選任義務がなければ産業医はいらない?産業医が必要なわけ
- 2024/7/31
- 産業医
皆さまは産業医が必要だとされている理由を理解していますか?
「労働基準監督署から指摘を受けたくないから」「法で定められているからとりあえず選任義務は果たすようにしている」、そんな状況ではないですか?
私は産業医紹介実績No,1のドクタートラストの営業職として働き、日々、多種多様な企業さまに産業医を紹介させていただいております。
入社して約1年が経つなかで、産業医サービス契約の解約のご連絡をいただくことがございます。
その理由として圧倒的に多いのが、「従業員が50名を下回り選任義務がなくなったため」です。
入社当時の私は、選任義務がなくなったなら仕方がないと思っていました。
しかし、私がドクタートラストに入社して成し遂げたい大きな目標は、健康で元気に働く人を増やすことであり、選任義務がない会社でも、健康で元気にいきいきと働けるよう会社に働きかけることこそが、私の役割なのだと考えるようになりました。
そこで、そもそも産業医とは何なのか、どう活用できるのかを、皆さまに興味を持っていただけるよう、お伝えしていきます。
意外と知られていない産業医が生まれた歴史
産業医が生まれた歴史や背景をご存じの方は少ないのではないでしょうか。
豆知識としてご紹介します。
1.産業革命と労働環境の変化(18世紀後半~19世紀)
産業革命により、工場での労働が急速に増加し、労働環境が悪化しました。
長時間労働、過酷な作業条件、劣悪な衛生環境が問題となり、労働者の健康被害が多発したため、労働者の健康管理が社会的な課題となり、労働衛生に関する研究や取り組みが始まりました。
2.労働衛生の初期の取り組み(19世紀)
19世紀には、労働者の健康と安全を守るための初期の法律や規制が導入されました。
例えば、イギリスの工場法(Factory Act)は労働時間の制限や労働条件の改善を求めるものでした。
また、労働衛生の専門家としての医師の役割が認識され始め、企業内での健康管理の必要性が高まりました。
3.産業医の制度化(20世紀初頭)
20世紀初頭になると、労働衛生がより体系的に取り組まれるようになり、産業医制度が発展しました。
ドイツでは、現代の産業医の原型となる労働者の健康管理を専門とする医師(Betriebsarzt)が設置されるようになりました。
4.日本における産業医制度の確立(20世紀中期)
日本では、労働基準法(1947年)の施行に伴い、労働者の健康と安全を守るための規定が整備されました。
1960年には、産業医の選任義務が法制化され、一定規模以上の企業において産業医を選任することが求められるようになりました。
5.現代の産業医制度
現代では、産業医は労働者の健康管理、職場環境の改善、労働災害の防止など、多岐にわたる役割を担っています。
労働安全衛生法(1972年)の改正を通じて、産業医の業務内容や選任基準がさらに明確化され、労働者の健康と安全を守るための取り組みが強化されています。
このように、産業医の歴史は労働環境の変化とともに進化してきたものであり、その役割は今後も変化し続けるでしょう。
現場から聞いた!産業医のリアルな活用事例
多くの会社では、産業医との面談を希望する社員が少ないため、産業医の必要性が見過ごされ、不要と判断される傾向にあります。
ストレス社会と呼ばれる現代において、社員が抱える悩みやメンタルの健康状態は、常に表面化されるわけではなく、多くの社員が日々の業務に対するプレッシャーや不安を抱えています。
しかし、こうした悩みを会社や人事に率直に打ち明けることはハードルが高く、簡単ではありません。
「面談の申し出がない=悩みを抱えている・メンタル不調の社員はいない」ということではないことを、会社側は強く意識しなければなりません。
社員一人ひとりが安心して働ける環境を整えるためには、1回5~10分でいいので産業医との短時間の面談を社員全員にセッティングすることが非常に有効です。
また、産業医面談では、守秘義務を守りながら実施できる環境を用意して、社員が安心して悩みを相談できるような配慮を行いましょう。
実際に担当顧客の方から聞いた、会社には伝えられなかった悩みや問題を産業医との面談を通じて解決することができた事例を以下にて紹介いたします。
会社側の活用事例
・産業医との面談を通じて、会社側が見落としていた従業員の悩みや職場環境に関する具体的な問題点や課題を発見することができた。
・産業医は守秘義務を厳守しつつも、従業員からの話を通じて得た情報から、働き方の改善策を会社側に提案し、職場環境の改善につながった。
従業員側の活用事例
・小さな悩みであったが、産業医に話を聞いてもらったことで、メンタル不調の深刻化が予防できて、日常業務においても高いパフォーマンスを維持できた。
・なんとなく感じていた体の不調を産業医に相談したところ、適切な医療機関の受診を勧められたことで病気の早期発見につながった。(長期的な健康リスクを回避することができた)
・悩みはないと自覚していたが、産業医との面談の時間が設けられたことで、見て見ぬふりをしていた心の叫びに気づくことができ、産業医の専門的なアドバイスにより、セルフケアの実践につながった。
最後に
産業医が企業にとって必要な存在である理由は、単に法的な義務を果たすためだけではありません。従業員の健康と安全を守ることは、企業の持続可能な成長に直結しています。
健康で働きやすい職場環境は、従業員の生産性やモチベーションを向上させ、企業全体の競争力を高める重要な要素です。
産業医は単なる「義務」ではなく、企業がより健康で活力に満ちた未来を築くための「不可欠なパートナー」です。今一度、その重要性を認識し、従業員の健康を守るための取り組みを共に強化していきましょう!
<参考>
「産業医が診る働き方改革 産業医科大学編」(産業医科大学、西日本新聞社、2019/4/28)