テレビやインターネット、SNSで日々紹介される健康情報やダイエット・美容情報。
〇〇で痩せた! ××でがんは予防できる!など、さまざまな謳い文句で情報発信がされています。
みなさんは、「それって本当?」と疑ったことはありますか?
今回は、例として「食品Aを毎日食べたらやせます」いう情報の真偽判断方法を考えてみます。
根拠を信頼することができるか
たとえば、食品Aについて、以下のような情報があったとします。
「体験談:食品Aを毎朝食べる生活を続けたところ、5㎏やせました!」
「実験用のネズミに食品Aを毎日食べさせたら、体重が減りました」
みなさんはこの情報をどう判断しますか?
実はこのようないわゆる「口コミ」や、動物を用いた実験というのは、根拠の信頼度としてはとても低いのになります。
なぜなら、口コミをした人は「ダイエット」をしようとしていた人と考えられます。
食品Aを食べること以外にも運動に取り組んだり、ほかの食事を控えていたりした可能性があり、そういった別の取り組みの結果、5kgやせた可能性を否定できません。
また、実験用のネズミはヒトとまったく同じ生理機能を持っているわけではありませんので、食品Aはネズミにだけやせ効果があったという可能性も否定できません。
次に、「食品Aは医者も推薦しています」という情報があったとします。
こちらはどうでしょうか。
専門家の意見があると説得力を増すような気もしますね。
しかし、これも決して信頼性の高い情報とはいえません。
専門家が科学的根拠として述べる論文の一部分だけを誇張して情報発信をしていることも多くあり、まだ研究段階のものについては、専門家の中で意見が分かれていることもあります。
専門家が推薦しているからと、安易に信じるのは危険です。
注意すべきワードは?
ちょっとしたダイエット方法であれば、根拠のない情報を信じてしまっても「やせなかったな」で済ませることができます。
しかし、病気の治療法についてはそうはいかず、信じた治療法に根拠のないものであれば、命に関わることになります。
日本医科大学武蔵小杉病院の勝俣範之医師は、インチキ医療によくある謳い文句として、次の5つを上げています(※)。
- 「○○免疫クリニック」「最新○○免疫療法」
- 調査方法などの詳細が掲載されていない「○○%の患者に効果」
- 保険外の高額医療・厚生労働省の指定のない「先進医療」
- 患者さんの体験談
- 「奇跡の」「死の淵から生還」などの仰々しい表現
批判的に情報を見る目
「じゃあ、どこからの健康情報なら信じられるの?」と思ってしまいますね。
健康情報の発信元として、その情報の正しさがある程度担保されているものとしては、厚生労働省といった国の機関や、国立の研究機関などが挙げられます。
これらは国の健康施策の指針に関わるため、さまざまな研究を精査・検討して情報発信を行っているからです。
××という食品を食べすぎるとよくない、逆に食べたほうが病気になりにくいなどといった、病気と生活習慣の因果関係に関わる情報は、時間をかけて対象者や患者を追跡した研究をいくつも精査して初めてその可能性が示されます。
「最新の研究では」といった情報は、一見すばらしいものに思えますが、その精査がまだ十分ではないかもしれない、という可能性を忘れてはなりません。
研究結果が論文として発表されているものであっても、その研究自体の欠点や限界(limitation)が論文内で示されているものがほとんどあり、ひとつの論文だけを過信するのは危険です。
さまざまな健康に関する情報が溢れる現代、情報を受け取る私たちに必要なことは、与えられた情報について「これは本当に正しいことかな?」と疑うことではないでしょうか。