「産業保健新聞」運営元、ドクタートラストの櫻井です。
産業医紹介会社の営業担当として、普段は従業員が50名を超え産業医選任義務のある企業さまへ産業医をご紹介しています。
最近では、従業員50名未満で産業医の選任義務がない企業さまからも「メンタル不調者がいるが、まず何を導入したらいいのかわからない」「産業医を急いで選任したほうがいい？ でも毎月来てもらってもやることはあるのだろうか……」といったご相談が増えてきました。

産業医の選任義務がなくても、会社として従業員を大切に守りたい気持ちは同じ

法令上、従業員50名未満の事業場には産業医の選任義務がありませんが、従業員が50名未満でもメンタルヘルス不調者は発生しますし、会社として従業員を大切に守りたい気持ちは同じだと思います。
そこで今回は、産業医の選任義務がない企業さまでも導入しやすいサービスを、お悩み別にご紹介いたします。

お悩み別｜おすすめサービス

ケース1：休職者・復職希望者への対応が必要～今すぐ産業医面談が必要な場合は「顧問医サービス」～

急ぎケアが必要な従業員の方がいらっしゃる場合には、必要な月だけ産業医に訪問してもらえる「顧問医サービス」がおすすめです。
労働安全衛生法で選任義務のある事業場では毎月の訪問が必要ですが、顧問医サービスは必要なときだけ産業医が訪問する仕組みです。

顧問医サービス以外の選択肢として、スポット面談を都度利用する方法もあるものの、以下の懸念点があります。

・　毎回異なる産業医に状況を一から説明する必要が生じる
・　継続的な経過観察が難しく支援の一貫性が保ちにくい

メンタルヘルス不調を抱える方にとって、面談の継続性は重要な要素とされており、担当する産業医が面談のたびに変わることで、心理的負担が増す可能性があると考えられています。
顧問医サービスは、企業の業務内容や方針を理解した一人の産業医が伴走してくれるため、「毎月の訪問は不要だけど、いざというときに医学的知見を持って助言をしてくれる存在を確保しておきたい」というニーズを満たす、とても有用なサービスです。
たとえば、「休職者が出た月だけ来てもらう」「復職面談が必要な月だけ訪問してもらう」といった柔軟な使い方が可能です。
年に3～4回程度の訪問でも、同じ産業医が継続的に対応することで、企業の状況や従業員の経過を把握した上での的確なアドバイスが受けられます。

ケース2：離職率が高い・潜在的な不調者がいる～ストレスチェックと外部相談窓口の導入がおすすめ～

離職率が高い・不調者が潜在的にいると感じる場合には、ストレスチェックと外部相談窓口の導入をおすすめします。

不調を訴えてくれる従業員には産業医面談が可能ですが、実際には「会社に名乗り出ること自体、ハードルが高い」という理由でケアが行き届かないケースもあります。
また、自分自身の不調は自覚しにくく、気づいたときには悪化していることも少なくありません。
これらを防ぐために有効なのがストレスチェックと外部相談窓口です。

ストレスチェックのメリット

従業員にとって：
✓ 自分のストレス状態に気づくきっかけになる
✓ セルフケアの意識が高まる

企業にとって：
✓ 部署別・年代別のストレス傾向を把握できる
✓ 必要な施策が明確になる
✓ 職場環境改善のデータとして活用できる

「職場改善をしたいが、何から始めるべきかわからない」という企業さまにとって、ストレスチェックのデータは情報の宝庫です。

外部相談窓口のメリット

さらに、外部相談窓口を併用すると、会社に名乗り出なくても匿名でカウンセラーへ相談できるため「誰にも言えなかった悩みを、安心して話せる場所」が生まれます。

✓ 匿名でカウンセラーに相談できる
✓ 会社に名乗り出る心理的ハードルがない
✓ 「誰にも言えなかった悩み」を安心して話せる

「誰かに話したい。でも話せない……」

そんな気持ちを受け止めてくれる場所があることは、従業員にとって非常に大きな支えになります。
ストレスチェックと外部相談窓口を併用することで、潜在的な不調に気づき、早期のケアにつなげることができます。
実際、ストレスチェックを導入した企業からは「自分では気づかなかった高ストレス状態に気づけた」「部署ごとのストレス傾向が可視化され、具体的な改善策を立てられた」という声が寄せられています。
また、外部相談窓口を設置した企業では「離職を考えていたが、相談して気持ちが整理できた」「誰にも言えなかった悩みを聞いてもらえて救われた」といった声があり、早期離職の防止にもつながっています。

おわりに

わたしが産業保健の業界に飛び込んだのは、「一日の多くを過ごす職場が、安心できて元気にいきいきと過ごせる場所であったらどれほど幸せだろう」という思いからでした。
「労働安全衛生法で定められているからやる」のではなく、「同じ会社で働く仲間が健康で笑顔であってほしい」という想いに共感し、健康経営にご尽力いただける方が増えることを心から願っています。