厚労省の令和2年度概算要求、過去最大に

8月27日、厚生労働省は令和2年度の予算概算要求を発表しました。
総額は、令和元年度の当初予算31兆9,641億円にくらべ6,593億円増額の32兆6,234億円で過去最大です。

予算概算要求の全体像

令和2年度の概算要求では「人生100年時代に対応した全世代型社会保障の構築」に取り組むとし、成長と分配の拡大を図るため、次の3つの柱に重点を置いています。

① 多様な就労・社会参加の促進
② 健康寿命延伸等に向けた保健・医療・介護の充実
③ 安全・安心な暮らしの確保等

上記3本柱のうち、特に「働き方」に関連してくる「① 多様な就労・社会参加の促進」を中心にみていきます。

多様な就労・社会参加の促進

令和2年度の厚生労働省予算概算要求で重点が置かれている3本柱のうち「① 多様な就労・社会参加の促進」は大きく次の3つに分けられます。

(1) 働き方改革の推進による誰もが働きやすい環境づくり
(2) 多様な人材の活躍促進
(3) 人材育成の強化と人材確保対策の推進

以下では(1)(2)の施策を紹介します。

(1) 働き方改革の推進による誰もが働きやすい環境づくり

・ 長時間労働の是正や安全で健康に働くことができる職場づくり:359億円
長時間労働の是正については、これまでも積極的に施策が行われてきましたが、令和2年度の概算要求では、中小企業や小規模事業者を対象とした取り組みに重きが置かれており、窓口の設置やマニュアルの整備などが想定されています。
あわせて産業保健総合支援センターにおける中小企業、小規模事業者の支援、さらに産業医をはじめとした産業保健関係者向け研修制度の充実など、産業保健体制の充実も図られます。
このなかには、ストレスチェック制度の実施を含むメンタルヘルス対策も盛り込まれています。
また、各業種のなかでも、自動車運送業、建設業、情報サービス業における長時間労働の改善に力を入れており、昨今注目を浴びているトラック運送事業については、荷主に対して、適正取引を促すために、取引環境と長時間労働の改善に向けたガイドラインの周知が盛り込まれています。

・ 柔軟な働き方がしやすい環境整備:6.4億円
テレワーク、あるいは兼業・副業といった言葉もすっかり社会に浸透しました。
このうちテレワークには積極的な導入をより支援していく方向です。
また、兼業・副業は、健康面からの施策を充実させ、健康診断やストレスチェックなどを活用して労働者の健康確保に取り組む企業への助成金制度創設が想定されています。

・ 総合的なハラスメント対策の推進:45億円
ハラスメント対策については、これまでも都道府県労働局に相談体制がありましたが、今後は被害を受けた労働者からの相談に迅速に対応するため、平日の夜間や休日も対応するフリーダイヤルやメールが設置されます。
また、中小企企業については、専門家が個別訪問し、取り組み支援を行うほか、外部相談窓口の運営支援、労務管理担当者への研修が実施されます。

・ 治療と仕事の両立支援:35億円
治療と仕事を両立する労働者を支援する体制として、「トライアングル型サポート体制」が構築されます。
トライアングル型サポート体制は、治療と仕事の両立に向けて、主治医、会社・産業医と、患者に寄り添う両立支援コーディネーターのトライアングル型のサポート体制のことを指し、両立支援コーディネーターは、個々の患者の両立を支援するだけでなく、主治医と会社・産業医の連携体制において中核を担います。
今後、この両立支援コーディネーターの育成、配置に向けて取り組んでいきます。

(2) 多様な人材の活躍促進

・ 就職氷河期世代活躍支援プランの実施:653億円
就職氷河期とは、バブル崩壊に伴う景気低迷で、多くの企業が人件費を抑えようと新規採用を減らした1993~2004年ごろのことを指します。
この時期に学校を卒業した就職氷河期世代(2019年時点で40歳前後)の人たちを支援する取り組みとして、ハローワークや資格取得といった、求職者への直接的な支援のほか、当該世代の人たちを正社員として雇い入れた企業への助成金拡充などが行われます。

・ 女性活躍の推進:222億円
女性活躍推進法に基づく取り組みが努力義務である300人以下の中小企業への取り組みを強化し、助成金の活用などを行います。
また、「仕事と家庭の両立支援」の観点から、男性に育児参画を促すべく、男性の育児休業取得に関する助成金に新たな加算措置を設けます。
さらに、「仕事と介護の両立支援」の観点から、介護休業制度の周知広報などを行っていきます。

その他

3本柱のうち、「③ 安全・安心な暮らしの確保等」では、保育に関する取り組みが盛り込まれています。
保育については、保育所、保育人材の両方が不足している状況であるのはよく知られているところです。
このうち保育所の整備として、賃貸物件を活用して保育所を設置する場合の補助について、その基準額を定員規模に応じたものとし、受け入れ人数の拡大をはかります。
一方、保育人材については、保育士の業務負担を軽減する観点から、業務のICT化を行うために必要なシステムの導入費用を支援していきます。

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蜂谷未亜株式会社ドクタートラスト 編集長

投稿者プロフィール

出版社勤務を経てドクタートラストに入社。産業保健や健康経営などに関する最新動向をいち早く、そしてわかりやすく取り上げてまいります。
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼、リリース送付などはこちらからお願いします】

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