2022年7月29日、内閣府は「満足度・生活の質に関する調査報告書2022」を公開しました。
本調査は2019年から毎年実施されており、2022年で4回目となりました。
主観的なウェルビーイング(身体的、精神的、社会的にすべて満たされた状態)に関する代表的指標である「生活満足度」とともに、資産や社会とのつながり、健康状態など13分野の満足度を調査し、満足度と生活の質の変化について多角的・体系的にとらえているのが特徴です。
なお、各満足度は、現在の生活にどの程度満足しているかを 0~10 点で自己評価した数値で表しています。
前回、2021年の調査ではコロナ禍で、満足度が低下することや働き方などの工夫を行うことで、一定の満足度の向上が見られることもわかってきていました。
2022年の調査では、これらの持続可能性についても部分的に注目しています。
また、今回は約10,000人へのインターネット調査であり、そのうち約3,300人は前回調査からの継続サンプルで実施されています。
そのため、同一回答者の変化を分析できています。
満足度・生活の質に関する調査の全体傾向
生活満足度の分布形状では、前回調査(2021年)の分布とくらべて大きく変わりませんでした。
13の分野について満足度を尋ねている分野別満足度も、前回調査(2021年)とくらべて多くの指標であまり大きな変化が見られませんでした。
分野別満足度と生活の満足度の関係をみると、「生活の楽しさ・面白さ」「家計と資産」「仕事と生活」満足度の順で生活満足度への影響が大きいという結果でした。
「仕事時間」と「仕事と生活の満足度」の変化
分野別満足度の項目の中で生活満足度への影響の大きかった「仕事と生活(以下WLB)」に着目し、コロナ禍の働き方の変化がWLB満足度へどのように影響したかを、これより見ていきます。
まず、コロナ禍の働き方の変化として仕事時間において、コロナ禍前と比較して、仕事時間が「減少した人の割合(55.4%)」が「増加した人の割合(17.9%)」を上回りました。(図4)
また、通勤時間においては、「増加した人の割合(29.7%)」のほうが「減少した人の割合(26.4%)」よりも少し多い結果となりました。
ただし、東京圏では減少した人の割合が 34.2% となり、増加した人の割合よりも多く、これはコロナ禍前より東京圏は他地域と比較して通勤時間が長かったことや、コロナ禍でテレワーク実施率が高まった地域であることが背景として考えられます。
仕事の時間の変化と満足度(生活満足度、WLB満足度、健康状態の満足度)においては、男女ともに仕事時間が減少した人は「WLB満足度」をはじめ、「生活満足度」が上昇しました。
また男性では、「健康状態の満足度」も上昇しています。
また、「WLB満足度」に影響する項目をみたところ、男女いずれにおいても、「自由に使える時間」の割合が一番大きいという結果でした。
日本の働き方改革が進んでいることに加え、新型コロナウイルス感染症拡大をきっかけに普及しているテレワークや在宅勤務により、徐々に長時間労働が是正されています。
そのことにより、プライベートの時間を確保できるようになり、コロナ禍前よりも、仕事と生活の時間、両方が充実してバランスのとれた生活をおくれていると感じている人が増加したことが背景にあるのではないかと考えます。
また、プライベートの時間が増えることで、そのうちの一部を趣味にあてる方もいるのではないでしょうか。
本調査で、趣味や生きがいがある人では精神的なストレスを受けない割合が高く、ストレスを受けていない人は、生活満足度が高い傾向にあったと報告しています。
趣味を持つと楽しいことに取り組める時間が増えるため、幸せを実感しやすくなり、ストレスの解消につながっている可能性があるかもしれません。
また、趣味は情熱をもって打ち込むことによって自信が生まれたり、趣味を通じて人間関係が広がったり、気分のリフレッシュになり、精神面や身体面でさまざまなメリットが期待できます。
※1: K6とは、うつ病・不安障害などの精神疾患をスクリーニングすることを目的として開発された心の健康状態を測る指標のひとつです。
設問に対する回答の合計点数が高いほど精神的健康状態が悪い可能性があるとされ、合計点数が9点以上の場合、心の健康が崩れている可能性が高いとされます。
仕事と生活の満足度を上げるために、社員の働く時間の見直しを
1日の労働時間(休憩時間を除く)の上限は8時間、1週間で40時間と労働基準法で定められています。
長時間労働は、労働の負荷を大きくするだけでなく、睡眠や休養の時間、家庭生活、余暇時間などの不足を引き起こして、疲労の蓄積をもたらせます。社員一人ひとりが元気で健康的に、仕事と生活の両方を充実させて満足した生活が送れるよう、企業側は長時間労働を是正し、社員がプライベートの時間も十分に確保できるような体制作りが重要となってきます。
残業削減のために会社と社員ができる改善策として大きく3つ、「① 残業の実態を把握し、適切に管理すること」「② 残業削減へ真剣に取り組む意識を持つこと」「③ 仕事の現状を把握して内容や進める方法を改善すること」があります。
長時間労働が発生する原因や理由はさまざまですが、残業が多いという課題を抱えていらっしゃる企業の方は、まずは改善策にひとつずつ取り組んでみてはいかがでしょうか。
<参考>
内閣府「満足度・生活の質に関する調査報告書2022」