たばこメーカー元社員が解説|喫煙率15.7%時代の職場環境づくりと受動喫煙対策のポイント

「産業保健新聞」読者の皆さん、こんにちは。
筆者は、前職たばこメーカーで働いていました。
こうした経緯もあり、今回はた現在の日本における喫煙環境について考えてみます。
本題に入る前に、なぜ今回喫煙環境のテーマを選択したのかと言いますと、前職のたばこメーカーで15年間たばこという商材に携わり、ビジネスとしての視点と受動喫煙対する考え方や影響を経験してきましたので、ぜひ共有したいと思ったのです。
そもそも「たばこ」と聞いて、皆さんはどんなイメージがありますか?
「百害あって一利なし」「悪影響しかない」おそらく非喫煙者をはじめ、ネガティブイメージが強いと思います。
逆に別視点でも見てみましょう。

・ たばこの歴史は古く、世界では15世紀頃、日本では江戸時代頃といわれています
・ たばこは文化としても、浮世絵や歌舞伎、落語などでも欠かせない関わりになっています
・ たばこの税収は安定していることで、医療福祉や地方自治体のサービス・運営等にも使われている(喫煙者が減少する中でも、値上げを含め一定の収入があるため)

ここまででも、たばこの歴史や文化、財源の活用など別視点での理解もできたのではないでしょうか。
これらは非喫煙者である私が、ビジネスとして興味を持ち、たばこメーカーで働きたいと思ったきっかけになります。
商材柄、法律やルール、規制やコンプライアンスが厳しい業界ですが、ビジネスとしてのおもしろさも同時に感じました。
そして、この15年の間にも喫煙環境が大きく変化し、喫煙者には「加熱式たばこ」という、火を使わない、煙が出ないなどの代替品が確立し、路上喫煙禁止や改正健康増進法により、非喫煙者への配慮、受動喫煙対策に至っています。

それでは、本題に入ります。

現在の喫煙環境

現在のたばこ業界は、成人喫煙者の嗜好変化と喫煙に対する規制強化という特に2つの大きな課題に直面しています。
特に日本では、健康志向や環境への配慮の高まりから、従来の紙巻きたばこから、加熱式たばこやオーラルたばこに人気が集まり、割合に関しては今や紙巻たばこを上回る勢いになっています。
ちなみに、前職で扱っていた加熱式たばこに関しては、世界のユーザー数3,220万人に対して日本のユーザー数は950万人と、比較しても日本人の健康志向が表れているといえます。
また、規制という面では、改正健康増進法の施行や自治体、企業の禁煙推進の取り組みや影響によって、成人喫煙者の行動やニーズも多様化になっています。
皆さんに現状を理解していただくため、最新の公的データをもとに、わかりやすく整理してみます。

2025年の日本の喫煙環境

法規制の強化(2025年に大きく変化):改正健康増進法の完全施行(2025年4月)
・ 2名以上が利用するすべての施設で原則屋内禁煙
・ パチンコ店、キャバクラ、バーなども含めて屋内喫煙不可
・ 喫煙には専用喫煙室が必須
・ 20歳未満は喫煙エリアへの立ち入り禁止
路上喫煙規制の拡大:大阪市:市内全域で路上喫煙禁止(2025年1月)
・ 大阪・関西万博に向けて全面禁止
・ 喫煙所は整備中だが「数が足りない」との声もあり、臨時で喫煙所を設営し対応
喫煙率の状況(2023〜2025年)
・ 成人喫煙率:15.7%(男性25.6%、女性6.9%)
・ 長期的に減少傾向が続く(特に男性の減少幅が大きく、女性は微減)

さらに2025年の研究では、若い世代ほど喫煙量が少なく、禁煙に踏み切る年齢も早いという傾向が報告されています

喫煙環境に関する実態調査結果

2025年12月に厚生労働省が「令和6年度『喫煙環境に関する実態調査』の調査結果(概要)」を公表しました。
改めて現状の進捗を踏まえた実態をご確認ください。

調査の目的

受動喫煙が健康に及ぼす影響を踏まえると、がん、循環器疾患等を予防する上で、受動喫煙対策を進めることは重要な課題になっています。
受動喫煙対策については、健康増進法に基づき、多数の者が利用する施設の管理者に対し、受動喫煙を防止するための措置を講ずる努力義務を課すなどの対策を進めてきたところですが、国民の健康増進を一層図るため、2018年7月に健康増進法の一部を改正する法律が成立し、2019年7月の一部施行により、学校や病院などの子どもや患者が主たる利用者となる施設(第一種施設)については敷地内禁煙、2020年4月の全面施行により、第一種施設および喫煙目的施設以外の多数の者が利用する施設(第二種施設)等については原則屋内禁煙となっています。
本調査は、2024年12月末時点の喫煙環境の実態を調査することを目的とした結果になります。

