安全衛生活動の活性化が功を奏し、建設業としても産業全体としても労災の件数は年々減少傾向にあります。
しかし、機械設備の安全レベルの向上により、不安全行動を原因とする労災が際立つ結果となっているのも事実であり、痛ましい労災のニュースが報じられています。
今後、健康KYや無記名SCなど様々な取組が普及されることが期待されます。