仕事の生産性には人間関係が大きく影響する

みなさんにとって、働く上で大切なことは何でしょうか。
労働時間、給与、仕事内容、やりがい、職場環境……いろいろあるかと思います。

産業革命以降、労働については全世界で様々な理論が確立し、進化してきました。
今日はそれらの歴史を少しご紹介したいと思います。

1900年代前半アメリカでホーソン実験という著名な実験が実施されました。
どういう実験なのかご説明する前に、時代背景に触れてみましょう。

ホーソン実験という歴史的実験

当時は科学的管理法という工場管理方式が浸透していました。
科学的管理法とは、アメリカのフレデリック・テイラーが提唱した工場管理の方式をいいます。
テイラー・システムとも呼ばれています。
労働者の作業を分析(動作研究)することにより、その標準時間と1日になすべき仕事量(ノルマ)を決め、また成果によって賃金に差をつけるなどし、作業条件の変化で作業を高能率化しようとする方法です。
非効率な業務遂行や怠業といった問題が蔓延していた時代においては、テイラー・システムは作業を経営者側が管理することを可能にし、生産性の向上に寄与しました。
そんな考えが一般的だった時代に、ホーソン実験は実施されました。
当時ハーバード大学教授だった、ジョージ・エルトン・メイヨーらが1927~32年にウエスタン・エレクトリック社のホーソン工場で行なった一連の研究をいいます。

舞台となったホーソン工場を持つエレクトロニック社は当時の業界の中では待遇の良い、いわゆるホワイトな企業でした。
エレクトリック社も例にもれずテイラー・システムを導入していましたが、好待遇にもかかわらず、低い生産性と高い離職率が改善されない状況にありました。
一体どうしてなのか、ホーソン実験の中でその謎は解明されることとなります。

作業条件が悪くなっても、高い生産性が維持される?

ホーソン実験の中でも代表的な実験にリレー組立室での実験があります。
約40個からなるリレーと呼ばれる縦電器を組み立てる工程を、6名の女性作業員を選んで実施し、作業条件を変えながら作業量の推移を測定しました。
変更する条件は①賃金、②休憩時間、③軽食サービス、④部屋の温度・湿度、の4つです。
作業条件が改善されると生産性も向上することが確認されました。
これは前述した、テイラー・システムに沿った変化です。
しかし、これらの条件を下げる、つまり改悪を行った場合にも生産性は維持されるという結果が出ました。ここでテイラー・システムとの矛盾が生まれました。

なぜ条件が悪くなったにもかかわらず、生産性は維持されたのでしょうか。
メイヨーはその理由として以下の点を挙げています。

①選ばれた6名は、100名単位の人員から推薦されたため、選ばれたことに誇りとその実験に対する責任感を持っていた。
②6名の女性作業員は友人同士であり、連帯感や仲間意識があった。
③事前に条件の変更について説明があった
④この実験に関しては、きちんと事後評価があった。

これらのことから、メイヨーは、仕事に対する誇りや責任感、仲間に対する友好的な連帯感、事前の情報提供や事後評価から非常に良い人間関係が構築され、維持されたことにより、生産性の維持にもつながったと述べています。

まとめ

生産性には待遇以上に労働環境の人間関係(職場の雰囲気やモラル)が大きく関わっていると証明された実験結果となりました。

現代の日本社会でも、メンタルヘルス不調や離職には人間関係が原因となっているケースが多いという研究データも出ています。
つまり社会心理学的条件が悪い職場が多いということです。
ホーソン実験については、今後も引き続き他の実験例もご紹介をしたいと思います。

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冨田さゆり株式会社ドクタートラスト 産業カウンセラー

投稿者プロフィール

ドクタートラストに入社して6年目、多くの民間企業・官公庁の健康管理に関わってきました。産業カウンセラーの資格を取得し、専門知識を深める日々です。対企業、対従業員、健康に働くためのアプローチは多種多様。各々の特性に合わせたアドバイスを心掛けています!
【保有資格】産業カウンセラー
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼などはこちらからお願いします】

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