忘年会に潜むさまざまなハラスメント
2017年もいよいよ年末に差しかかり、忘年会の準備に追われている幹事の方も少なくないでしょう。
かつて会社の忘年会といえば、日頃の憂さを忘れ、皆でたのしくお酒を飲み交わすといったイメージがありましたが、最近ではさまざまなハラスメントに関連した問題がお酒の席についてまわるようになりました。
とくに近年、忘年会に関して聞かれるハラスメントとして、セクハラ、パワハラ、アルハラの3つが挙げられます。
今やなんでもかんでもハラスメントと訴えられ得る時代、企業側はこれらのハラスメントの定義と具体的な事例について、きちんと認識しておく必要があります。
セクハラ(職場におけるセクシャルハラスメント)
男女雇用機会均等法によると、セクハラとは次のように定義されています。
- 職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否したことで解雇、降格、減給などの不利益を受けること
- 性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に大きな悪影響が生じること
忘年会での具体例としては、性的な経験について尋ねることや女性社員の体に触れることなどは当然のこと、お酌や男性上司の隣に座ること強要することもセクハラの対象となり得るとされています。
セクハラに関しては受け手の捉え方による部分が大きいので、明確にこの行為がセクハラあたるとは断言できない状況です。
しかし、セクハラを受けたと相談を受けた際には、些細なことであっても「それくらいのことで」などと軽くあしらったりせず、真摯に対応を心掛けることが大切です。
パワハラ(職場におけるパワーハラスメント)
厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」によると、パワハラとは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう」とされています。
【パワハラにの具体的な行為】
(1)身体的な攻撃(暴行・傷害)
(2)精神的な攻撃(脅迫・暴言等)
(3)人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
(4)過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
(5)過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
(6)個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
忘年会の場合においてよく問題とされるのは、参加の強要です。
勤務時間内に忘年会が行われる場合は別として、勤務時間外に強制的に参加させるのは労働基準法違反にも問われます。
参加しないことによって本人に不利益を与えたり、または参加しないと評価に響くなどと脅すこともパワハラに該当します。
アルハラ(アルコールハラスメント)
飲酒にまつわる人権侵害の行為を指します。具体的には以下の5つとされています。
・ 飲酒の強要
・ イッキ飲ませ
・ 意図的な酔いつぶし
・ 飲めない人への配慮を欠くこと
・ 酔ったうえでの迷惑行為
数あるハラスメントのなかでも、アルハラは最も命の危険に直面するリスクを持っています。近年、急性アルコール中毒により命を落としてしまったというニュースが後を絶ちません。
ちなみに、急性アルコール中毒の疑いが生じた場合のために、以下の救護処置を覚えておくとよいでしょう。
・絶対に一人にしない。
・衣服をゆるめて楽にする。
・体温低下を防ぐため、毛布などをかけて暖かくする。
・吐物による窒息を防ぐため、横向きに寝かせる。
・吐きそうになったら、抱き起こさずに横向きの状態で吐かせる。
吐けばアルコールが排出されて状態が改善すると考えがちですが、酔いつぶれた人を無理に吐かせようとすると嘔吐物がのどに詰まり、窒息する可能性があります。
また、意識のない場合は速やかに救急車を呼ぶ必要があります。
体調を崩すことが分かっていながら飲酒を強要し、急性アルコール中毒で死亡させた場合は、刑法第205条(傷害致死罪)が適用され、3年以上の懲役が科せられます。
昔からお酒の場にトラブルはつきものと言われていますが、企業モラルに注目が向けられる今、企業は十分に人権や健康管理に配慮する義務があります。
安全で楽しい忘年会となるよう、上司や幹事の方はこれらの点を注意しておくべきと思われます。
【参考文献:厚生労働省】
「職場におけるセクシュアル・ハラスメント調査研究会報告書」
「こころの耳」