ツアーバス事故を二度と起こさないために・・・企業が守るべき交通労働災害ガイドライン
- 2016/2/13
- 労働環境
交通労働災害は、労働者死亡災害の約2割
2007年2月に大阪府吹田市で、運転手の居眠り運転によってスキーツアーバスがモノレールの橋脚に衝突して27名が死傷。
2012年4月に群馬県藤岡市の関越自動車道で、高速ツアーバスが壁に衝突して45名が死傷。
今年1月に41名もの人が死傷した長野県軽井沢町のスキーバス転落事故では、事故を起こしたバス運行会社が、運転手に健康診断を受けさせていなかったなどとして、国土交通省関東運輸局から、事故の2日前に道路運送法に基づく行政処分を受けていたということが報告されました。
いずれの事故も、何の落ち度もない大勢の人々が命を落とした大惨事であったというだけでなく、運転手も死傷してしまったという意味で、深刻な交通労働災害であったということができます。
交通労働災害は、労働者による死亡災害の約2割を占めているといわれています。
バス会社や運送会社だけではなく、車移動がメインの営業職など、長時間車を運転する労働者のいる企業も多いでしょう。
交通労働災害は、様々な業種に携わる労働者に起きており、ひとたび被災すると重大な災害につながるおそれがあります。
会社は、社員の安全意識を高めているか?
厚生労働省から出ている交通労働災害防止のためのガイドラインでは、大きく分けて7つのポイントが挙げられています。
1.交通労働災害防止のための管理体制等
2.適正な労働時間等の管理、走行管理
3.教育の実施
4.交通労働災害防止に対する意識の高揚
5.荷主・元請事業者による配慮
6.健康管理
7.その他(異常気象などの対応・自動車の点検)
事業者側は、「適正な走行計画の作成」や「心身両面にわたる健康管理」などの対応が重要です。
交通事故による死亡災害は、早朝の時間帯に多発しているデータがあります。走行計画を作成する際に、早朝の時間帯の運転を可能な限り避けること、もしその時間帯に走行する業務が必要な場合は、「十分な休憩・仮眠の時間を確保する」などの対応が求められます。
そうした対応ひとつで居眠り運転を防ぐことができ、それに伴う事故を防ぐことに繋がります。
また、「雇入れ時の教育」や、現場で実際に車を運転する「従業員同士の情報共有」、「安全への意識向上」も労働災害を防ぐためには必要です。
車の運転業務に従事する人のほとんどは、チームで仕事をするような職種とは違って、一人あるいは二人といった単位で仕事を行っています。
チームで取り組む仕事であれば自然に共有できるような情報や感覚も、単独の仕事では共有できません。従業員同士で良かったこと、悪かったこと(ヒヤッとした出来事)をきちんと情報共有したり、安全意識を高めるためのコミュニケーションを行うといった取り組みによって会社全体の連帯感が強くなり、労働災害を未然に防ぐこともできるようになっていくのではないでしょうか。
交通労働災害を減らすためには、車やオートバイなどの運転業務のあるすべての企業が、従業員の健康管理や安全確保に今以上に積極的に取り組んでいく必要があるでしょう。