人生100年時代といわれて久しい昨今、高年齢労働者の活用も企業の課題になりつつあります。
高年齢者の雇用については2019年2月22日付で公開した以下の記事をご参照ください。
ところで、高年齢労働者を含む「中高年齢者」に対しては、労働安全衛生法で適正な配置が努力義務として求められています。
労働安全衛生法(中高年齢者等についての配慮)
第62条 事業者は、中高年齢者その他労働災害の防止上その就業に当たつて特に配慮を必要とする者については、これらの者の心身の条件に応じて適正な配置を行なうように努めなければならない。
では、中高年齢者とは何歳から該当するでしょうか。
実は、年齢については労働安全衛生法上では定められていません。
ただ、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律施行規則では45歳以上を中高年齢者と定めており、これに準拠して考えていくと、上記条文は「45歳以上の従業員については労働災害が発生しないように過度な負荷がかかる業務は避ける必要がある」と言い換えることができます。
中高年齢労働者の健康障害
中高年齢者となると、身体的機能の低下や健診での有所見の増加など、健康に関するさまざまな課題が出てきます。
実際に、平成29年、平成28年の年齢別死傷災害発生状況をみると、全体で120,000件超の労働災害が発生しているなか、45歳以上の件数が85,000件超と約7割近くを占めています。
具体的な対策
では実際に対策を考えるとした場合、どのような方法が有効でしょうか。
対策案について「直接的対策」と「間接的対策」の2つに分けて考えてみます。
① 直接的対策
身体的機能の低下に配慮し、従業員が作業するにあたって実際に接触する設備やその姿勢、作業方法などを見直すことにより、労働災害を抑止する
【例】
・ 転倒、転落を防止(床のすべり止め、明るさの確保、段差への注意表示など)
・ 作業方法の改善(4S活動の徹底、災害事例の周知、作業手順書の作成など)
② 間接的対策
実際の作業改善を行うのではなく、健康増進や教育の実施などを通じ、現状の身体的機能・健康状態に即した作業ができるように環境を整える
【例】
・安全衛生教育の実施
・知能、技能を活かす業務への配置転換
企業の取り組み
今回ご紹介した中高年齢の安全配慮は条文にあるとおり、努力義務の範囲です。
しかし、2018年11月8日の記事でご紹介したとおり、「努力義務」は「やらなくて良い」というものではありません。
労働災害マップの作成や、見える化の実施などを通して、中高年齢労働者への配慮を実施してはいかがでしょうか。
<参考>
・ 厚生労働省「平成29年労働災害発生状況」
・ 東京労働局労働基準部「 高年齢労働者の安全と健康(PDF)」