日本の物流を支えているトラック運送業界では、人手不足問題が深刻化しています。
2019年4月の有効求人倍率は全産業1.38に対し、自動車運転については2.91となりました。
その背景には物流量の著しい増加があります。
国土交通省は2019年10月1日、2018年度の宅配便取扱個数が43億701万個だったと発表しました。
その内トラックによる配送が42億6,061万個(全体の98.9%)で個数は年々増え続けており、2017年度と比較すると5,568万個増加しています。
このままだと日本の物流が危ない!
2019年4月に労働基準法が改正され、まず大企業を対象として年720時間を上限とした時間外労働の規制がスタートしています。
運送業界では5年の猶予が与えられており、2024年の4月から年960時間を上限とする規制がスタートする予定です。
しかし現状では、長時間労働を前提として事業をおこなっている会社も少なくありません。
このまま時間外労働の規制がスタートしてしまうと、対応できない事業者が多数発生し、現在の輸送量に対し対応できなくなる可能性があります。
そういった事態を防ぐ為に、運送業界の規制の適正化を行うことで、法令を遵守する事業者を増やし、トラック業界の労働条件を改善することで新たな人材確保もと以下の法律改正が実施されました。
[1] 規制の適正化
[2] 事業者が遵守すべき事項の明確化
[3] 荷主対策の深度化※2019年7月1日施行済
[4] 標準的な運賃の告示制度の導入
このうち、[1] 規制の適正化、および[2] 事業者が遵守すべき事項の明確化2019年11月から施行されました。
具体的な改正内容~より厳格に、そして明確に~
11月の改正概要は以下のとおりです。
遵守すべき事項を明確化することで、悪質な事業者を減らすことを目的としています。
[1] 規制の適正化
① 法令に違反した者等の参入の厳格化
・事業許可に関する欠格期間の延長(2年から5年へ)
・処分逃れのため自主廃業を行った者の参入制限
・密接関係者(親会社等)が許可の取消処分を受けた者の参入制限など
② 許可の際の基準の明確化
以下について、適切な計画・能力を有する旨を要件として明確化
・安全性がしっかりと確保できるのか(車両の点検・整備の確実な実施など)
・事業を続けていくための計画があるのか(車両台数・十分な広さの車庫など)
・事業を続けていくための資金があるのか
③ 約款の認可基準の明確化
荷待時間、追加的な附帯業務等の見える化を図り、対価を伴わない役務の発生を防ぐために基準を明確化
[2] 事業者が遵守すべき事項の明確化
① 輸送の安全に係る義務の明確化
・事業用自動車の定期的な点検・整備の実施等など
② 事業の適確な遂行のための遵守義務の新設
・車庫の整備・管理
・健康保険法等により納付義務を負う保険料などの納付
再配達をなくそう
運送業界で働いていなくとも、他人事ではありません。
このまま運送業界の人手不足が深刻化してしまうと、今のように注文したものが翌日に家に届くようなことはなくなり、送料が上がってしまう可能性があります。
私達にできることの一つに、再配達の防止があります。
国土交通省の発表では2018年4月期の宅配便再配達率は約15.0%、約6.5億個もの荷物が再配達になっています。
再配達を減らす取組みとして注目されているのが「置き配」です。
アマゾンジャパンは2019年10月から「置き配指定サービス」を標準化すべく岐阜県多治見市で実証実験を行っています。
注文者は「玄関」「ガスメーター」「ガレージ」「自転車のかご」「ビルの管理人」などの場所を指定することができ、サインなしで荷物を受け取ることができます。
専用の宅配用バックやボックスを設置することで鍵をかけて盗難を防ぐこともできるので、今後「置き配」が標準的になるかもしれません。