変化×多様化の時代に企業と労働者が求められること~労働政策審議会労働政策基本部会の報告書をもとに~

2023年10月20日、厚生労働省に設置された労働政策審議会労働政策基本部会が「労働政策審議会労働政策基本部会 報告書 ~変化する時代の多様な働き方に向けて~」(以下、本報告書)を公表しました。
本報告書は、2023年2月より9 回にわたり、今後の労働政策の課題について、労働政策基本部会委員・有識者のプレゼンや、企業のヒアリングを交えながら議論を深めてきた成果です。
以下では、本報告書のうち特に企業や労働者に関わってくる点についてわかりやすく解説します。

社会・経済の現状と課題

日本経済は製造業を中心とした安定した高成長を続ける1980年代のマクロ経済から、AI等の技術革新の急速な進展、グローバル化等により、産業構造がこれまでにない大きさとスピードで、不連続に変化し続ける時代に突入しています。
つまり新たな「知」で勝負する時代へシフトしていると考えられます。
また、人口減少により、以前に比べ一人ひとりの労働者が貴重な存在となってきています。
そのような経済変化を受けて、本報告書では以下の課題があげられました。

・人手不足が常態化する中、①キャリア・スキル志向の高い若者の希望(仕事・報酬)とのミスマッチ、② 育児・介護等により、 広範な転勤を望まない社員にとって、社内でのキャリア形成が難しいなど、内部労働市場の機能低下が目立ってきている。
・コロナ禍で増加したフリーランスやプラットフォームワーカーといった働き方について、評価を行うことが求められている。
・一人ひとりの部下の能力やエンゲージメントを高めるため、個々の労働者に向き合えるようなマネジメントのできる人材が必要。
引用元:労働政策審議会労働政策基本部会「労働政策審議会労働政策基本部会 報告書 ~変化する時代の多様な働き方に向けて~」

いわゆる大企業の男性正社員の働き方中心ではなく、女性や高齢者をはじめあらゆる労働者の労働参加などを通じて、全員参加型のダイバーシティ社会を実現していくことが重要であり、多様な人材の活躍・働き方の促進が企業の成長につながるとされています。

これからの働き方の対応

本報告書では、社会・経済の現状と課題を受けて、企業、労働者、社会全体に対して以下の対応が必要と示されています。

(1)企業に求められる対応

・リスキリングの必要性を明確にした上で、経営者、マネージャー、現場労働者の全てのレベルで、リスキリングを含めた能力開発に主体的に取り組んでいくための動機付け・環境整備が必要。
・中間管理職のマネジメント業務が大きく変化・増加(ワークライフバランスの確保、エンゲージメントの向上)。人事部で、管理職向けのマネジメント研修(1on1ミーティング)の実施やその見直し等、管理職の業務負担の軽減を図ることが重要。引用元:労働政策審議会労働政策基本部会「労働政策審議会労働政策基本部会 報告書 ~変化する時代の多様な働き方に向けて~」

どの立場、どの役職でも業務で必要とされるスキルを獲得するための制度、体制を整えることが必要とされています。また、上司と部下の板挟みになり、業務負担が大きくなりやすい中間管理職に向けたサポートやケアが必要ということのようです。

(2)労働者に求められる対応

・多くの変化が短期間に起こる現状では、過剰に変化を恐れるのではなく、変化を前向きに捉えて対応していくことが求められる。
・長期雇用を前提とした企業では、企業が広い人事権を持って人事異動やOJT中心の人材育成を実施しており、企業との長期的な関係により、労働者が自律的にキャリア形成していくという意識が薄れる可能性もある。労働者自らが自律的にキャリア形成や学びを深めていくことが必要。引用元:労働政策審議会労働政策基本部会「労働政策審議会労働政策基本部会 報告書 ~変化する時代の多様な働き方に向けて~」

社会・経済、環境の変化に素早く、柔軟に対応する対応力が求められるようです。
また、「会社の言う通りにしていれば自然とキャリアアップするだろう」と考えるのではなく、労働者自らが自律的にキャリアについて考える必要があるということです。

(3)社会全体に求められる対応(一人ひとりが自律的にキャリアについて考える)

・一人ひとりの労働者が自律的にキャリアについて考える方策を社会全体で危機感を持って検討していくことが必要。
・リスキリングについての支援も、労働者一人ひとりが力強く成長できるよう、個人への直接支援が重要。
引用元:労働政策審議会労働政策基本部会「労働政策審議会労働政策基本部会 報告書 ~変化する時代の多様な働き方に向けて~」

※リスキリングとは、新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応して価値を創造し続けるために、必要なスキルを獲得する/させることです。

企業による人材育成や労働者自身の自律的な学びだけでなく、社会全体でキャリアについて考える方策が必要とされています。
リスキングの支援についても、企業の取組だけでは十分でない可能性があるため、例えば政府や自治体などから直接個人へ向けて支援をすることが必要ということのようです。

まとめ

経済のグローバル化、急速なデジタル化の進展、AIの発展により企業を取り巻く環境が大きく変化しました。
また、コロナ禍の影響によって働く人の環境や意識も大きく変化し、多様な働き方を求める労働者が増えてきています。
変化する時代の中で、女性、外国人や、様々な障害のある人など、いろいろな視点を持った人材が同じ職場で働けるようにしていくことが、新たな付加価値を生み、企業の持続的な成長・発展につなげていくために必要とされています。
また、企業だけでなく、私たち労働者自身もこれまで以上に自らが自律的にキャリア形成について学び、10年後、20年後のことを考えていくことが重要とされています。
企業も労働者も社会・経済、私たちを取り巻く環境の変化に適応し、価値を創造しなければいけない時代に変わってきているのではないでしょうか。

<参考>
労働政策審議会労働政策基本部会「労働政策審議会労働政策基本部会 報告書 ~変化する時代の多様な働き方に向けて~」

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竹村 頼恵株式会社ドクタートラスト

投稿者プロフィール

人々の生活を支える仕事をしたいと思い、前職ではIT企業で業務システムの開発をしていました。働いていく中で人々の生活をITで支える以前に、何より健康が大切だ、と感じるようになり、働く人の健康を支えるドクタートラストに入社しました。健康で元気に楽しく働くための情報を提供していきます。

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