ミスをした・失敗した人に非難をしていませんか?~あなたの心に潜む公正世界仮説~
- 2019/2/25
- 認知行動療法
みなさんこんにちは、精神保健福祉士の笹井です。
早いもので、もう2月も終わり。
この間までクリスマスだお正月だと言っていたのがウソのようです。
さて、働くみなさんにお届けする産業保健新聞、今日のテーマは「ミスをした・失敗した人に非難をしていませんか?~あなたの心に潜む公正世界仮説~」です。
仕事をするうえでヒューマンエラーは必ず起こる
作業をしていると、人間は必ずミスを起こします。
人間は外界からの情報をインプットし、脳で記憶を保持して、作業へアウトプットします。
その一連の過程で、集中力の低下や記憶の欠落、認識の間違い、コミュニケーションの齟齬、無知などによって、ミスが起こります。
ミスを0で仕事ができればもちろんいいのですが、そんなことは起こりえません。
エネルギーは有限で、人は疲労を感じるとさまざまなパフォーマンスが低下するからです。
コピー機だって、紙がなければ印刷物は出てこないし、インクが切れれば印字はかすれてしまいます。
機械だってそうなのだから人間ならなおさらでしょう。
アメリカの大統領セオドア・ルーズベルトは言いました。
「ミスをしない人間は、何もしない人間だけだ」
みんな頑張って仕事をするから、ミスをするのです。
失敗した人(被害者)を非難する心理
痴漢被害に遭う女性に対して、鼻息の荒いオジサンが「そんなけしからん格好をしてウロウロしているからだ!」なんていう軽口をしていることがあります。
最近もアイドルが暴行され、被害者のアイドルがファンに謝罪した、なんて世知辛いニュースがありましたね。
失敗をさせた原因(加害者)に怒りを向けるのであればわかるのですが、失敗した人(被害者)に対して、非難する心理はなぜ起こるのでしょうか?
これを説明するのが公正世界仮説と呼ばれる認知心理学での理論です。
人生は不条理なもので、いきなり生老病死はやってくるし、行いが正しくても貧しいまま死んでいく人はごまんといます。
人間の心理はそんな現実世界を生きていくうえで、安定を求めます。
「自分は公正な世界を生きている。この世は正しいことをしていれば、正しいことがかえってくる。悪いことをすれば悪いことがかえってくる」
そんなふうに、人間の心は思い込むのです。
読み物もこの視点から作られているものが多いですよね。
白雪姫にシンデレラ、忠臣蔵や必殺仕事人。
人が勧善懲悪の物語を好むのはこの理論のせいともいえます。
ミスはしたくてするのではない
公正世界仮説は、誰かが失敗・ミスをしたときに適用されがちです。
人間は感情で動いている動物ですので、ミスを指摘・カバーするものはイライラしていることが多いですよね。
イライラしていると余計な文句までいってしまうのが、人の常。
失敗・ミスをした人のパーソナルな部分まで、文句を言ってしまわないように注意をしましょう。
もちろん、文句を考えるのは自由ですし、どんな罵詈雑言を想像しても誰にも何も言われません。
職場でのハラスメントが取りざたされる昨今。
あなたはきちんと人を評価できていますか?
あなたの心に潜んでいる公正世界仮説に操作されていませんか?
誰しも、ミスをしたくてするのではありません。
ノーミスで仕事を終えたいと思っているのです。
どうすれば、自分たちの仕事でミスを減らせるのか。
どうすれば、ミスに気付けるのか。
ミスをした際に、どうやって次同じことを起こさないようにするか。
これらを考えて仕事をしていきたいものですね。
三寒四温で春はもうすぐ、風邪などひかれませんように、
それではみなさんさようなら。