法令違反は製造業がトップ~厚労省、平成30年度の長時間労働にかかる監督指導結果を公表~

2019年9月24日、厚生労働省は「長時間労働が疑われる事業場に対する平成30年度の監督指導結果」を公表しました。
この監督指導は、各種情報から時間外・休日労働時間数が1ヶ月あたり80時間を超えていると考えられる事業場や、長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場を対象に行われるものです。
今回は、2018年4月から2019年3月までの1年間(以下、2018年度)の結果がまとめられています。

20,244事業場で労働基準関係法令違反

2018年度に監督指導を行った事業場は29,097事業場で、そのうち全体の69.6%にあたる20,244事業場で労働基準関係法令違反が認められました。

法令違反の内容

労働基準関係法令違反が認められた20,244事業場について、主な違反内容は以下のとおりです。

① 違法な時間外労働:11,766事業場(全体の40.4%)
② 賃金不払残業:1,874事業場(同6.4%)
③ 過重労働による健康障害防止措置が未実施:3,510事業場(同12.1%)

このうち、③の「健康障害防止措置」とは、衛生委員会設置や健康診断実施、産業医面談、ストレスチェック実施を指します。
また、上記結果を業種別にみていくと以下のとおりで、製造業での法令違反が目立ちます。

法令違反の事業場うち、労働時間うち、賃金不払残業うち、健康障害防止措置
製造業4,5672,895323692
建設業1,897910214167
運輸交通業3,7972,695254528
商業3,0971,715366594
接客娯楽業1,9231,125245648
その他2,4451,114204438

過重労働による健康障害防止のための指導状況

監督指導を行った29,097事業場のうち、全体の70.5%にあたる20,526事業場に対しては、過重労働による健康障害防止措置が不十分であるとして、改善指導がなされています。
具体的な指導内容は以下のとおりです。

① 産業医面談などの実施:1,787事業場
② 衛生委員会などで長時間労働による健康障害防止対策に関する調査審議の実施:3,405事業場
③ 時間外労働・休日労働時間の1ヶ月あたり80時間以内への削減:8,735事業場
④ 時間外労働・休日労働時間の1ヶ月あたり80時間以内への削減:11,632事業場
⑤ 産業医面談が実施できるしくみの整備:683事業場
⑥ 衛生委員会などで、ストレスチェックを含むメンタルヘルス対策に関する調査審議の実施:1,129事業場

また、監督指導を行った29,097事業場のうち、全体の16.3%にあたる4,752事業場は労働時間の把握方法が不適切であるとして、以下のように指導がなされています。

① 始業・終業時刻の確認・記録:2,688事業場
② (自己申告制の場合)自己申告制の説明:296事業場
③ (自己申告制の場合)実態調査の実施:2,154事業場
④ (自己申告制の場合)適正な申告の阻害要因の排除:244事業場
⑤ 管理者の責務:52事業場
⑥ 労使協議組織の活用:11事業場

監督指導によりわかったこと

時間外労働の最長時間

前出「違法な時間外労働」があった事情場11,766事業場について、1ヶ月あたり時間外・休日労働が最長の者は、それぞれ以下のとおりです。

80時間以下:3,909事業場
80時間超100時間以下:2,647事業場
100時間超150時間以下:4,052事業場
150時間超200時間以下:939事業場
200時間超:219事業場

労働時間の管理方法

また、今回の監督指導によって、労働時間の管理方法を確認したところ、以下のように、自己申告制が一番多いことがわかりました。

① 使用者自ら現認:2,445事業場
② タイムカード:9,636事業場
③ ICカード、IDカード:5,361事業場
④ 自己申告制:10,165事業場

労働時間の管理は、客観的記録が原則

2017年1月に策定された「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」においては、労働時間の管理方法は以下の2通りが原則とされています。

① 使用者が自ら現認することで確認
② タイムカードやICカード、パソコンの使用時間の記録など、客観的な記録で確認

また、例外的に「自己申告制」とする場合は、以下すべての措置を講じる必要があります。

・労働者への十分な説明
・労働時間管理者への十分な説明
・自己申告の労働時間と実際の労働時間が合致しているかの調査、および労働時間の補正
・自己申告の労働時間を超えて事業場にいる時間について、その理由を労働者に報告させる場合には、当該報告が適正に行われているかの確認
・適性な自己申告を阻害する要因がないかの確認
・慣習的な要因で法令違反が行われていないかの確認

「自己申告制」を採用するうえでは困難が伴います。
現在、「自己申告制」を採用している事業場においては、客観的な労働時間管理方法に変更するようにしましょう。

<参考>
「長時間労働が疑われる事業場に対する平成30年度の監督指導結果を公表します」(厚生労働省)

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蜂谷未亜株式会社ドクタートラスト 編集長

投稿者プロフィール

出版社勤務を経てドクタートラストに入社。産業保健や健康経営などに関する最新動向をいち早く、そしてわかりやすく取り上げてまいります。
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