調査結果

(1)学校、医療施設、児童福祉施設、行政機関等(第一種施設)における喫煙環境

・ 敷地内全面禁煙:86.8%
・ 敷地内全面禁煙にしていない施設のうち、特定屋外喫煙場所設置:84.8%

第一種施設全体の 86.8% が、紙巻たばこ及び加熱式たばこを敷地内全面禁煙にしています。

施設区分敷地内全面禁煙の割合
幼稚園、認定こども園、小中学校、高校、中等教育学校、特別支援学校97.1%
児童福祉施設(保育所等)93.7%
一般診療所・歯科診療所93.0%

また、敷地内全面禁煙ではない第一種施設のうち、84.8%が「特定屋外喫煙場所」を設置しています。

施設区分敷地内全面禁煙または特定屋外喫煙場所設置の割合
病院100.0%
病院・診療所以外の医療提供施設(老健、介護医療院、助産所、療術施設など)100.0%
行政機関98.4%
大学・短大(大学院を除く)91.7%
専修学校・各種学校・職業・教育支援施設89.5%

(2)一般施設・事業所、飲食店(第二種施設)における屋内の喫煙環境

・ 屋内全面禁煙:74.6%
・ 喫煙専用室設置:10.9%

紙巻たばこ(火をつけて喫煙するたばこ)の屋内喫煙環境

・ 屋内全面禁煙:74.6%
・ 喫煙専用室あり:10.9%

加熱式たばこの屋内喫煙環境

・ 屋内全面禁煙:73.6%
・ 喫煙専用室で喫煙可(飲食不可):9.1%
・ 加熱式たばこ専用の喫煙室(喫煙のみ):1.0%
・ 加熱式たばこ専用喫煙室(喫煙+飲食可):1.6%

上記実態からは、以下のような傾向がわかります。

・ 紙巻たばこ・加熱式たばこともに7割以上が屋内全面禁煙
・ 加熱式たばこは紙巻たばこより規制がやや緩い施設もあるが、専用室を設けている割合は低い

喫煙に関して考えたいこと

最後に、「現在の喫煙環境」「喫煙環境に関する実態調査結果」を通して、喫煙自体が健康に及ぼす影響を考えてみます。

受動喫煙が健康に及ぼす主な影響

受動喫煙は、本人が喫煙していなくても以下のような疾患リスクを確実に高めることがわかっています。

・ がん:特に肺がんのリスク上昇が明確で、国際機関でも因果関係が確立されています
・ 循環器疾患:心筋梗塞や脳卒中の発症リスクが高まることが多くの研究で示されています
・ 呼吸器疾患:喘息の悪化、慢性閉塞性肺疾患(COPD)のリスク増加も考えられます
・ 子どもへの影響:乳幼児突然死症候群(SIDS)、中耳炎、気管支炎などの発症リスクが上昇します

なぜ受動喫煙対策が「重要な課題」なのか

受動喫煙対策は単なるマナーの問題ではなく、公衆衛生の観点から極めて重要な課題になっています。

・ 非喫煙者が避けられないリスクにさらされます。特に家庭、飲食店、職場などで本人の意思では防ぎにくいものです
・ 低濃度でも健康被害が生じる:「少しなら大丈夫」という考えは誤りで、短時間でも血管機能に悪影響が出ることがわかっています
・ 社会全体の医療費増加につながる:循環器疾患やがんの増加は医療費負担を押し上げる要因になります


本日のテーマを通して、日本の喫煙環境や成人喫煙者の嗜好の変化、自治体や企業が受動喫煙に対してどのように取り組んでいるのか、非喫煙者の方にも伝われば共存していくことも可能になるのではないでしょうか。
また機会がありましたら、喫煙環境のアップデートを共有します。

<参照>
・ フィリップ・モリス・インターナショナル「2024年第4四半期および通期決算資料」
・ 厚生労働省「令和6年度喫煙環境に関する実態調査の概況」

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横山 義隆株式会社ドクタートラスト

投稿者プロフィール

前職は、たばこメーカーに勤めていました。喫煙環境は大きく変化する中で、紙巻たばこから加熱式たばこへの切り替え業務(営業)を中心に喫煙者への発信、企業や行政・自治体へ職場の喫煙対策改善に取り組んできました。
喫煙環境の視点から皆さんがより健康で元気な毎日を過ごせるよう、情報発信していきます。

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