
「ご飯(お米)を減らしたほうがいいのはわかっている。でも、どうしても食べたい」
働く方への保健指導の場では、対象者の皆さまからよく耳にする言葉です。
特に冬は活動量が減る一方で食欲はしっかりあるため、体重が増えやすい季節。
それでもご飯(お米)を“我慢して食べない”やり方ではダイエットが続かず、かえって反動で食べ過ぎてしまうこともあります。
そこで今回は、管理栄養士の視点から、“満足感を保ちながら自然とご飯の量を減らす方法”をご紹介します。
なぜご飯を減らすのは難しいのか?―日本人の食文化と“満足感”の関係
「ご飯が食べたい」という気持ちは単なる“好きだから”だけではありません。
ご飯を減らすのが難しいのには、いくつか理由があります。
胃が“いつもの量”を覚えている
大盛りや普通より多い量が習慣になっている人は、その量を胃が“標準”と認識します。
急に半分にするなど極端に減らすと、満腹感を得にくく、継続が難しくなります。
ご飯は満足感と結びつきやすい
ご飯に含まれる糖質は血糖値を上げ、脳に「満足した」と信号を送ります。
そのため量を減らすと、どうしても物足りなさを感じやすくなります。
日本人の“白米を中心にした食文化”の影響
日本人は白いご飯を主食に、さまざまなおかずと組み合わせる食習慣があります。
ご飯を減らすと「おかずだけでは食事が成立しない」「ご飯が少ないとおかずが食べづらい」と感じやすく、量を減らすハードルが高くなります。
ご飯の“かさ増し”で自然に量を減らす―やせたい人の味方になる主食の工夫
「ご飯は減らしたくないけど、ご飯によるカロリーを少なくしたい。満足感も残したい」
そんな方には、かさ増しで工夫をすることがおすすめです。
実質のお米の量をおさえながら、満足感をコントロールできます。
しらたきご飯
しらたきは100gあたりのカロリーが白米の約1/28。細かく刻んで米と一緒に炊くだけで、ご飯の見た目をほとんど変えずにお米の量を減らせます。
味も白米に劣らずおいしく食べられますが、ご飯の味わいを残したい方はしらたきの割合を減らすと良いでしょう。
また、しらたきは糖質が少なく、食物繊維を多く含んでいるので、糖質カットをされたい方や便秘気味の方にもおすすめです。
<作り方>
しらたきを下茹でしてアクを抜き、ごはん粒大に刻む。
しらたき1袋(約200g)に対して米2合と水360mlを炊飯器に入れて炊く。
カリフラワーライス
カリフラワー100gあたりのカロリーは白米の約1/6と低カロリーでありながら、糖質量が少なく、カリウムやビタミンC、食物繊維などの栄養素を摂ることができるダイエット向きの食材です。
温かいご飯と混ぜるだけで簡単に作ることができ、くせのない味とコリっとした食感で満足感が得られやすいです。
<作り方>
温めた冷凍カリフワラーライス(もしくはみじん切りにして電子レンジで約2分加熱したカロフラワー)と温かいご飯を混ぜ合わせる。
ごはんとカリフラワーは1:1量が食べやすい。
えのきご飯
えのき100gあたりのカロリーは白米の約1/11で、糖質量も少ないです。
味は薄味の炊き込みご飯のようで、えのきの独特の香りが苦手ではない方におすすめです。
<作り方>
5mm幅に切ったえのきたけ1袋(約100g)に対して米2合と水360mlを炊飯器に入れて炊く。
お粥
ご飯と比べて水分量が多いので、かさを増やしながらカロリーを抑えることができます。
消化にも良く、食べ過ぎた翌日に胃腸を休ませたい時に、特におすすめです。
ご飯の量を無理なく減らす“行動のコツ”―食習慣から変えると成功率が上がる
ご飯量のコントロールは、食材の工夫だけではなく行動習慣とセットで行うとより効果が高まります。
最初に汁物を飲む
温かい汁物は胃を落ち着かせ、水分が胃を満たすため満腹感を得られやすくなります。
味噌汁・スープは、特に冬場の冷え対策にもぴったりです。
丼ものは“七分盛り”から
ご飯をかさ増ししてもたくさん食べていては、体重は減りにくいです。
大盛りご飯の習慣がある方は、いきなり半分など大幅に減らすと満足感は得られにくいです。
まずは“いつもの7割”を目安にし、少しだけ減らすことに慣れるようにしましょう。
茶碗をワンサイズ小さくする
人は器の大きさに無意識に合わせて量を決めやすいです。
茶碗が大きい場合、一回り小さいサイズの器を準備するのも効果的です。
“後のせごはん”で調整する
最初から全部盛るのではなく少なめにして、どうしても足りなければ少量おかわりをして結果的な全体量を減らす。
おかわりをするという行為が満足感につながり、結果的に自然と摂取量が減りやすくなります。
ここまで「ご飯の量を上手にコントロールする方法」をお伝えしてきましたが、誤解していただきたくないのは、ご飯は決して悪者ではないということです。
炭水化物であるご飯は、からだの中でいうと“燃料”の役割をしています。
ガソリンがないと車が動かないのと同じで、炭水化物が不足すると脂肪は燃えません。
極端に炭水化物を減らしすぎると、以下のような不調を引き起こすこともあります。
・ 疲れやすい
・ 集中力低下
・ めまい
・ 便秘
さらに、炭水化物を制限しすぎると必要なエネルギーをおかずで補おうとして、脂質の摂取量が増え、肥満や生活習慣病のリスクが上がるケースも少なくありません。
大切なのは「ご飯を極端に減らす」ではなく、「ちょうどよい量に整える」こと。
ご飯をゼロにする必要はありません。
きちんと食べながら、量を調整していく方が体重管理は長続きします。
ご飯を我慢せずに上手に量を調整し、無理なく体重を整えていきたい方は、ぜひ今回の工夫の中から気になるものをひとつでも取り入れてみてください。
日々の減量を意識した食生活を続けるための一助になれば嬉しく思います。
<参考>
・ 文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」





















