長引く咳に注意!結核の恐ろしさとは
- 2017/10/30
- 病状・症状
今でも年間3万人が結核に
「結核」と聞くと、ひと昔以上前の病気というイメージがあります。
明治〜昭和中期頃までの小説には「結核で亡くなる」描写が頻繁に出てきますね。
決して作家に多い病気というわけではありませんが、正岡子規、石川啄木、梶井基次郎などは結核で最期を迎えました。
抗生物質の普及とBCG接種、また日本の衛生状態や日本人の栄養状態の改善などにより、劇的に結核による死亡率は低下しましたが、現在の日本でも年間約3万人が新たに結核にかかっていることをご存知ですか?
風邪だと思い気付かないことも
結核はかつての日本で国民病といわれるほど猛威を振るい、多くの方が結核で命を落としました。
結核は結核菌といわれる細菌による感染症で、肺に感染すれば肺結核、腸に感染すれば腸結核というように肺以外の部分に感染を起こすこともあります。
現在の日本では結核の約80%が肺結核なので、肺以外の結核というのはほとんど耳にすることはないと思います。
結核を発症すると以下のような症状があらわれます。
・ 体のだるさ
・ 咳
・ 微熱(37℃程度)
この時点ですぐに結核に気付くことはほとんどなく、風邪だと見過ごされてしまうことが多いのが現状です。
しかし、風邪と違って結核は自然に良くなることはないので、症状がダラダラと続き、次の状態になってはじめて「結核かもしれない」と気づくことが多いのです。
・ 微熱が1ヶ月程度続く
・ 咳が1ヶ月以上続く
・ 体重が減ってきた
結核は咳などからうつるので、風邪だと思って過ごしている内に周囲に感染を広げてしまう危険性があります。
結核=入院ではない
結核というと昔はサナトリウムと呼ばれる長期療養所での隔離入院、今でも陰圧室と呼ばれる特別な病室への入院で治療をしますが、すべての結核患者が入院治療を行うわけではありません。
結核の診断では、レントゲンや迅速血液検査、痰の検査などさまざまな検査を行いますが、痰の中に結核菌が排菌されていなければ人にうつす可能性はないと判断されます。
「結核を発症しているけれど、人にうつさない状態」という患者さんもそれなりにいるので、その場合は通院しながら抗生物質を中心とした内服治療を行うことになります。
耐性菌の問題
現在は数種類の抗結核菌を同時に内服することが治療の柱となっています。
複数の抗結核薬を内服するのは、耐性菌(従来の抗結核菌が効かないもの)を作らないためなのですが、それでも結核菌はどんどん耐性を獲得して、「多剤耐性結核」やさらに「スーパー耐性結核」と呼ばれる、抗結核薬の効かない結核の蔓延が非常に問題となっています。
これ以上耐性菌を増やさないためには、もしも結核にかかった場合には指示された通りの飲み方でしっかりと薬を飲み続けることが大切なのです。
BCG接種は100%ではない
BCG接種の義務化により結核の感染率が下がったのは事実ですが、100%感染を防げるわけではありません。
また、体質によっては接種しても抗体がつかないこともあるため、決して結核は過去の病気ではなく、今でも十分気を付けなくてはならない病気です。
結核の蔓延を防ぐためには、BCG接種の徹底はもちろんのこと、なるべく規則正しい生活をして免疫力を低下させないこと、そして「もしかしたら結核かもしれない」という意識を頭の片隅に持つことが大切です。
微熱や咳が長期間続く時、そして「体調が悪く体重が減る」というのは、結核はもちろんさまざまな状況において詳しい検査が必要となる目安です。
おかしいなと思った時は安易に風邪だと考えず、必ず詳しい検査を受けるようにしましょう。