過重労働を防ぐために、今企業がすべきこと

先日、新国立競技場の建設工事に従事していた建設会社の男性社員が、違法な長時間労働が原因で自殺を図ったというニュースが報道されました。
この男性社員の働いていた建設会社の36協定では、毎月の残業時間の上限を80時間と定めていたにもかかわらず、担当弁護士がセキュリティ記録やパソコンの記録、通勤の記録などから調べた結果、失踪前の1か月間では211時間56分の時間外労働が発生していたとのことでした。
このような痛ましい事件を起こさないために、企業がどのような対策や対応を取るべきなのでしょうか。

時間外・休日労働時間の削減

まず、36協定が労働基準法で定められている限度基準に適合したものとなっているかを確認しましょう。36協定で定める延長時間については、1か月で45時間、1年で360時間など、一定期間ごとに限度時間が定められています。
また、場合によってはこの限度時間を超える一定の時間まで労働時間を延長することが可能ですが、その「特別な事情」は、「臨時的なものに限る」とされています。
ただし、 限度時間を超えて時間外労働を行わせることが可能な場合であっても、健康障害防止の観点から、実際の時間外労働は月45時間以下とするよう努めることや、休日労働を削減することが求められています。

一般社団法人日本経済団体連合会が発表している「2016ワーク・ライフ・バランスへの取組み状況(事例集・アンケート調査結果)」では、長時間労働削減のため企業側の取り組み内容が紹介されています。
ランキング5位までは以下の通りとなっています。

1位:「ノー残業デーの徹底」67.8%
2位:「時間外労働の事前申告制」67.0%
3位:「働き方・休み方改革に向けた業務の効率化」55.2%
4位:「年次取得率・取得日数向上目標の設定」53.0%
5位:「長時間労働抑制に関する数値目標の設定」が51.9%

健康管理体制の整備・健康診断の実施

常時50名以上の従業員を雇用する事業場においては産業医や衛生管理者を選任し、健康管理に関する職務を適切に実施させ、健康管理体制の整備を行いましょう。
その一環として衛生委員会を設置し、「長時間労働による労働者の健康障害の防止を図るための対策」等をはじめ、労働者の健康管理状況等をきちんと把握しておくために必要な事項に関して適切に調査審議を行うことが重要です。
また、事業者は常時雇用する労働者に対し、1年に1回、定期的に健康診断を実施しなければなりません(深夜業を含む業務に常時従事する労働者に対しては、6か月に1回、特定業務従事者健康診断を実施しなければなりません)。
実施後は、その結果に基づき適切な事後措置を実施しましょう。具体的には、異常の所見があった者について、健康保持のために必要な措置についての医師の意見を聴取し、受診の勧奨や保健指導の実施など、必要な事後措置を講じることなどが必要です。

長時間労働者に対する面接指導の実施

時間外・休日労働時間が1か月当たり100時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる労働者から面接指導の申出が発生した際は、医師による面接指導を実施をすることが求められています。
また、事業者は医師の意見を勘案し、必要な場合は適切な措置(配置換えや休職措置など)を実施しなければなりません。

過重労働による健康障害を防ぐために

労働者が生き生きと働くためには、事業者の管理体制が大きく関わってきます。
また、その労働者の健康こそが、企業の発展に不可欠な要素でもあるのです。きちんとした健康管理体制を構築し、働きやすい職場環境を実現しましょう。

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倉科彩香株式会社ドクタートラスト 健康経営エキスパートアドバイザー

投稿者プロフィール

大学の獣医学部で動物看護師の資格を取得。その後新卒で入社した動物病院を取引先に持つ会社ではやりがいはあったもののその分残業も多く、自身のこれから先の働き方、ライフワークバランスに対して考えるきっかけとなる。その中でドクタートラストを知り、産業保健について興味を持ち、転職。
法令順守のみならず、その先の健康経営の体制作りのサポートができるよう、日々勉強しております。
【保有資格】健康経営エキスパートアドバイザー
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼などはこちらからお願いします】

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