【厚労省調査】就業形態の多様化が進む|非正規雇用・テレワーク・副業の実態と企業の対応

2025年9月26日、厚生労働省が「令和6年就業形態の多様化に関する総合実態調査」の結果を公表しました。
本調査は、正社員・非正規社員それぞれの就業形態について事業所・労働者双方の実態や意識を明らかにし、多様化する働き方に対応した雇用政策の推進に資することを目的に、5人以上の常用労働者を雇用する事業所約17,435か所(うち有効回答8,820事業場)とその従業員約23,060人(うち有効回答14,076人)を対象に、2024年10月1日現在の状況を把握するために実施されました。

就業形態の多様化の現状

調査では、事業所の9割以上(94.4%)に正社員が在籍し、約8割(82.3%)に何らかの非正規労働者が在籍していることが明らかになりました。
正社員のみの事業所は17.7%にとどまり、パートタイム労働者は全体の65.9%の事業所に在籍して最も多い就業形態でした。
業種別では、宿泊・飲食サービス業ではパートタイム労働者が88.0%の事業所に在籍するなど、産業によって偏りが見られます。
近年の傾向としては、2019年調査と比べて正社員以外の労働者比率が上昇した事業所は15.7%に達し、逆に低下した事業所は16.7%でした。
比率上昇の要因を見ると、66.2%がパートタイム労働者の増加によるもので、嘱託社員(再雇用者)の増加(22.4%)も目立ちます。
こうした結果から、全体的に非正規雇用の比率は微増または横ばいの企業が多いものの、事業所ごとに多様な変化が起きていることがうかがえます。

非正規雇用の実態と課題

企業側では「正社員を確保できないため」に非正規労働者を活用する割合が41.0%と最も高く、次いで「即戦力・能力のある人材確保」(31.6%)、「業務の繁閑対応」(29.1%)、「高年齢者の再雇用対策」(28.9%)と続いています。
背景には少子高齢化による労働力不足や、業務量の増減に柔軟に対応したい企業側の事情が浮かびます。
一方で、非正規労働者を活用する上での課題としては、「良質な人材の確保」(53.6%)と「定着性」(51.5%)が上位に挙げられています。
企業は優秀な人材を確保するために非正規を活用しますが、人材の定着やモチベーション維持に悩んでいる実態があります。

労働者側の意識では、非正規労働者(出向社員を除く)が現在の就業形態を選んだ理由では「自分の都合の良い時間に働けるから」(40.1%)が最も高く、次いで「家庭の事情と両立しやすいから」(26.4%)、「家計の補助、学費等を得たいから」(24.9%)などが挙がっています。
男女別にみると、男性では「専門的資格・技能を活かせるから」「自由に使えるお金を得たいから」が高く、女性では「家庭事情との両立」「家計補助」が高率でした。
また、就業形態別では契約社員や嘱託社員で資格活用を理由に選ぶ割合が高く、パートタイムや臨時労働者では柔軟な勤務時間を理由とする傾向が顕著でした。
これらの結果は、非正規雇用に従事する個人がライフスタイルや家庭状況に合わせて就業形態を選んでいる実態を示しています。

賃金面でも両者の違いが顕著で、正社員の給与はおおむね20~40万円未満の層が多いのに対し、非正規労働者では10~20万円未満が42.8%を占めるなど低めにとどまる傾向があります。
こうした点を踏まえ、企業は給与水準や処遇の見直しによる人材確保・定着策、労働者は自らのキャリア形成や待遇面での課題認識が重要です。

テレワーク・副業兼業の状況と企業の対応

近年、テレワーク導入が進む中、厚生労働省もガイドラインなどでテレワークの適切運用を促進しています。
たとえば、雇用形態を理由にテレワークの対象から労働者を一律に除外しないよう注意喚起されています。
制度面では、労使協議に基づいて就業規則にテレワーク規程を定めることが望ましいとされています。
企業は柔軟な勤務環境整備(在宅勤務やフレックスタイム制の導入)を進める一方、通信環境・セキュリティ対策や労務管理の仕組み作りが課題となっています。

副業・兼業については、2024年9月時点で調査会社に勤める正社員の7.6%、非正規労働者の14.6%が兼業を行っており、非正規ではおよそ2人に1人が兼業経験者です。
特に臨時労働者では34.6%と非常に高く、パートタイムや契約社員(専門職)でも兼業割合が高いのが特徴です。
兼業増加の背景には、収入補填やキャリア形成のニーズがあり、企業は就業規則で兼業を許容するか制限するかを検討しています。
厚生労働省は2018年以降、副業解禁の動きを後押ししており、企業は就業規則を見直し、労働時間管理や健康確保に留意しつつ多様な働き方を認める対応が求められます。


本調査からは、正社員と非正規との二元構造が依然として大きく、一方で働き手側の価値観や企業側のニーズが多様化していることが改めて示されました。
一般社員・人事労務担当者ともに、法令順守の下で非正規社員の活用メリット・デメリットや新たな働き方への対応策を整理し、働き手にとって魅力ある職場環境づくりに努めることが重要です。

<参考資料>
・厚生労働省「令和6年就業形態の多様化に関する総合実態調査の概況」
・厚生労働省「テレワーク総合ポータルサイト」

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戸澤和也株式会社ドクタートラスト

投稿者プロフィール

前職では、飲食業界で勤務しておりました。日々のハードワークを通じ、健康について考えるようになり、ご縁があってドクタートラストに入社いたしました。
自分自身の経験を活かしつつ、皆様の役に立つ情報を発信していきたいと思います。
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼、リリース送付などはこちらからお願いします】

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